2015年1月17日
  • 文字サイズ
  • 印刷

異物混入問題と危機に瀕する食システム

南清貴氏(フードプロデューサー)
マル激トーク・オン・ディマンド 第719回

 食品への異物混入が相次いでいる。
 特にハンバーガーチェインのマクドナルドでは各地の店舗で人間の歯やビニール片、鉄くずなどの混入が報告され、メディアでも大きく取り上げられている。ビジネス誌などでは企業のガバナンスや品質管理のあり方が問題視されているようだが、果たしてこれはそのような次元の問題なのだろうか。
 一連の異物混入事件について、自らもオーガニック・レストランを手がけた経験を持つフードプロデューサーの南清貴氏は、「混入が騒がれている商品はいずれも食品というより工業製品だ」とした上で、工業製品の製造工程では一定数のエラーが起きることは避けられないことから、異物の混入もそれほど驚くことではないと言う。しかし、より重要かつ本質的な問題は、製造工程でどの程度エラーが起きるかではなく、人間の基本的な営みである食が、工業製品として扱われているところにあるのではないかと、南氏は指摘する。
 飽食の時代と言われて久しい。スーパーマーケットに行けば、世界中の食材が一年中、安価で手に入る。そして、われわれの多くが、それが当たり前のことだと思っている。加工食品にしても然り。コンビニやファストフード店に行けば数百円で、十分にお腹を満たしてくれるだけの食料が手に入る。そのような「豊かさ」こそが、先進国の証であるかのように思われてもいる。しかし、そうした「消費者ニーズ」を満たすために、生産面でもコスト面でも、そして流通面でも、世界の食システムにはもはや限界を超えた負荷が掛かっているとの指摘が出始めている。100円でハンバーガーを提供する世界最大のファストフード・チェインのマクドナルドは、ある意味でその象徴的な存在と言っていいだろう。
 この際、われわれは消費者として、その「100円ハンバーガー」や「290円牛丼」、「300円弁当」を提供するために、コストカットと称してどれだけの工業的な合理化が行われ、それと引き替えに農薬や化学肥料、食品添加物の濫用といった形で食の安全性が犠牲になっているかに目を向けるべき時が来ているのではないだろうか。
 一汁二菜を基本とする日本の伝統的な食文化は栄養バランスに優れ、環境負荷にも配慮された持続性の高いものだった。しかし、高度経済成長を成し遂げた日本人の食生活は1970年頃から一気に西洋化が進み、動物性タンパク質と脂質の摂取量だけが飛躍的に増加した。奇しくも日本に最初にファストフードが紹介されたのも1970年の大阪万博だった。そして翌1971年、日本におけるマクドナルドの第1号店が銀座三越にオープンする。
 また、時を同じくして、外食や加工食品の消費量も飛躍的に増加し、それに呼応するかのように日本の医療費は上昇カーブを描いている。明確な因果関係を立証することは難しいが、どこかでつながっている可能性があるのではないかと南氏は話す。同じく、農地面積あたりの農薬の使用量は先進国の中では日本が群を抜いて多く、また死亡原因の一位が癌である国も世界で日本だけである点も、同じく因果関係の証明は難しいだろうが、懸念すべき問題だ。
 食の問題はいずれも消費者の選択によって支えられている。誰も現在のような食生活を強制されたわけではない。しかし、同時に、正しい選択を下すために必要な情報が十分に提供されているかについては、疑問が残る。大量の広告を出稿している食品産業についてマスメディアは、よほど大きな事件でも起きない限り、批判的な報道は控える傾向が強い。構造的な問題についてはなおさらだ。また、食品の表示義務についても、一括表示やキャリーオーバーなど抜け穴が多すぎる。これもまた絶大な資金力を持つ食品産業によるロビーイングの成果だと見られている。
 一連の異物混入事件の背後で日本の食システムに何が起きているのか。その結果として、異物混入以上に危険なことが起きていないのか。安全健全で持続的な食システムを守るために消費者として何ができるのかなどを、ゲストの南清貴氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

 
南 清貴みなみ きよたか
(フードプロデューサー)
1952年東京都生まれ。整体指導者を経て95年、レストラン「キヨズキッチン」を開業。現在、フードプロデューサーとしてレストランの業態開発、企業内社員食堂やホテルなどのメニュー開発を手がける。日本オーガニックレストラン協会代表理事。著書に『じつは怖い外食ーサラリーマンランチ・ファミリー外食に潜む25の危険』、『じつは危ない食べものー健康志向・安全志向の落とし穴』など。 719_minami
安全保障関連法
沖縄米軍基地問題
スタッフ募集
  • 登録
  • 解除