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コロナを克服するためにはリスク・コミュニケーションの建て直しが急務だ

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1036回)

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完全版視聴期間 あと10日2時間16分
公開日 2021年02月13日

ゲスト

慶應義塾大学商学部教授

1959年島根県生まれ。82年京都大学文学部卒業。88年京都大学大学院文学研究科単位取得退学。99年博士(文学)。慶應義塾大学商学部助教授、准教授を経て、2011年より現職。著書に『健康リスク・コミュニケーションの手引き』、共著に『危機管理マニュアル どう伝え合う クライシスコミュニケーション』など。

概要

 新型コロナウイルス対策では、政府や地方自治体の情報提供がうまくいっているとはとても言えない状況にある。ビデオニュースでは去年3月の時点で、リスク・コミュニケーションの重要性を指摘する番組を放送したが、それから一年たった今も、一向に改善されているとは言い難い。

 本来は理念や大きな戦略を語ることで国民を安心させたり、リードしていかなければならない政治的なリーダーたちは、重要な時に限って場違いな布マスクを配布してその装着方法を実演してみせたり、ウケ狙いのイタいダジャレで場を凍らせたかと思うと、しまいには国民に犠牲をお願いする会見で何度もお辞儀を繰り返し、「その間、政府は何をやってきたのか」を問われても、ろくすっぽ答えることすらできないという体たらくだ。

 なぜこうまで日本はリスク・コミュニケーションが下手なのか。

 この分野の専門家で当初からリスク・マネージメントの重要性を説いてきた慶應義塾大学の吉川肇子教授は、政府のリスク・コミュニケーションには今もってまったく改善が見られないと手厳しい。危機管理には「クライシス・コミュニケーション」と「リスク・コミュニケーション」の2つの考え方があるが、今の日本ではいずれも正しく理解されているとは言い難い。

 世界を核戦争の淵の寸前まで追い込んだ1960年のキューバ危機をきっかけに研究が始まったとされる「クライシス・コミュニケーション」は、元々は外交・軍事分野の危機に際してどう情報管理をしていくかという視点に立ったものだった。その後、企業が危機に陥ったときの広報戦略として、その概念やノウハウがビジネス・コンサルタント業界などにも浸透していったという。

 一方の「リスク・コミュニケーション」は今後起こりうる危機に備えてリスク評価し、情報を社会で共有して管理することを目標とする。新型コロナの対策では、まさにこの「リスク・コミュニケーション」が必要になる。吉川氏は、いま日本で行われているのは、古い形の「クライシス・コミュニケーション」に過ぎないのではないか、という。

 コロナ禍の日本では「クラスター」、「不要不急」、「三密」といった定義も不明確な用語が氾濫することで、あたかも国民の間で新しいテーマが共有されているかのような偽の「議題設定効果」が生まれ、それが本来議論すべき重要なテーマを覆い隠してしまっている。このような曖昧なキャッチフレーズが多用されること自体が、リスク・コミュニケーションができていないことの証左だと吉川氏は指摘する。

 また、民主主義社会における危機時のリーダー像についても、何か大きな勘違いがあるようだ。危機時のリーダーは強い姿勢で命令・統制をすることが重要なのではなく、リスク情報を提供し、様々な立場の人たちが自ら判断し創意工夫して対応することを可能にする「創発能力モデル」を引き出せる存在にならなければならないのだと、吉川氏は説く。

 さらに問題なのは、「行動変容」を市民に求めることが、差別・偏見を誘発していることを認識できていないことだ。それを過度に強調することで、万が一感染した場合、その責任が感染した市民自身にあるという考え方を暗に広めているという自覚がないのだ。感染は個人の努力で防ぎきれるものではない。感染したことを負い目に感じたり、それを社会から隠し立てしなければならないような事態を避けるためには、まずは政府ができる限りの対策をとった上で、それでも感染してしまった人は最大限護っていくという強いメッセージを出すことこそが、本来は必要なのだ。

 危機を最小化するためのリスク・コミュニケーションは、相互作用的過程であり、何よりも民主主義的な基盤が必要だと語る吉川肇子氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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