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2007年12月15日公開

なぜネット上の言論を規制するのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第350回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

一橋大学名誉教授・通信・放送の総合的な法体系に関する研究会座長

1936年栃木県生まれ。62年東京大学大学院修士課程修了。78年一橋大学法学部教授、97年中央大学法学部教授、04年中央大学法科大学院教授を経て、07年に定年退職。著書に「プライバシーと高度情報化社会」、「インターネット社会と法」など。専門は情報公開・個人情報保護。99年より00年まで政府「個人情報保護検討部会」座長、06年より総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」の座長を務める。

概要

 インターネット上の言論や表現に法的規制がかけられる可能性が、現実のものとなりつつある!
 総務省の「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」が12月6日に発表した最終報告書に関する報道では、そのような文言がメディアの見出しを飾った。
 実際、同研究会の最終報告書は、現在、10本以上ある、放送と通信に関する法律を「情報通信法」(仮)に一本化し、放送から携帯電話、インターネットにいたる通信と放送全体をプラットフォーム、伝送インフラ、コンテンツの3つの階層に分けた上で、階層ごとに適切な規制を設けることを提言している。そして、階層の最上段に位置するコンテンツについては、影響力に応じた段階的な規制を提唱している。これは、政府によって影響力が大きいとみなされれば、インターネット上のコンテンツでも放送並の規制を受ける可能性があることを意味していると受けとめることが可能だ。総務省はこの報告書をもとに具体的な検討をはじめ、2010年をめどに、法案を国会へ提出する予定だという。
 通信と放送の融合については、新たなIT技術の登場とともに、これまで現状を追認する形で新たな法律が次々と作られるパッチワーク的状況が、1980年代以降続いてきた。しかし、1990年代後半以降のインターネットの普及によって、いよいよ通信と放送の識別が困難になってきた。NHKを含む各地上波放送局がネット上でも動画配信を行うようになる一方で、インターネット上での個人情報の流出やプライバシーの侵害が社会問題となるなど、旧来の電波法と放送法を中心とする法体系の枠組みの中で、消費者や視聴者保護の観点から必要となる規制を実施することが、困難になってきていることは間違いない。
 そうした状況を受けて、今回の報告書では、これまで事業体別に個別に規制されてきた縦割りの法体制を見直し、コンテンツ、伝送インフラ、プラットフォームの3階層ごと横ぐしの法規制を行うとしている。例えば、コンテンツには、地上波テレビ番組、CATVの番組、SNS、2ちゃんねる、個人のブログが一律に含まれるが、これまでインターネットのコンテンツには新聞や出版と同様に、一切規制がなかった。しかし、この提言通りに法制化が進めば、インターネット上のコンテンツも、影響力に応じて「地上波テレビ」並みの規制がかかる可能性がでてきたわけだ。少なくとも、報告書発表直後の報道では、そのように解釈されていた。
 しかし、同研究会の座長を務める堀部政男氏は、この法律で「ネットの自由が侵される」という一連のマスコミの報道を言下に否定する。個人情報保護法の生みの親としても知られ、個人情報やプライバシー保護に造詣が深い堀部氏は、匿名掲示板を舞台とする犯罪行為やプライバシーの流出、個人ブログなどでの事実無根の情報の流布など、インターネットが多くの問題をはらんでいることは指摘しつつも、今回の研究会の報告書でインターネットのコンテンツに規制を掛ける意図は無かったことを明言する。
 同報告書ではむしろ、インターネットそのものは原則自由であることを堅持する姿勢を明確に打ち出し、むしろ、既存の放送メディアがインターネット上でコンテンツを配信する場合に、現在は何の規制も受けていない状態を改め、現存の放送法並みの規制を設けることを提言しているに過ぎないと説明する。つまり、SNSや掲示板、個人ブログなど従来からあるインターネットのコンテンツは「オープンメディアコンテンツ」として今後も自由が堅持され、地上波テレビやCS放送、CATVなど既存の放送メディアが、「特別・一般メディアサービス」として、社会的な影響力に応じた段階的な規制が設けられるべきと考えたに過ぎないと言うのだ。
 研究会の座長が直々にそう説明していることの意味は重いが、とは言え、あたかも報告書が「ネットの言論にも規制が必要」と提言したかのように一部で報じられ、それが一人歩きし始めている兆しも散見される。また、影響力を誰がどのような基準で測るかなど、一歩間違えば言論への政治介入となり得るような懸念も少なからず残る。
今回は、そのような誤解を解く意味でも、研究会座長の堀部氏に報告書の真意を質すと同時に、ネットの言論規制に対する考え方と、ネット上で発生している個人情報の流失やプライバシーの侵害などの諸問題にどう対応すべきかを考えた。また、ジャーナリストの佐々木俊尚氏にも、今回の報告書の評価を聞いた。

<関連情報>
総務省「通信・放送の総合的な法体系に関する研究会」メンバー
座長・堀部 政男(一橋大学名誉教授)
構成員・安藤 真(東京工業大学工学部教授)、多賀谷 一照(千葉大学法経学部教授)、中村 伊知哉(慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構特別研究教授)、長谷部 恭男(東京大学法学部教授)、濱田 純一(東京大学大学院情報学環教授)、舟田 正之(立教大学法学部教授)、村井 純(慶應義塾大学環境情報学部教授)、村上 輝康(野村総合研究所理事長)

●研究会の報告書
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