2009年11月7日
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アフガニスタンで日本がすべきこと、やってはいけないこと

伊勢崎賢治氏(東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第448回

 来週のオバマ大統領の初来日を前に、鳩山政権は2つの安全保障政策上の懸案を抱えている。海上給油活動のためにインド洋に派遣されている海上自衛隊の撤退問題とそれに代わるアフガニスタン支援策が一つ。もう一つが、普天間基地の県外移設問題だ。いずれも民主党が総選挙前に公約に掲げて政権の座についたため、簡単に旗を降ろすわけにはいかないが、相手のある問題であるため、大統領の来日までに結論は出せそうにない。
 特にインド洋の給油活動からの撤退は、日本側が考えている以上にアメリカにとっては大きな影響があるとの指摘が根強い。NATO軍を中心に編成されているアフガニスタンの対テロ作戦で、NATOに属さない日本が末席ながら作戦に参加していることで、アメリカはNATO諸国に対してより大きな貢献を求める口実を得ることができているという側面があるからだ。
 とは言え、給油活動からの撤退は、民主党が選挙公約としてきた以上、今更撤回することも難しい。となると、給油に代わる新たなアフガニスタンへの貢献策として、果たして日本は何をすべきで、日本に何ができるかが問題となる。
 しかし、アフガニスタンの現状はそれほど容易ではない。日本政府の代表としてアフガニスタンの武装解除に取り組んだ経験を持ち、つい最近もアフガニスタンを訪問してきた伊勢崎賢治・東京外国語大学大学院教授は、国内治安の悪化によってもはやアフガニスタンでは、ほとんどの民生支援は事実上不可能に近い状態になっているという。
 全土に広がる汚職や麻薬資金の流入など、「歴史上類を見ないほどひどい」(伊勢崎氏)腐敗政治が横行する中で、2001年に一度は掃討されたはずのタリバンが息を吹き返し、再び人心を掌握し始めている。既に国土の6〜7割を実効支配しているとの情報もある。しかも、火力では圧倒的優位に立つはずの米・NATO軍は市民の間に紛れ込んだタリバンによって長期の消耗戦に引きずり込まれ、外国人兵士の死者数は年を追うごとに急増している状態だ。
 アフガニスタン国内では最近は国連までがテロの対象になる有様で、国連の威信が低下する一方、腐敗政治に嫌気がさした民衆は、他に選択肢がないために、日々タリバン支持へと傾いていると伊勢崎氏は指摘する。
 そもそも今日の状況を招いた原因は、民兵を合法化して警察に取りたてた結果、本来は治安を守らなければならないはずの警察が腐敗してしまったことにあると指摘する伊勢崎氏は、現在オバマ政権がこれを同じことをやろうとしていることに懸念を隠さない。
 そうした中で鳩山政権は現在のところ、アフガニスタン支援策として、向こう5年間で約3600億円の資金援助、電力や道路のインフラ整備、警察官の訓練支援に8万人の給与の約半額の負担、ISAF司令部への連絡調整官の派遣などを打ち出している。しかし、資金援助やインフラ整備は日本が以前からやってきたことでもあり、給油活動の代わりになるものではないと伊勢崎氏は言う。
 そして、伊勢崎氏が一番やってはいけないと指摘するのが、現在日本が計画しているアフガン警察への支援だ。訓練目的で8万人の警察官の給与の半分を日本が肩代わりするというものだが、日本の資金が本当にそのような目的で使われることを責任を持って最後まで日本が確認しない限り、その資金は警察の腐敗構造の中に消えていってしまうことは必至だと伊勢崎氏は言う。
 むしろ日本が一番貢献できる分野は、テロとの戦いの名目でアフガンに侵攻したまま抜けられなくなっている米軍と米軍に支えられたカルザイ政権、そしてタリバンとの間の和解の推進ではないかと、伊勢崎氏は言う。依然としてアフガニスタン人の日本に対する国民感情は良好で、日本は欧米諸国に比べてアフガニスタンにいろいろ提案できる立場にある。実際今月末には、ノーベル平和賞受賞者のアハティサーリ・前フィンランド大統領を議長とするアフガン和平会議が東京で開催され、アフガン情勢の打開策が模索される予定だ。
 オバマ大統領の来日を前に、アフガニスタン情勢の最新情報と、そこで日本ができる貢献とは何なのかを、伊勢崎氏と議論した。

 
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伊勢崎 賢治いせざき けんじ
(東京外国語大学大学院総合国際学研究科教授)
1957年東京都生まれ。86年早稲田大学大学院理工学研究科都市計画専攻修了。NGOのシエラレオネ、ケニア、エチオピアの事務所長を歴任。99年国連主催DDR特別運営委員会日本政府代表、00年東チモール暫定統治機構県知事、01年国連シエラレオネ派遣団武装解除統括部長などを経て、03年〜04年日本政府特別顧問としてアフガニスタンの武装解除を指揮。 02年立教大学21世紀社会デザイン研究科教授、06年東京外国語大学大学院地域文化研究科教授、09年より現職。著書に『武装解除—紛争屋が見た世界』、『日本の国際協力に武力はどこまで必要か』など。 342_isezaki 448_isezaki

 

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