なぜ今これまでにないほど核戦争の脅威が高まっているのか
明治学院大学国際平和研究所客員所員、明治学院大学名誉教授
最新の政治情勢を解説する永田町ポリティコ。8回目の今回は統一地方選後半戦と補欠選挙の結果を総括した上で、それが今後の政局に与える影響などを議論した。
結果だけ見れば、日本維新の会の圧勝だった。まだまだ地方議会では弱小勢力ながら、維新は道府県議会でも市区町村議会でも議席を改選前の何倍にも増やし、他の政党がいずれも伸び悩む中、文字通り一人勝ちを収めた。また、現職議員の死去や辞任、転出にともなって行われた5つの衆参選挙区の補欠選挙でも、衆院和歌山1区で維新の女性候補が自民党の元職に競り勝つなど、維新の勢いは国政選挙にまで及んだ。統一地方選前半の奈良県知事選で維新候補が勝利したことに加え、維新の勢いは大阪から周辺県にまで広がっていることを印象付けた。
その一方で、野党第一党の立憲民主党と共産党、そして伝統的には地方選挙にめっぽう強い公明党の不振が際だった。立憲民主党は補欠選挙では不戦敗を含め全敗に終わった。また共産党はすべての地方議会選挙で大きく議席を減らした。いずれも国政の現状が地方選挙にも投影される結果となった。
補欠選挙では自民党は当初の予想を上回る4つの選挙で勝利を収めた。しかし、そのうち参院大分選挙区と衆院千葉5区は薄氷を踏む僅差の勝利だったほか、自民王国山口でも2区で引退する岸信夫元防衛相の長男の岸信千世氏が野党候補の猛追を許すなど、自民党にとっては決して楽な選挙ではなかった。
維新の躍進についてポリティコの司会者で政治ジャーナリストの角谷浩一は、これまで維新は野党第2党というポジションのうま味を全面的に享受してきたが、この選挙でいよいよ野党第1党をうかがうポジションにのし上がってきた今、維新には有権者のより厳しい目が注がれることになるだろうと語る。現在の日本の選挙制度の下では野党第一党はいつでも与党に取って代われる政党であることが求められる。そのため党内の政策の不一致や主張する政策間の不整合などがあれば、たちまち厳しい批判に晒されることが必至だ。しかし、野党第2党の維新はこれまで、あるときは自民党よりもより右側に位置する保守政党として憲法改正などを積極的に推進したかと思えば、またあるときは改革政党として大胆な制度改革や歳出改革を主張するなど、さほど批判を受けることなく自由に自分たちの言いたいことを主張することができたと、角谷は指摘する。
今回の地方選で維新の党勢が大阪からより広い関西圏、ひいては全国にも広がりを見せていることが明らかになり、維新にとっては不振の立憲民主党に代わって野党第一党となる道が開けてきた。しかし、同時にそれは今後、維新の一挙手一投足により厳しい目が注がれることをも意味する。維新が大阪の地方政党から全国政党に脱皮し、立憲に取って代わる野党第一党、そしてひいては政権交代の実現が可能な政党へと成長していけるかどうかは、これからが正念場となる。
補選の結果、岸田政権が年内に解散総選挙を打つ可能性はほとんどなくなった。5月は広島で開かれるG7サミット一色になりそうだが、その後、永田町では内閣改造や場合によっては野党再編が待ち構えている可能性がある。
また、今回の地方選は下がり続ける投票率に歯止めをかけることができなかった。無投票当選率や現職の再選率が高いままでは、わざわざ投票にいく気にならない有権者が多くいるのは無理もないことだ。また選挙制度もやたらと候補者が乱立して見える大選挙区や、同じ政党から複数の候補者が立候補する中選挙区制のままで、決して有権者にとって候補者の顔が見えるわかりやすい選挙とはなっていない。そろそろ地方選挙も先進国として恥ずかしくない制度に変えていくための議論を始める時期が来ているのではないか。
統一地方選と補欠選挙の結果が中央政界に与える影響を、角谷浩一と神保哲生が読み解いた。
*番組中の「市議会議員選挙 無投票当選選挙区」のフリップ(1:10:11~1:10:28)の県名表記に誤りがありましたので、修正いたしました。ここに訂正しお詫びいたします。