プラスチック汚染対策をレジ袋有料化で終わらせないために

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第983回)

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公開日 2020年02月08日

ゲスト

東京農工大学大学院農学研究院環境資源科学科教授

1959年東京都生まれ。82年東京都立大学理学部卒業。86年東京都立大学大学院理学研究科化学専攻博士課程中退。東京農工大学農学部助教授などを経て、2007年より現職。博士(理学)。専門は環境化学。共著に『環境汚染化学』、監修に『さよならプラスチック生活』など。

概要

 廃棄プラスチックによる環境汚染の深刻化を受けて、日本でもようやく2020年7月からレジ袋の有料化が義務づけられる。レジ袋に対して既に何らかの法規制を実施している国は世界127カ国にのぼることから、日本も遅ればせながらようやくその仲間入りを果たすことになるわけだが、レジ袋の消費量は年間約20万トンで日本の年間廃棄プラスチックの総量の2%程度に過ぎない。レジ袋規制は生活に馴染みのあるところに規制を入れることで、国民のプラスチック廃棄に対する意識改革を図るというシンボリックな意味合いが大きい。それを入り口に「プラスチックとは何か」をあらためて考えてみることが重要だ。

 実際、プラスチックの使用量はレジ袋よりも、レジ袋の中に入る食品やその他の商品の包装容器の方が遙かに多い。特に日本は一人あたりの包装容器のプラスチック使用量がアメリカに次いで世界で二番目に多いプラスチック消費・廃棄大国だ。しかも、これまで日本を含む世界のプラスチックゴミを資源として輸入してくれていた中国が、3年前から輸入禁止に転じたが、日本はプラスチックの使用を減らすのではなく、新たなゴミの行き先をインドネシアなどに求めることで、これまで通りの大量消費・大量廃棄を続けているのが実情だ。

 プラスチック汚染は、画になりやすかったりイメージしやすいなどの理由から、海洋動物の体内から発見されたレジ袋やストロー、プラスチック片などが話題になることが多い。それも大きな問題には違いないが、廃棄プラスチックの問題は実際はそれよりも遙かに根深く、また広汎に広がる深刻な問題だ。それはプラスチックと呼ばれる物質の多くが、分解されて最終的には1ミリ以下のマイクロビーズと呼ばれる状態となり生態系を循環し続けるため、われわれは今、飲料水や食品などを通じて、大量のプラスチックを体内に取り込んでいるからだ。

 体内に入ったプラスチックの健康への影響については、まだわからないことも多いが、他の物質と結合しやすい性格を持つプラスチックが、人体に有害な他の物質の運搬役を果たしているとの指摘も根強い。

 肉眼では見えないマイクロビーズは、フリースなどの化学繊維の衣類を一度洗濯するだけでも、相当量が排出される。実は化学繊維は洗濯をしないでも、常に一定量のマイクロプラスチックを生態系に放出し続けているのだ。自動車が道路を走ればタイヤからプラスチックが剥がれるし、横断歩道や止まれのサインなど道路に書かれた路面標示にもプラスチックが使われている。これも時間とともに剥がれ、地下水や川に流れ込んだ末、最終的には海に放出される。また、マイクロビーズは洗顔料やボディソープ、化粧品などにも広く利用されている。こうした商品を利用するだけで、プラスチックの生態系への放出に加担することになる。

 1950年代から一気に普及したプラスチックだが、これまで人類が製造したプラスチックの総量は83億トンにのぼり、そのうち約63億トンが既に廃棄物として生態系に放出されているという。

 世界ではレジ袋規制はもとより、包装用の発泡スチロールの使用を禁止するなど、多くの規制が実施されているが、日本はここでも大きく遅れを取っている。恐らく東京オリンピックで日本を訪れた外国人訪問客は、日本の過剰包装ぶりに驚くに違いない。日本も2018年6月には海外漂着物処理推進法を改正したほか、2019年5月にはプラスチック資源循環戦略を策定するなどして、微細なプラスチック粒子の使用規制を企業に求めているが、罰則規定がないため実効性に乏しい。

 確かにプラスチックはわれわれの生活に様々な利便性と豊さをもたらしてくれたが、実際は廃プラの生態系への影響などが明らかになった今、その環境負荷の大きさが当初われわれが考えていたものよりも遙かに大きく、それをどう負担するかが問われる事態を迎えている。プラスチック汚染の実態と日本の対応などについて、環境化学が専門の高田秀重・東京農工大学大学院教授と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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