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2018年03月24日公開

なぜ官僚はそこまでやるのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第885回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1964年奈良県生まれ。88年同志社大学文学部卒業。96年ミシガン大学大学院公共政策学部修士課程修了。03年新潟大学大学院現代社会文化研究課博士課程修了。経済学博士。89年奈良県大和郡山市役所勤務を経て90年労働省(現厚生労働省)入省。職業安定局、新潟県総合政策部情報政策課長、厚労省大臣官房国際課課長補佐などを経て2004年退官。兵庫県立大学大学院教授などを経て14年より現職。著書に『公務員バッシングの研究』、『没落する官僚-エリート性の研究』(近日刊行予定)など。

著書

東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
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1983年京都府生まれ。2006年慶應義塾大学総合政策学部卒業。12年同大学同研究科博士課程単位取得退学。博士(政策・メディア)。慶應義塾大学助教、立命館大学大学院特別招聘准教授などを経て、16年4月より現職。著書に『メディアと自民党』、『情報武装する政治』など。

著書

司会

概要

 昨年来国会を紛糾させてきた森友学園問題が、ここに来て官僚制度、ひいては日本の民主主義の根幹を揺るがす重大な事態に発展している。財務省が決裁後に改竄された嘘の文書を国会に提出していたことが明らかになったからだ。来週には当時の責任者だった財務官僚の証人喚問が予定され、麻生財務相の辞任も時間の問題と見られるなど、大政局の様相を呈し始めている。

 しかし、それにしても、当初は大阪の一学校法人に対する国有地の不透明な廉売問題だったはずのこの問題がなぜ、ここまで大きな政治問題となってしまったのか。その根本原因は、森友学園に対する明らかに特例的な国有地の払い下げについて、政府が明確な説明ができなかったところにある。

 この問題は既に一年以上にわたり、国会やメディア上で取り上げられてきたが、今日にいたるまで、破格の条件で国有地が払い下げされた本当の理由は、ほとんど何も明らかになっていない。安倍首相夫人が建設予定の小学校の名誉校長を務めていることを知った官僚が、独自の判断で特例的な割引を行ったとする「忖度説」が取り沙汰されることが多いが、実際に首相サイドから秘書官などを通じて何らかの打診が行われていた可能性も否定できない。官邸で首相夫人付の職にあった経産省の谷査恵子氏と森友学園の籠池泰典理事長、財務省理財局との間で土地の払い下げの条件を巡るファックスのやりとりがあったことまでは明らかになっているからだ。

 誰かが勝手に忖度したのであれば、誰がどの段階で何のために忖度をしたのかを明らかにすればいいだけの話だ。また、実際に何らかの指示や口利きがあったのであれば、それを究明すればいい。しかし、安倍首相は自らの関与が無かったと言い張るだけで、政府として事実関係の調査をしようとしないため、いつまで経っても疑惑は疑惑のまま燻り続けてしまうのだ。

 結局、事の真相は今後の国会の証人喚問や検察の捜査を通じて明らかになることを期待するしかない。しかし、いずれのシナリオにおいても、一つ大きな疑問が残る。それは、なぜ天下のエリート官僚たちが、不正を働いてまで不正な土地取引に手を貸し、嘘の証言を行い、挙げ句の果てにそれを糊塗するために文書の改竄まで行ってしまうのかということだ。

 首相官邸側から明確な指示や打診があったのであれば、それに従うのはやむを得ないことかもしれない。しかし、もしそれが事実だったのであれば、なぜ官僚たちは嘘をついてまで政権を庇おうとするのか。また、官邸から指示がなく、単なる忖度の結果だったのであれば、なぜそれを認めることができないのか。いや、そもそもなぜ、何のために、そのような忖度をするのか。それは忠誠心のなせる業なのか。あるいは、どこかで何か別の原理が働いているのか。

 一般的には内閣人事局制度などで政権に人事を握られたことで、官僚、特に幹部官僚たちは官邸の意向には逆らえなくなっていると指摘されることが多い。そのような要素が多少なりともあったことは否定できないだろう。

 しかし、元厚生労働省の官僚で、その後大学教授に転身して官僚制度に関する研究を続けている神戸学院大学の中野雅至教授は、内閣人事局制度が導入される以前から、「いかに政治にうまく胡麻をするか」が官僚に求められる基本的な能力だったと指摘する。もっとも、かつて官僚が政治に胡麻をするのは「省益」のためだったが、内閣人事局制度などが導入され、政治の優位性が顕著になってからは、省益を度外視してでも政治の意向に従わざるを得なくなっていると、中野氏は言う。

 最近の官僚の国会答弁についても中野氏は、「官僚に余裕がなくなっている。昔はもっとしたたかに処理していた。省益にこだわっている場合ではなくなっているのだろう」と見る。

 古くはロッキード事件やリクルート事件に端を発する「政治とカネ」の問題や、大蔵省ノーパンしゃぶしゃぶスキャンダルなどを経る中で、われわれは「政治家個人から政党へ」そして「官僚から首相官邸へ」と、意図的に権力をシフトさせてきた。内閣人事局制度の他にも、政党助成金や小選挙区制の導入、内閣府という強大な権力を作った省庁再編、党や官僚の頭越しに首相官邸が予算や重要政策の枠組みを決定する経済財政諮問会議や規制改革推進会議、NSCの創設等々、これまで官僚機構や党や党の族議員の間に分散していた莫大な権力を、何年もかけて首相官邸に集中させてきたのが過去30年の日本の政治の歴史だった。

 その流れの中で官僚の立場や行動原理も大きく変わった。森友事件で財務官僚が取った一連の行動の中には、正義感や使命感といった倫理観はもとより、国家観や省益を守ろうとする意思すら感じ取れない。名門大学を卒業し、優秀な成績で国家公務員の職に就いた官僚たちが、その能力を政治への忖度や胡麻すりのためにすり減らしているとすれば、何とも勿体ない。少なくとも現在の官僚制度のあり方が国益に資するものになっているとは、とても言えないのではないだろうか。

 森友問題で露わになった官僚の不可解な行動の背景について、自身が官僚出身の中野氏に、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の西田亮介が聞いた。

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