2009年12月12日
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アメリカは本当に怒っているのか
普天間移転問題で抜け落ちている論点

ニュースコメンタリ―

東京(12月11日) − 普天間基地の移設をめぐり日米関係に大きな亀裂が入り始めてことが連日報じられている。メディアによって多少の温度差はあるものの、概ね、前政権下で日米両国が辺野古沖への移設で合意したはずの問題を、県外移設や日米合意の見直しを公約して民主党が政権の座に就いたため、新内閣は米国との約束と選挙公約との板挟みになり身動きがとれなくなっている間に、米国は日本を見放し始めているという話のようだ。
 確かに、政権交代はあくまで国内の問題であり、法律上の「事情変更」には当たらない以上、それを理由に外国政府との約束事を反故にすることは、国際慣行上も容認されないことは確かだ。
 しかし、今週、普天間基地を擁する宜野湾市の伊波洋一市長が岡田外相に指摘した事実は、事情変更を考慮するに十分足り得る問題と言えるかもしれない。
 伊波市長は、アメリカが06年の日米合意以降、沖縄の海兵隊の兵力の大部分をグアムに移転する計画を進めており、そもそも日本政府が説明しているような、米海兵隊の実働部隊が沖縄に残るという前提は既に崩れていることを示すために、裏付けとなるアメリカ政府の公文書持参で岡田外相を訪ねている。
 伊波氏によると、アメリカは06年7月に発表された「グアム統合軍事開発計画」に沿って、沖縄に駐在する海兵隊員を丸ごとグアムへ移設する計画を遂行している最中であり、それが完了すれば現在日本政府が辺野古に代替施設が必要な理由として説明している「沖縄には実戦部隊が残る」余地は無いという。伊波氏はまた、アメリカ政府は「グアム統合軍事開発計画」に則ってグアムで進められている基地建設計画のために11月20日に8100ページからなる環境影響報告書を提出しているが、そこでは沖縄からの海兵隊移転の詳細として、海兵隊へリ部隊だけでなく、地上戦闘部隊や迫撃砲部隊、補給部隊という沖縄の主要な部隊がグアムに移動することになっていると指摘する。
 「そもそもアメリカは本当に新しい海兵隊用の基地を必要としているのかが疑問。にもかかわらず、ここまで無理してどうしても辺野古に基地を建設しなければならない意味が本当にあるのか。」
 伊波氏はそう問いかける。
 海兵隊基地の辺野古への移設を謳った現行案には、広く議論されていない大きな問題が、もう一つある。
 それは、アメリカのサンフランシスコ連邦地裁が2008年、辺野古への海兵隊の基地移設に対して、絶滅危惧種ジュゴンの保護策が確保されていないことなどを理由に、違法の判断を下していることだ。この違法判決は、連邦政府に対して、ジュゴン保護を含む環境対策の拡充を求めるもので、直ちに基地の建設自体を禁じるものではないが、環境保護対策が不十分と見なされた場合は、基地建設そのものが法律的に不可能になる可能性もある。
 実際にアメリカが普天間に代わる代替基地を沖縄に置くことを必要としているのか、また仮に鳩山政権が決断を下し、辺野古沖への基地建設に踏み切ったとしても、連邦地裁判決が求める措置が十分に執られない場合は、建設そのものの許可が出ない可能性もあるのだ。
 今週のニュースコメンタリーでは、なぜ、こうした情報が十分共有されないまま、日米交渉やそれを取り巻くメディア報道が進んで行くのか、普天間基地が辺野古に移転することを本当に望んでいるのは誰なのかなどを、議論した。

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