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2015年06月27日公開

焼け太りの盗聴法改正に待った!

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第742回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1943年東京都生まれ。67年中央大学法学部卒業。72年同大学大学院法学研究科博士課程修了。静岡大学法経短期大学部教授、関東学院大学法学部教授などを経て97年より同大学法学研究科教授。2014年定年退職。著書に『さらば!共謀罪・心に手錠はかけられない』、『刑法学批判序説』、『国家刑罰権力と近代刑法の原点』など。

著書

概要

 1999年、すったもんだの末に何とか可決に漕ぎ着けた盗聴法という妖怪が、16年の年月を経て、再び永田町、霞ヶ関周辺を跋扈し始めている。

 集団的自衛権をめぐり大きく揺れる国会の陰で、警察の盗聴権限を大幅に拡大する盗聴法の改正案の審議が進んでいるのだ。

 そもそも今国会で審議されている刑事訴訟法の改正案は、村木厚子・厚労省雇用均等・児童家庭局局長(当時・現在は厚労事務次官)に対する証拠改ざん事件や、志布志事件、布川事件、足利事件などの冤罪事件が相次いだことを受けて、警察や検察の取り調べの可視化を進める必要があるとの共通認識の元で議論が始まったものだった。

 民主党政権下で設けられた「検察のあり方検討会」には、元検事の郷原信郎氏やジャーナリストの江川紹子氏らが委員として参加し、取り調べの可視化の必要性を強調する報告書がまとめられていた。ところが、検討会の議論を引き継ぐ形で設置された法相の諮問機関である法制審議会の特別部会には「新時代の刑事司法制度特別部会」などといった名称が与えられ、取り調べの可視化と並行する形で、盗聴法や司法取引といった警察や検察により強い捜査権限を与える施策が議論されるようになった。

 最終的に肝心要の可視化の方は裁判員裁判の対象事件と検察の特捜部が取り扱う事件に限定されることになった。これは刑事事件全体の2~3%程度でしかない。97%の刑事事件では依然として弁護士の立ち会いもない状態の下で密室の取り調べが続くことになった。

 可視化が極度に限定されたものにとどまる一方で、その交換条件のような形で出てきた捜査権限の強化は、盗聴権限の拡大と司法取引の導入がしっかりと刑事訴訟法の改正案に含められ、今国会に提出されている。審議日程上、微妙なところもあるが、1999年の盗聴法導入時と比べ、主要マスコミに法改正の問題点を指摘する報道がほとんど見られないことや、市民社会の目が安保法制の方に向いていることなどから、法案は今国会で可決する可能性が高い。

 刑事訴訟法の改正案が謳う盗聴権限の拡大は、盗聴対象となる犯罪の種類をこれまでの4類型から13類型に増やすことと、これまで警察が令状を得た上で実際に盗聴を行うためには通信事業社に出向いていく必要があったところを、改正案ではネット回線を通じて全国の警察署に居ながらにして、通話の盗聴が可能になる点に集約される。

 具体的にはこれまで薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の4種類の犯罪のみが盗聴の対象だったところに、窃盗や詐欺など新たに9種類の犯罪を加えるとしている。また、警察署内からの盗聴が可能になることで、これまで盗聴の現場で要求されていた通信事業者の職員の立ち会いが不要になる。警察署の中で、警察官だけが知るところで盗聴を行うことが可能になる。

 形式上は盗聴した通話はすべて録音され、裁判所に提出されなければならないとされている。しかし、盗聴権限の拡大に批判的な関東学院大学名誉教授の足立昌勝氏は、警察が盗聴したすべての通話を録音するかどうかも、また通話を記録したメディア媒体をすべて裁判所に提出する保障がないため、濫用の危険性が排除できないと指摘する。

 そもそも日本における犯罪は2003年以降、全体として減少傾向にあり、今急いで捜査権限を拡大しなければならないような治安状況にあるわけではない。盗聴は、盗聴されていることが分からないから盗聴なのであり、本質的に濫用の危険性を伴う。また、憲法で保障されている通信の自由にも抵触する可能性がある。

 このようにリスクも大きく人権上も問題の多い盗聴権限を、なぜ今急いで拡大する必要があるのか。警察は多発するオレオレ詐欺に対抗するためには盗聴が有効だと説明する。しかし、そもそも組織的な詐欺を働こうという犯罪集団が、犯行に関わる重要な情報を電話でやりとりするとは到底考えにくい。

 一方で、盗聴法の改正によって警察署に設置されることになる盗聴用のPCは、特定電子計算機などと呼ばれ、1台あたり10~30億円のコストが見込まれているという。盗聴件数が増えれば、当然、盗聴作業に従事する捜査官の数も増員が必要となる。これが警察による新たな利権とポスト拡大につながることは想像に難くない。

 警察による盗聴権の拡大はわれわれ市民社会にどういう影響を及ぼすのか。警察権力が肥大化することによって、市民はどのような不利益を受けるのか。そもそもの発端である刑事司法改革が捜査権限の拡大につながってしまっている現状とそこに含まれる盗聴法改正案、新たに導入される司法取引の問題などについて、ゲストの足立昌勝氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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