2010年6月5日
  • 文字サイズ
  • 印刷

鳩山政権は何に躓いたのか-新政権の課題

松井孝治氏(内閣官房副長官)、長谷川幸洋氏(東京新聞・中日新聞論説委員)、 福山哲郎氏(外務副大臣)、山口二郎氏(北海道大学教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第477回

 民主党政権発足から8ヶ月余り。社民党の連立政権離脱の激震も収まらないうちに、今度は鳩山首相が辞任、そして小沢幹事長も辞任した。鳩山首相は2日の辞意表明演説で政権交代の成果を訴える一方、それでも「国民に聞く耳を持たれなくなってしまった」原因として、政治とカネの問題と普天間移設問題の二つを挙げた。
 辞任表明の前日、鳩山首相から直接辞意を伝えられたという松井官房副長官は、辞任の理由として特に首相が強調したのが政治とカネの問題だったと明かす。クリーンな政治を目指して自民党を飛び出し、民主党を結党したはずだったのに、自分と小沢幹事長が抱える政治とカネの問題で国民の指弾を受け、党を窮地に立たせている。このままでは民主党も自民党と同じように見られ、政策の実行もままならない。もう一度民主党の原点を取り戻し、党の再生を図るためには、小沢幹事長と共に辞任するしかない。そう述べた鳩山首相は、スピーチライター役の松井氏が用意する演説原稿を持たずに辞意表明の演説に臨んだという。
 確かに政権与党のトップ2人が政治とカネの問題を抱えたことが、政権の求心力にボディブローのように効いていたことはまちがいないが、鳩山政権を退陣に追い込む決定打となったのは、普天間飛行場の移設問題だった。なぜならば、これが政権のガバナンス(統治)能力を問う問題にまで発展してしまったからだ。
 「鳩山首相は普天間問題に関して、日米安保体制をアジアとの信頼関係の中に位置づけてより深化させるという大きなビジョンの中でが県外・国外を模索していた」。松井氏はこう言って首相を弁護する。そもそも先進国が自国の安全保障を他国任せにした上に、駐留基地を永続的に国内に配置させておくのはおかしいというのが首相の持論。戦後初の政権交代を成し遂げた以上、基地問題の解決を一歩でも前に進めるのが使命であるとして、民主党がマニフェストで落とした「県外移設」をあえて個人の思いとして公言したのが「最低でも県外」という言葉だったという。
 しかし、鳩山政権迷走の内実を追いかけた『官邸敗北』の著者で、東京新聞・中日新聞論説委員の長谷川幸洋氏は、マニフェストにないことを首相が公言したことで政権が迷走するのは目に見えていたと言い切る。長谷川氏によれば、政治とは政策という目標を決定し、その実行に至るまでの工程管理であるという。そのプロセスで対立が生じたり、それを調整するのもまた政治だが、マニフェストという党全体で共有されたものから首相が勝手に踏み出してしまえば、最初から内閣としてのゴールが定まらず、迷走するのも当たり前だというのだ。
 しかし松井氏は、最終的に鳩山政権がつまずいた本質的な原因は、マニフェストを忠実に実行することを優先し、政策を遂行するための制度改革を後回しにしたことだと言う。具体的には、当初は民主党政権の鳴り物入りだったはずの国家戦略局が全く機能しなかったことだ。政権交代とは本来ならば、統治構造の変革を可能にするほどインパクトのあるものであるにもかかわらず、民主党議員の多くが、システム変革に関心を持たなかった。
 首相辞任後わずか2日で菅直人氏が新首相に選出されたが、どのような組閣を行うにせよ、鳩山政権の轍を踏まないために、新政権は真っ先に制度改革に着手すべきだと松井氏は提案する。
 今週はまず、首相の片腕として鳩山政権を支えた松井氏を迎え(Part1)、鳩山政権がどこでつまずいたのかを検証した上で、長谷川氏とともにその議論をさらに深めた(Part2)。
 その上で、福山哲郎外務副大臣をゲストに迎え、鳩山政権の政治主導のあり方などについて議論をした。(Part3)
 さらに、結党時以来民主党のブレーンを務める山口二郎北海道大学教授を迎え、今回の鳩山辞任劇のもう一人の主役である小沢氏に焦点を当て、鳩山政権がなぜ破綻したのかを検証した。
 山口氏は、民主党の政権交代には、自民党的な政治のあり方を変えるという命題と、自民党的な手法に訴えてでも自民党を徹底的に潰すという2つの命題が存在しており、その矛盾を、小沢氏を政権与党内に抱えた鳩山首相が乗り越えられなかったことが政権の破綻につながったと指摘する。
 小沢氏が民主党に何をもたらしたのか、ひいては日本の政治においてどのような役割を果たしたのかについて山口氏と議論した。(Part4)
(今週は特別編成のため、ニュース・コメンタリーはありません。ご了承ください。)

 
松井 孝治まつい こうじ
(内閣官房副長官)
1960年京都府生まれ。83年東京大学教養学部卒業。90年ノースウェスタン大学経営大学院修士課程修了。83年通商産業省(現経済産業省)入省。通商政策局、機械情報産業局、内閣官房内閣副参事官(羽田・村山・橋本内閣)、行政改革会議事務局(橋本内閣)などを経て00年退官。01年参院初当選(京都選挙区)。党政策調査会副会長、ネクスト内閣府担当大臣、参院内閣委員会筆頭理事などを歴任。09年より現職。 著書に『この国のかたちを変える』。当選参院2回。  

 

 
長谷川 幸洋はせがわ ゆきひろ
(東京新聞・中日新聞論説委員)
1953年千葉県生まれ。76年慶応義塾大学経済学部卒業。89年ジョンズホプキンス大学高等国際問題研究大学院で国際公共政策修士取得。77年中日新聞社に入社。経済部、外報部、ブリュッセル支局長などを経て99年より現職。財政制度等審議会臨時委員、政府税制調査会委員などを歴任。『日本国の正体 政治家・官僚・メディア 本当の権力者は誰か』、『官邸敗北』など。 477_hasegawa

 

 
福山 哲郎ふくやま てつろう
(外務副大臣)
1962年東京都生まれ。86年同志社大学法学部卒業。95年京都大学大学院法学研究科修士課程修了。大和証券、松下政経塾塾生を経て98年参院初当選(無所属)。99年民主党入党。参院環境委員長、党政調会長代理などを歴任。当選2回(京都選挙区)。  

 

 
山口 二郎やまぐち じろう
(北海道大学法学部教授)
1958年岡山県生まれ。81年東京大学法学部卒業。同年同大学助手。北海道大学法学部助教 授を経て93年より現職。著書に『民主党政権は何をなすべきか』、『政権交代論』など。 477_yamaguchi

 

安全保障関連法
沖縄米軍基地問題
スタッフ募集
  • 登録
  • 解除