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2012年02月25日公開

消費増税ではDoomsdayは避けられない

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第567回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

早稲田大学大学院ファイナンス研究科顧問
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1940年東京都生まれ。63年東京大学工学部卒業。72年エール大学経済学博士号取得。64年大蔵省(現財務省)入省。主計局、一橋大学教授、東京大学先端工学研究センター長などを経て01年退官。スタンフォード大学客員教授などを経て05年より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授、10年より現職。著書に『世界経済が回復するなか、なぜ日本だけが取り残されるのか』、『消費増税では財政再建できない』など。

著書

概要

 今回は縁起でもないがdoomsdayをテーマに選んだ。原発事故の時もそうだったが、日本の将来についても、考え得る最悪の事態を知っておいた方がいいと思うからだ。より正確に言えば、今回はもう少し前向きに「doomsdayを避けるためにわれわれにはどんな選択肢が残されているか」を考えてみたい。doomsdayとは本来は聖書の黙示録に示されたハルマゲドンのことで、世界の終末を意味するものだが、ここでは日本という国家が破綻する日という意味で使っている。そしてここでいう国家破綻とは、財政破綻のことだ。

 相変わらず何一つ進展が見られない政治の閉塞が続いているが、こと消費増税については、野田政権は何が何でもそれだけは断行するつもりのようだ。そもそも野田政権がそこまでして消費増税にこだわる理由として、首相自身は日本の財政状態が待ったなしの状態にあることを繰り返し指摘している。

 しかし、経済学者の野口悠紀雄氏は、仮にそうまでして5%の消費増税が断行されたとしても、その効果は2年ほどで消えてしまうと言う。首相が増税の理由としている財政再建は、5%の消費増税ではとても実現できないと言うのだ。

 その理由はこうだ。そもそも5%の消費増税によって国庫に12.5兆円の増収があると言われているが、それが大きな間違いだと野口氏は言う。新たに国民が負担することになる5%=12兆5000億円のうち、1%分の2兆5000万円は地方消費税に回り、更に3割が地方交付税交付金として地方自治体に拠出されることが決まっているという。そのため、5%の増税によって新たに国庫に入る税収は、もともと7兆円足らずしかない。しかも、社会保障費の自然増が毎年少なくとも6000〜6500億円はあるため、仮に政府の期待通り2014年に3%、2015年に5%の消費増税が実現できたとしても、2年後の2017年には国債発行額は金額も加速度的な増加パターンも、いずれも現在の状態に戻ってしまうと野口氏は説明し、それを裏付ける具体的な試算も明らかにしている。どう見ても消費税の5%増税では、焼け石に水程度にしかならないというのだ。

 野口氏は、もし消費税だけで財政の健全化を実現しようとすると、計算上は最低でも税率を30%にあげる必要があるという。そこで言う財政再建とは、ユーロ加盟国が要求されている財政健全化の水準のことで、具体的には公債依存度が一定程度に保たれ、持続的に増えていかない状況を指す。

 無論、5%の増税でも七転八倒している日本で、30%の消費税など政治的に不可能だし、そもそもそこまでの大増税になれば、経済への影響も莫大となるため、税収が税率と比例しなくなってしまう。また、そこまで高い税率になれば、食品や医薬品などの生活必需品に低減税率を適用する必要が出てくるが、インボイスが制度化されていない現行の消費税制度では、それも実現不可能だ。

 しかし、そう言って、何もしないとどうなるか。仮に5%の消費増税が実施されたとしても、その他の有効な手立てが取られなければ、日本の財政は2027〜28年にはdoomsdayつまり、破綻状態に陥ると野口氏はある試算に基づいた予見を示す。それは2027〜28年頃には国債の発行額が500兆円を上回ることが予想され、現在日本の国債を購入している金融機関の購入力がそのあたりで限界を迎えるからだと言う。5%の増税では15年後には日本はdoomsdayが避けられないというのが、野口氏の試算だ。

 となると、財政を再建するために残る選択肢は2つしかない。増税以外の何らかの形で増収を図るか、歳出を削減するかだ。野口氏の試算では、税収が毎年2%程度増えるか、歳出を毎年2%程度減らすことができれば、10年後、20年後の公債依存度はほとんど上がらないと言う。経済成長による増収が最も望ましいことは言うまでもないが、それが直ちに期待できない現状では、歳出カットが不可欠になると野口氏は言う。

 野口氏が不可欠な対応として提案するのは、社会保障費の削減だ。現行の制度では、様々な理由から高齢者が過分に年金をもらい過ぎていると野口氏は言う。しかも、そのかなりの部分は、厚生省(現厚労省)の計算間違いに原因があったのだという。まずは給付開始年齢を引き上げるなどして、年金に手をつけ、その上で、現在国が行っている社会保障の中で、公的な施策として行われなければならないものと、そうでないものを改めて見直す必要があると野口氏は言う。

 野口氏は、そもそも年金や医療や介護は受益者がはっきりしているため、原理的には料金徴収が可能であり、公的に行う必然性が見いだせないものが多い。シビルミニマムとしての最低保障は必要だが、それ以上のものについては、公的な補助を再考する必要があると言う。

 ただし、年金については、残念ながらもはや制度が破綻しているため、民営化することは不可能だと言う。しかも、現行の年金制度の積立金は2030年頃には枯渇するため、そこにも多額の公的資金の投入が必要になることは覚悟しておく必要があると警告する。

 doomsdayを回避するためには構造改革、とりわけ歳出構造と産業構造の改革が不可欠と説く野口氏に、話を聞いた。

(藍原寛子さんの福島報告は、今週はお休みいたします。)

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