アメリカはどこへ向かっているのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第583回)

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公開日 2012年06月16日

ゲスト

共同通信社論説委員長兼編集委員室長

1951年埼玉県生まれ。76年東京外国語大学英米科卒業。同年共同通信社に入社。ジュネーブ支局長、ワシントン支局長、2010年より編集委員室長。12年より論説委員長を兼務。著書に『戦争をはじめるのは誰か』、『追跡・アメリカの思想家たち』など。

著書

概要

 どうもアメリカの様子がおかしい。

 4年前、「Yes, You Can」の合い言葉とともに米国民の熱烈な支持を受けて当選を果たし、リーマンショックを招いた金融制度を規制する制度改革や国民皆保険などを成し遂げたオバマ大統領は、今や再選すら危ぶまれるほど不人気に陥っている。

 また、2年前の中間選挙でも、穏健派や良識派の部類に属するベテラン議員らが、過激な主張を掲げる保守系の若手候補に相次いで敗退するなど、アメリカが退っ引きならない方向に向かっているようだ。

 アメリカの政治思想史に詳しい共同通信論説委員長の会田弘継氏は、こうしたアメリカの変化を、20世紀に圧倒的な軍事、経済力によって世界をリードしたアメリカの権勢が衰えを見せたことの裏返しだと指摘する。20世紀は、世界中の人々がアメリカ社会に多くの普遍的価値が体現されていると感じた。それが冷戦後の欧州の統一や中国の台頭などによって、アメリカの力が経済軍事両面で相対的に低下したために、アメリカ社会の普遍性よりも、その特殊性がより強く意識されるようになったのではないかと、会田氏は言う。

 アメリカが普遍的な価値として押し進めた経済のグローバル化は、結果的にアメリカ自身の基礎を掘り崩してしまった。パックスアメリカーナの象徴とも呼ぶべき分厚く豊かな中流階級は無残に崩壊し、不況と高い失業率に喘ぐ中、極端に保守的な主張をするティーパーティーと呼ばれる政治勢力が大きな力を得ている。

 現在のアメリカの保守化現象は、一時的なものなのか。それともアメリカは新たな保守の時代に入ったのか。会田氏は、ティーパーティーのような極端な保守主義はこれからも繰返し発作的に現れるだろうが、それがアメリカ政治の主流となることはないだろうと予想する。ティーパーティー運動は、国際政治経済でのアメリカの相対的地位が低下し、その文化的特殊性も徐々に平準化される中での、リバタリアン的なるものの最後の反撃と見るべきだと主張する。

 会田氏によると、ニクソン政権以降、南部での支持獲得に力を入れてきた共和党は、その過程でリベラルな価値を切り捨てる一方、南部の保守思想に取り込まれていったのだと言う。そして現在の共和党は地域的にも思想的にも「南部化」した地方政党となってしまっていると言うのだ。しかし、氏は、共和党大統領選候補に確定しているロムニー氏はそんな南部化してしまった共和党をもう一度リベラルな国民政党に戻すことができるかもしれない可能性を秘めた候補だと話す。ロムニー氏の中にモルモン教徒として極貧の生活から実業家として身を起こし政治家となった父ジョージ・ロムニー氏の姿が二重写しに見えるのだと言う。父ロムニー氏は公民権運動に積極的に参加し当時共和党の中で最もリベラルな価値を体現した政治家であった。その子であるミット・ロムニー氏もマサチューセッツ州知事時代に皆保険制度を導入するなどその片鱗を見せている。

 しかし、仮に、この流れが一時的なものだったとしても、今、アメリカ社会が大きな転換期を迎えていることはまちがいない。一番の問題はアメリカ自身が、自分たちがこれからどこへ向かおうとしているのかを、見極められていないところかもしれない。

 現在アメリカ社会で起きている変化とその歴史的な意味合いについて、会田弘継氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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