「日本病」による失われた30年をいかに取り戻すか
第一生命経済研究所首席エコノミスト
1997年気象予報士合格後、天気報道に携る。2005年ハーバード大学大学院環境公共政策学修了。05年より現職。
11月17日、スペインのバレンシアで開かれた国連気候変動に関する政府間パネル(以下IPCC)の総会で、第4次統合報告書が承認された。2001年以来となるIPCCのこの報告書は、4000人におよぶ科学者が「地球温暖化」に対して、科学的なデータに基づいて、検討を続けてきた地球温暖化に関する科学的分析の集大成で、今後の各国が政策決定する際の根拠となるものだ。
今回の報告書では、地球温暖化の原因が人為的なものであることが、ほぼ断定されている。また、予想を超える早いペースで温暖化は進んでおり、このまま対策なしに放置すれば、今後地球全体の平均気温は最大で4度、海面も最大で59センチ上昇するなど、地球温暖化が、人類共通の全地球的な危機であることが、科学的に合意された。
しかし、日本での反応は鈍い。WWFで地球温暖化の問題を担当する小西雅子氏は、バレンシアでの総会にもオブザーバーとして参加したが、日本政府が今回の報告書をまとめるために果たした貢献の大きさには一定の評価を与えつつ、温暖化を防止するための施策という面では、日本は大きく世界に遅れをとっていると嘆く。
「シナリオは全て提示された。後は政治が決断して実行に移すだけ」と、小西氏は言う。だが、多くの面で日本は、欧米に大きく遅れをとっている。脱炭素化社会へ向けた取り組みでも、欧米ではこれをビジネスチャンスとして捉えしたたかに準備を進めているが、日本では肝心の産業界が長期的な施策に及び腰なため、政治も動こうとしない。そしてその根底には、環境意識そのものは高まっていても、それが政治的な行動となって現れてこない日本の一般国民の民度の問題も見逃せない。
12月3日からインドネシアのバリではじまる国連気候変動枠組み条約締結国会議(COP13)では、IPCCの報告書を根拠にして、京都議定書以降の国際的な枠組みが作られようとしている。ポスト京都では日本に何ができるのか、何をすべきなのか、小西氏とともに考えた。