2011年7月16日
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これで検察は生まれ変われるか

郷原信郎氏(弁護士・名城大学教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第535回

 大阪地検特捜部証拠改ざん事件を受けて、検討されていた検察改革案が8日、笠間治雄検事総長から発表された。特捜部の独自捜査機能の縮小や監察指導部、専門委員会の設置など組織の再編や、捜査のチェック体制の強化や取り調べの可視化などが盛り込まれたが、廃止の声もあった特捜部はひとまず存続することが決まった。
 しかし、検察に対する国民の不信感は根強い。この改革案で検察は生まれ変わり、再び市民の信頼を取り戻すことができるのかを、検察のあり方検討会の委員を務めた郷原信郎氏と考えた。
 今回の改革案は3月31日に出された法務大臣の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」の提言を受け、江田五月法相の指示でまとめられたもの。法相から3か月以内に具体策の提示を求められていたため、これまでに決まった案が8日発表された。
 改革案では東京、大阪、名古屋にある特捜部を改変し、これまでの独自捜査重視から財政・経済事件へ重点を移すことを目指している。
 会見で笠間総長は「独自捜査をやる検事が一段上だという意識を改めなければならない。特捜部の原点は財政経済事件」と話した。
 郷原氏は改革案に一定の評価を与えつつも、この改革によって検察の根源的な問題が解決するかどうかは、まだ今後の展開を見守る必要があるとの立場を取る。これまでの検察は独立性が重んじられるあまり、それが自己目的化し、内部だけですべてが決められてしまう特殊な組織になっていたと、郷原氏は言う。
 強盗や放火など社会の外縁で起きる事件については、専門性を持った検察が対応することに問題はなかったが、時代とともに複雑に移り変わる政治や経済・社会に大きな影響を及ぼす事件にかかわる検察が、あまりにも世の中から隔絶されていたことで、世の中の変化に対応できなくなっていたのだ。郵便不正事件から証拠改ざん事件にいたる一連の検察不祥事には、機能不全に陥った検察の問題が凝縮されている。
 しかし、今回の改革によって検察の捜査能力の低下を懸念する声もある。これまで検察が依って立つものだった絶対的な正義が相対化された時、検察官たちはどこからモチベーションを調達してくるかも重要な問題になる。
 検察問題以外にも、日本の刑事司法は多くの問題を内包している。長い拘留期間、代用監獄、推定無罪を無視したマスコミ報道と捜査担当者からマスコミへのリーク、そしてそうした無理な捜査の結果にお墨付きを与える裁判所等々、枚挙にいとまがない。今回の検察改革が日本の刑事司法改革の第一歩となるかを、郷原氏と考えた。

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郷原信郎ごうはらのぶお
(弁護士・名城大学教授)
1955年島根県生まれ。77年東京大学理学部卒業。同年三井鉱山入社。80年司法試験合格。83年検事任官。東京地検検事、広島地検特別刑事部長、長崎地検次席検事などを経て06年退官。桐蔭横浜大学教授を経て09年から現職。10年、法相の私的諮問機関「検察の在り方検討会議」委員を務めた。10年より総務省顧問・コンプライアンス室長を兼務。著書に『検察が危ない』『組織の思考が止まるとき』などがある。  535_gouhara

 

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