2007年8月24日
  • 文字サイズ
  • 印刷

ダイオキシン問題は終わっていない

森田昌敏氏(ダイオキシン2007国際会議議長・愛媛大学農学部教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第334回

 「国際ダイオキシン会議」が、9月2日より東京で開催され、ダイオキシンやその他の内分泌撹乱化学物質、いわゆる環境ホルモンなどについて、1000人を超える研究者が、世界各国から集まろうとしている。しかし、かつてない規模で国際会議が開催される日本で、なぜかダイオキシン問題の存在について疑問をはさむ懐疑本がベストセラーになり、マスコミ報道も10年前に比べれば激減している。この「なにを今さらダイオキシン」というムードについて、国際ダイオキシン会議の議長を務める森田昌敏氏は、ダイオキシン問題は解決したわけではないと警告する。
 97年、密かに進む環境汚染を告発した『奪われし未来』が発売され、日本各地のゴミ焼却炉周辺で高濃度のダイオキシンが検出されたことが報道されると、一気に世論が盛り上がり、99年には「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立した。ゴミ焼却大国・日本においては、ダイオキシン規制とはすなわちゴミ焼却炉問題であった。森田氏も、この規制によって新たに排出されるダイオキシンが激減したことは、大きな成功と評価する。しかし、70年代までに散布された農薬や規制以前に排出されたばい煙から出たダイオキシンが、依然として日本各地に残り、それが人体に絶え間なく蓄積されている事実については、状況は変わらず、深刻に受け止めるべきだと語る。
ダイオキシンは、人類が作り出した最悪の化学物質といわれるほど、毒性が強い。水に溶けないが、油には溶ける性質を持ち、自然の中では極めて壊れにくい。一度、自然界に排出されると、土壌や水中の汚泥に溜まりやすく、食物連鎖を通じて人体に蓄積していく。
 森田氏は、ダイオキシンの最大の問題は、成人への影響ではなく、胎児や子どもに対する影響であることを強調する。ダイオキシンは、環境ホルモンの一種であり、微量でも胎児には決定的なダメージを与えかねない。人体実験が難しいため人間における因果関係が完全に証明されたわけではいないが、予防原則の観点から、ダイオキシンを含め、環境ホルモンと疑われる化学物質の規制を強化することは重要と森田氏は説く。
 欧州では既に未然防止の観点から、ダイオキシンを含めた化学物質を総合的に規制するシステム「リーチ」を2007年6月にスタートさせている。これにより、化学物質のリスクは、政府や消費者ではなく、企業が責任を負うことを明確化したという。便益のために次々と新たな化学物質を作り出すよりは、安全な化学物質を選んで使うという方向に、欧州は舵を切り、世界をリードしようとしているが、日本はまだアメリカ式の自由放任路線を歩んでいるという。
 1000人を超す世界中のダイオキシン専門家が一同に会するダイオキシン2007国際会議議長の森田氏とともに、ダイオキシン問題の現状と今後の見通しから、根拠無き懐疑論がはびこる日本の社会構造まで、幅広いテーマを議論した。

森田 昌敏もりた まさとし
(ダイオキシン2007国際会議議長・愛媛大学農学部教授)
1944年兵庫県生まれ。67年東京大学理学部化学科卒業。72年東京大学大学院工学系博士課程修了。工学博士。東京都立衛生研究所を経て、78年より国立公害研究所(現国立環境研究所)に勤務。06年より現職。日本内分泌撹乱化学物質学会会長。著書は『環境と健康』、『地球環境ハンドブック』など。9月2日から東京で開催されるダイオキシン2007国際会議の議長を務める。
  • 登録
  • 解除