2008年3月29日
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08年大統領選挙でアメリカは何を選択しようとしているのか

会田弘継氏(共同通信編集委員)
マル激トーク・オン・ディマンド 第365回

 米国の大統領選挙は、民主党の候補者選びが大接戦にもつれ込み、下手をすると夏の全国党大会まで候補者が決まらない可能性が現実味を帯びてきた。メディアもオバマ対クリントンの熾烈な戦いを連日報道し、選挙戦そのものに対する関心は日本でも高まってきているようだ。
 確かに、オバマかクリントンが候補となり、11月の本選挙で共和党のマケインに勝利すれば、アメリカ史上初のアフリカ系アメリカ人大統領、もしくは女性大統領が誕生することになり、その歴史的な意味は計り知れない。2度のワシントン勤務を含め、米国の政治を長年追い続けている共同通信社の会田弘継氏は、年齢も46歳と若く政治経験も浅いながら、「包摂」や「連帯」をスローガンに掲げるオバマが、抜群の知名度を誇るヒラリー・クリントンを圧倒している現状に、アメリカ政治の新しい潮流を感じ取ると言う。アメリカは今、自分たちが黒人大統領を選ぶことができる国であることを世界に見せることで、イラク戦争後の泥沼でずたずたに踏みにじられたアメリカの誇りを再び取り戻そうとしているかのようでもある。
 しかし、オバマ対クリントンの指名争いだけに目を奪われていては、08年大統領選挙の歴史的な意味合いは見えてこない。実際、オバマとクリントンでは主張する政策には、ほとんど大きな差異は無い。
今回の大統領選挙は、人種やジェンダーの問題を横に置いても、アメリカ政治史における大きな転換点となる可能性が高いと、会田氏は言う。
 20世紀のアメリカでは、1933年のルーズベルト政権下でのニューディール連合以降、1980年のレーガン政権誕生までほぼ半世紀にわたり、アメリカの連邦政府はリベラル色の強い民主党が支配してきた。
 80年にレーガンが保守勢力の統合に成功し、50年ぶりに本格的な保守政権の樹立に成功したが、それを引き継いだブッシュ(父)は、内政、外交ともに真性保守の政治路線からはずれたと見なされ、1期のみで民主党のビル・クリントンに政権の座を明け渡す。クリントンは新しいタイプの民主党リーダーとして、競争原理を取り込みながらも社会的弱者層にも一定の配慮をするニューリベラルなどと囃されたが、結局過度なリベラル色が保守層から嫌気され、大統領就任2年後の中間選挙で上下両院とも民主党は過半数を失ってしまう。
 実は現在のブッシュ政権は、クリントン政権時代の遺産とも呼ぶべき共和党による議会の上下両院支配の上に、ホワイトハウスをも共和党が押さえた、共和党の全面支配下での本格政権だった。共和党がホワイトハウスと上下両院を同時に押さえるのは、何と1952年のアイゼンハワー政権以来のことだった。
 再び本格的な保守政治を期待されたブッシュ誕生だったが、政権発足後間もなく9・11の同時テロによって政策面での選択肢を著しく制限されることになる。そして、ブッシュ政権は、ネオコン主導で前のめりに突っ込んでいったイラク戦争で大きくつまずき、06年の中間選挙で共和党は上下両院ともに過半数を民主党に奪われてしまう。
 そうした中、08年の大統領選挙で民主党候補が勝利すれば、クリントン以来16年ぶりにホワイトハウスと上下両院を同時に民主党が押さえることになり、久々の本格的なリベラル政権が誕生することになる。しかし同時に、冷戦後のグローバル化された現在の世界では、旧来の保守対リベラルの構図そのものも変質していると会田氏は指摘する。
 今週はアメリカの政治思想史に詳しい会田氏とともに、米国大統領選の現状を分析するとともに、米国の政治思想史の流れ中での08年選挙の位置づけと意味合いを考えてみた。

会田 弘継あいだ ひろつぐ
(共同通信編集委員)
1951年埼玉県生まれ。76年東京外語大学英米科卒業。同年共同通信社に入社。社会部記者、ワシントン特派員、ジュネーブ支局長などを歴任の後、02~05年ワシントン支局長。05年より現職。著書に『戦争をはじめるのは誰か』、訳書にフランシス・フクヤマの『アメリカの終わり』など。 365_aida
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