2017年11月18日
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ロシアゲートに揺れるトランプ政権はどこまで持つか

渡辺靖氏(慶應義塾大学教授)
ニュース・コメンタリー (2017年11月18日)

 トランプがアジア歴訪に出発する直前から、ワシントンではトランプ政権の屋台骨を揺るがすと言っても過言ではない事態が進行していた。

 2016年の大統領選挙でトランプ陣営がロシアと共謀して選挙結果に影響を及ぼそうとした疑惑がもたれている、いわゆるロシアゲートに大きな動きがあったのだ。

 モラー特別検察官は10月30日、選挙戦でトランプ陣営の選対本部長を務めたポール・マナフォート氏や、同氏のビジネスパートナーだったリック・ゲーツ氏、選挙戦でトランプ陣営の外交政策顧問を務めたジョージ・パパドプロス被告の3人を資金洗浄、共謀など12件の罪で起訴した。ロシアゲートに関連してトランプ政権関係者が起訴されるのはこれが初めてのことで、5月に特別検察官が設置されて以来、ロシアゲートの捜査は新たな局面に入った。

 モラー特別検察官はマナフォート氏らに対して、捜査への協力や情報提供と引き換えに司法取引を持ち掛けていると見られる。パパドプロス氏は既に司法取引に応じているとの情報もあり、今後トランプ陣営の中枢や、政権の要職にある大物の逮捕や起訴があれば、事が大統領選挙に干渉するための他国との共謀ということもあり、トランプ政権の正統性が根底から揺らぐ可能性がある。

 アメリカ政治が専門の渡辺靖慶応大学教授は今後、マイケル・フリン元国家安全保障担当補佐官や、トランプ大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏、トランプ氏の長男のトランプ・ジュニアなどが捜査線上に浮上する可能性があると指摘する。政権の重鎮が逮捕・起訴されるような事態になれば、一気に政局が流動化する可能性がある。

 また、トランプ大統領自身が、陣営とロシアの関係をどの程度把握していたかも、今後、大きな争点になる。大統領選挙に出馬を表明した直後、アメリカ第一主義を掲げるトランプ氏は、ロシアに対しても厳しい言説を発していた。それが選挙戦のある段階から、ぱったりとロシア批判を封印したばかりか、アメリカはロシアと協力すべきとの主張に突然路線を変更したことが指摘されている。トランプ大統領自身の関与が取りざたされるようになれば、ウォーターゲート事件以来の大スキャンダルになる可能性もある。

 しかし、その一方でトランプ大統領には、トランプがどのような失態を演じようとも、あくまでトランプを支持し続ける鉄板の支持層がアメリカ人の33%程度いることもわかってきた。トランプ大統領がどれだけの問題発言や問題行動を繰り返しても、支持率がそのラインを割らないからだ。

 彼らの多くは、トランプが叩かれれば叩かれるほど、それが政敵による陰謀の仕業と受け止め、かえってトランプ支持を強める傾向にあると言われる。全体の33%とは言え、彼らの多くは万難を排してでも投票に行くことを考えると、アメリカの大統領選挙の投票率が6割に満たない中、トランプの支持基盤は小さいながらも盤石という見方もできる。

 また、ウォーターゲート事件の時は、大統領の弾劾決議案を提出する資格を持つ連邦議会の下院で、大統領とは敵対する民主党が過半数の議席を握っていた。しかし、今は上下両院ともにトランプ大統領が所属する与党の共和党が多数を占めている。弾劾のハードルが高いことは確かだ。

 今後、ロシアゲートはどうなっていくのか。それがトランプ政権の政権運営能力にどのような影響を及ぼすのか。また、トランプとの心中も辞さない鉄板の33%とはどういう人たちなのか。希代のアメリカウオッチャーの渡辺靖氏とジャーナリストの神保哲生が議論した。

 
渡辺 靖(わたなべ やすし)
慶應義塾大学環境情報学部教授
1967年北海道生まれ。90年上智大学外国語学部卒業。92年ハーバード大学大学院東アジア地域研究科修士課程修了。97年同大学大学院人類学部博士課程修了。博士(社会人類学)。ケンブリッジ大学、英オックスフォード大学、ハーバード大学客員研究員などを経て、2006年より現職。著書に『アメリカのジレンマ・実験国家はどこへゆくのか』、『沈まぬアメリカ 拡散するソフト・パワーとその真価』など。共著に『反グローバリゼーションとポピュリズムー 「トランプ化」する世界』など。

 

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