2008年2月24日
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このままでは道路の暴走は止まらない

加藤秀樹氏(シンクタンク構想日本代表)
マル激トーク・オン・ディマンド 第360回

 いい加減食傷気味の向きも多かろうが、またまた道路論争が喧しい。
 国会では、3月末に延長期限を迎えるガソリン税の暫定税率廃止を求める野党・民主党と政府与党の攻防が連日繰り広げられ、マスメディアも山奥の無駄な道路などをこぞって紹介している。
 しかし、そもそも無駄な道路建設をやめることは、小泉構造改革の目玉の一つだったはず。それがなぜ今また「無駄な道路」論争なのか。
 道路建設の財源は、揮発油税や石油ガス税などの道路特定財源という形で、毎年別枠で確保されている。今回の道路論争は、この特定財源の元となる税金本来の税率の上に、更に上乗せ分として暫定的に課せられている上乗せ税率が、この3月に延長の期限を迎えることから、その存否をめぐり、論争が再燃した形となっている。暫定税率の期限が切れると、ガソリン料金などがリッターあたり20円以上も下がり、原油価格の高騰で燃料費の負担にあえぐ一般市民が恩恵を受けるが、その分道路財源も減少するため、道路建設を進めたい国土交通省と与党のいわゆる「道路族」が、暫定税率廃止に激しく抵抗しているからだ。
 しかし、道路問題を長年調査し、数々の提言を行っている構想日本の加藤氏は、暫定税率やガソリン代値下げをめぐる議論は、道路問題の本質ではないと指摘する。道路問題の本質は、特定財源という形で道路予算だけがあらかじめ別枠で確保されている上に、道路計画が全て中央で決定され、しかもその決定過程が不透明な点にあると加藤氏は言う。
 まず直視しなければならないことは、小泉構造改革で「無駄な道路を作らない」ために強行された特定財源の一般財源化と道路4公団の民営化は、いずれも骨抜きにされ、有名無実化していたという事実だ。道路特定財源は維持され、形ばかりの道路公団民営化は行われたが、無駄な道路が作られ続ける構造は丸ごと温存された。
 既に世界一の道路大国となっている日本で、これ以上無駄な道路を作らないようにするためには、道路特定財源を廃止し、道路計画の決定過程を透明化した上で、何が本当に必要な道路かを判断するために、地域の声を道路計画に反映させるしかない。しかし、この、小学生でも分かるようなごくごく当たり前の対応が、なぜかできない。しかし、もし日本がこのまま、戦後復興期に作った「まず何よりも道路建設を優先する」システムを変えるだけの政治的意思も、それを後押しする民度も持ち合わせていないならば、いよいよ財政が破綻するまで道路の暴走は止まることはないだろう。
 しかしそうばかりも言ってはいられない。予定通り向こう10年間で60兆円分もの道路が作られれば、既に危機的状況にある財政の破綻が早まるばかりか、バイパスや高速道路建設による地域コミュニティの空洞化も進むことになる。バイパスや高速が建設されれば、地域の経済活動の中心がバイパスや高速インターチェンジ沿いの大型ショッピングセンターに移動し、旧市街地のシャッター街化が更に進むからだ。中央政府の机上で進められている道路建設計画は、そうした地域的な視点を無視して行われていることも問題だと、加藤氏は指摘する。
 道路公団民営化委員会の委員長代理・田中一昭氏や、道路建設を独自に行っている長野県栄村村長・高橋彦芳氏の発言も交え、国会で参考人として証言する直前の加藤氏と、道路の暴走が止まらない理由と、その対策を議論した。

加藤 秀樹かとう ひでき
(構想日本代表)
1952年香川県生まれ。73年京都大学経済学部卒業。同年大蔵省入省。証券局、国際金融局、財政金融研究所などを経て、96年退官。97年政策シンクタンク「構想日本」を設立、代表に就任。97年より慶應義塾大学総合政策学部特別招聘教授、00年よりNPOリンカーンフォーラム代表、06年より東京財団会長などを兼務。著書に「道路公団解体プラン」「浮き足立ち症候群―危機の正体21」など。 360_kato
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