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2023年09月15日公開

岸田政権が思い描く総裁再選のシナリオとは

意図不明の内閣改造で政局の焦点は11月総選挙へ

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完全版視聴期間 2023年12月15日23時59分
(あと75日11時間17分)

概要

 第15回のポリティコでは第2次岸田内閣と自民党の新執行部の顔ぶれを論評したうえで、政局の底流を流れる権力闘争の実相と来年の総裁選再選に向けた岸田政権のシナリオを紐解いた。

 9月13日に発表された岸田新内閣では、大方の予想に反して林芳正外相が上川陽子元法相と交代となった。数日前にウクライナを訪問しゼレンスキー大統領に支援の継続を約束してきたばかりの林氏をこのタイミングで交代させた岸田氏の狙いは何だったのか。

 組閣後の記者会見で外相の交代について聞かれた岸田首相は、外相は首脳外交を支える立場にあり、その役割を担える人材は党内にも林氏の他にもたくさんいると語った。素直に聞けば首相の首脳外交にかける強い思いを語ったようにも聞こえるが、見方によっては得意の英語とピアノを駆使して外相として国際舞台で存在感を示す林氏が外相のままでは、首相は思うような首脳外交が展開できないと言っているように聞こえなくもない。党の役員にも就かず事実上の無役となった林氏については、衆院に鞍替え直後に外相に就いたことで、地元の地盤固めや党内人脈を拡げる時間がなかったので、ここでひと休みさせて派閥の後継者になるための準備を進めてもらおうという首相の親心と見る向きもあるが、それは生き馬の目を抜く権力闘争の場である政治を甘く見過ぎだろうか。

 執行部では、9年前に政治と金の問題で経産大臣を辞任して以来、政治の表舞台から姿を消していた小渕優子氏が党4役の一角である選対委員長の要職に就いた。政治とカネの問題が取り沙汰された際に、秘書がドリルでパソコンのハードドライブを破壊して証拠隠滅を図ったことの衝撃がまだ消えていない小渕氏ではあるが、小渕氏は不祥事に対する反省を示す意味で、この9年間、公的な役職を辞退し、永田町で言うところの「雑巾掛け」仕事に徹してきた。自民党内には他にも過去の不祥事を抱える議員は多くいるが、小渕氏に対する批判だけが未だに尾を引いているのはなぜか。首相を父親に持ち、父親の急死で若くしてテレビ局勤務から議員に転身し、そしてほどなく経産大臣の要職に就いた若い女性に対する妬み嫉みという側面もあるかもしれない。いずれにしても小渕氏にとっては、選対委員長という久しぶりの要職で次の選挙でどれだけ女性議員を当選させることができるかが、今後の政治生命を左右する重要な試金石となる。

 今回の人事で今後の政局に大きく影響を与えるのが、茂木幹事長の留任だ。元々岸田首相は茂木幹事長を交代させたい意向だった。しかし、内閣改造直前の岸田、麻生、茂木会談で茂木氏の留任が決まったとされている。しかし、その際の交換条件が、来年の総裁選に茂木氏が出馬しないことだったとされる。幹事長留任が決まってハッピーなはずの茂木氏が、会談の後、とても不機嫌だったことが思い起こされる。

 最後は秋本真利議員の逮捕について。秋本氏はもともと自民党内の通称再エネ議連の事務局長を務め、再エネ推進派であると同時に、反原発の急先鋒でもあった。再エネ議連は河野太郎氏や小泉進次郎氏らの反原発論者が幹部に名を連ね、先の総裁選でも河野氏を応援した議員が多く所属している、菅元首相を後ろ盾に持つ議連だ。そこに今年2月、何ともう一つの再エネ議連として再エネ社会実装議連なるものが設立された。発起人には麻生太郎氏や岸田文雄氏、鈴木俊一財務相ら岸田政権の中枢が丸ごと名を連ね、会長には今回の人事で総務会長に就任した森山裕氏が就いている。こちらの再エネ議連は永田町では「反原発ではない再エネ議連」と呼ばれ、河野氏らの「反原発の再エネ議連」とその点で一線を画している。とはいえ、自民党内に同じ目的をもった議連が2つできることは普通では考えられない。これは明らかに再エネというこれからの巨大市場をめぐる現在の政権主流派と、菅政権時の旧主流派の主導権争いになっていると見ていいだろう。

 東京地検特捜部は秋本氏が業者からの賄賂の見返りに業者に有利になる国会質問をしたとして贈賄罪で逮捕しているが、そもそも秋本氏には自身の政治力だけで再エネ政策を変更させるだけの力はない。背後には河野氏、そして菅元首相の影響力が見え隠れする。言うまでもないことだが、政治家の逮捕の前には検察が官邸にお伺いを立てることが慣わしだ。そして、秋本氏の逮捕と元祖再エネ議連の力を削ぐことは、岸田首相にとって最大のライバルとなる河野氏の力を削ぐことにもつながる。しかも、今回は秋本氏に対する賄賂が馬主組合を経由して行われていたことを検察はメディアを使ってしきりとリークしている。馬主組合というのは、河野太郎氏の祖父の河野一郎元農林大臣の時代から続く、河野氏にとっては莫大な利権であることはよく知られている。

 秋本逮捕も木原誠二官房副長官をめぐる捜査中止疑惑も、裏には権力闘争のにおいがプンプンする。政治には権力闘争がつきものかもしれない。しかし、問題は、検察はもとより警察までが、政権の意向で捜査をしたりしなかったり、中断したり再開することがあたり前になっていることではないか。日本では正義さえ政治の副産物になってしまったのかと思うと悲しくなる。

 いずれにしても、今回の改造で今後の政局は、早ければ10月の臨時国会冒頭解散、11月中旬総選挙の線を睨みながらの攻防となる。維新の躍進で自民党は多少の議席減が避けられないとみられているが、多少の負けであれば、今回の人事で党内の敵を根こそぎ摘むことに成功した岸田首相を退陣に追い込める勢力は今のところ見当たらない。むしろ勢いを増す維新の選挙準備が整う前に解散総選挙を打っておきたいというのが、岸田政権の思惑のようだ。そうなると来年の総裁選でも岸田首相がそのままスムーズに再選される公算が大ということのようだが、果たして一寸先は闇と言われる政界でそのような安直な筋書き通りに事が運ぶだろうか。

 政治ジャーナリストの角谷浩一とジャーナリストの神保哲生が議論した。

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