何が日本の「原発ゼロ」を阻んでいるのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第597回)

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公開日 2012年09月22日

ゲスト

慶應義塾大学経済学部教授

1952年東京都生まれ。75年、東京大学経済学部卒業。東京大学大学院経済学研究科単位取得満期修了。東京大学社会科学研究所助手、法政大学経済学部教授などを経て2000年から現職。専門は制度経済学、財政学。著書に「新・反グローバリズム 金融資本主義を超えて」、「「脱原発」成長論 新しい産業革命へ」など。

著書

ジャーナリスト

1958年東京都生まれ。82年国際基督教大学教養学部卒業。89年同大学大学院比較文化研究科博士課程修了。84年二玄社嘱託として編集・執筆を担当、89年よりフリー。著書に「私たちはこうして「原発大国」を選んだ」、「原発報道とメディア」など。2007年より恵泉女学園大学文学部教授を兼務。

著書

司会

概要

 わずか1週間前の9月14日、政府のエネルギー・環境会議は、2030年代の原発ゼロを目標とする明確な政策方針「革新的エネルギー・環境戦略」を決定し、福島第一原発の大事故から1年半を経て、ようやく日本が原発にゼロに向けて動き出すかに見えた。

 ところがその直後から、方々で綻びが見え始めた。14日に決定された「革新的エネルギー・環境戦略」は18日の閣議決定を経て正式な政府方針となる予定だったが、閣議決定は回避された。また、戦略に謳われていた原発の新説・増設を認めない方針についても、枝野経産大臣が建設中の原発についてはこれを容認する方針を表明するなど、原発ゼロを目指すとした政府の本気度が1週間にして怪しくなってきている。

 それにしても、たかが一つの発電方法に過ぎない原発をやめることが、なぜそんなに難しいのか。

 原子力委員会の新大綱策定会議の委員などを務める慶応大学の金子勝経済学部教授は、経済学者の立場から脱原発問題の本質が電力会社の経営問題にあると指摘する。今日、日本にとって原発は1990年代に問題となった金融機関の不良債権と同じような意味合いを持つと金子氏は言う。よしんば原発事故が再び起きなかった起かなかったとしても不良債権は速やかに処理しなければ膨らみ続ける。最終的にそれは国民が税金や電気代をもって負担しなければならない。しかし、今その処理を断行すれば、大半の電力会社は破綻するし、同時にこれまで「原発利権」の形で隠されていた膨大な原発不良債権が表面に出てくる。原発利権や電力利権が日本のエスタブリッシュメントの間にも広く浸透しているため、政府が原発をゼロする方針、つまり不良債権を処理する方針を打ち出した瞬間に、経済界や官界では、そんなことをされてはたまらないと、蜂の巣を突いたような大騒ぎになってしまったというのだ。

 一方、原発をめぐる二項対立の構図を避けるべきと主張してきたジャーナリストの武田徹氏は今回、政府案が切り崩された一因と取りざたされるアメリカ政府の意向について、アメリカは日本が核兵器の保有が可能な状況を作ることで、それを押さえ込めるのはアメリカしかいないという立場を得ることで、アジアの政治的な影響力を保持しようとしているとの説を紹介する。日本が原発をやめ、核燃料サイクルを停止すれば、核兵器に転用するくらいしか価値のない大量のプルトニウムを保有することになってしまう。そのような安全保障にも深く関わる政策転換となると、日本の官界、財界にはアメリカの意向を代弁する人が大量に出てくるのがこれまでの日本の常だった。どうやら今回もご多聞に漏れずそのような事態が起きているようだ。

 世論調査やパブリックコメント等で明らかになった大多数の国民の脱原発への思いと、政府のエネルギー政策の間に大きな乖離があるように感じてしまう背景には、日本の中枢が電力・原発・アメリカといった高度経済成長や冷戦下の論理から抜けだせないでいることが無関係ではないようだ。

 しかし、そんなことを言っていては、日本はこれまでも、そしてこれからも、何の政策転換もできない。そもそも日本が民主主義国と言えるのかさえ疑わしくなってくるではないか。

 政府の原発ゼロはなぜ切り崩されているのか。誰がそれを切り崩しているのか。その切り崩しは誰のためなのか。民意を正しく政治に反映させるために、我々に何ができるのか。金子氏、武田氏をゲストに迎え、長期出張より帰国直後の社会学者の宮台真司とジャーナリストの神保哲生が議論した。

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