ウクライナ戦争の戦況はアメリカ次第という現実に目を向けよ
評論家、元外務省国際情報局長
完全版視聴期間 |
(期限はありません) |
---|
1943年満州・鞍山生まれ。1966年東京大学法学部中退。同年外務省入省。駐ウズベキスタン大使、国際情報局長、駐イラン大使、防衛大学校教授などを歴任の後、09年定年退官。著書に『戦後史の正体』、『アメリカに潰された政治家たち』『日米同盟の正体』など。
NPO情報公開クリアリングハウスが今週、東京地裁に議事録の情報公開訴訟を起こしたことで、これまで実態が伏せられてきた日米合同委員会の存在に、あらためて注目が集まっている。
日本人にも大きな影響を与える米軍の法的地位などを協議する場でありながら、議事録が一切公開されないなど裏の存在だった日米合同委員会について、元外務省国際情報局長の孫崎享氏に聞いた。
孫崎氏は日米合同委員会について、在日米軍に日本の法律をそのまま適用できないために生じる諸問題を、在日米軍と日本政府の間で「調整」する場だと指摘する。
「多くの人が、日本を守ってもらうから米軍経費は出さなきゃいけないと誤解しているが、発足当時からみると、在日米軍は日本の防衛要請からではなく、どちらかといえばアメリカの世界戦略のために米軍を日本に置いている。(日米合同委員会は)米軍が活動する際に、日本の法律で不都合がないように整合性を調整するのが一番大きな目的だったと思う」と孫崎氏は語る。
アメリカが世界戦略の一貫として日本に軍隊を駐留させているにもかかわらず、日本ではアメリカ軍はあくまで日本を守るために来てくれている存在だと見られている。そのため日本における米軍は刑法、航空法、環境法など日本の法律をそのまま適用できない、超法規的な存在となっていると孫崎氏は言う。外交特権を持つわけもない在日米軍の軍人や軍属に対して、日本の施政権の下でいかにしてそのような特権を認め、これを正当化するかについては、あれこれ官僚の知恵を絞る必要がある。そのために日本側の主要な省庁の次官候補となるエリート官僚が米軍と一堂に会する場が日米合同委員会だというのだ。
孫崎氏によると、かつて日米合同委員会は米軍側からの要求を日本にぶつける場だった。しかし、今日、日米間の関係はより緊密になり、将来の次官候補と目される幹部クラスのエリート官僚がわざわざ出てくるまでもなく、現場レベルの課長などでも日米合同委員会の意図は貫徹されるようになった。そのため今日に至っては日米合同委員会の位置づけは、かつてほど大きなものではなくなっていると孫崎氏は言う。
今日、日本政府の隅々まで日米合同委員会図式が内包されるようになったため、あらたまって日米合同委員会を開催し、その場でエリート官僚たちが米軍側の要望を聞く必要がなくなったと孫崎氏は指摘する。
ジャーナリストの神保哲生が、日米合同委員会の機能と、それが日本の政治、経済、社会にどのような影響を与えてきたかについて、孫崎氏に聞いた。