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真っ当な「新しい資本主義」のすすめ

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1083回)

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公開日 2022年01月08日

ゲスト

東京大学名誉教授・社会事業大学学長

1946年埼玉県生まれ。69年東京大学経済学部卒業。日産自動車勤務を経て、81年東京大学大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学。専門は財政学。大阪市立大学助教授、東京大学教授を経て2009年退官。現在、東京大学名誉教授、社会事業大学学長。政府税制調査会会長代理、社会保障審議会年金部会長などを兼務。著書に『経済学は悲しみを分かち合うために――私の原点』、『「人間国家」への改革 参加保障型の福祉社会をつくる』、共著に『「分かち合い」社会の構想――連帯と共助のために』など。

著書

概要

 「新しい資本主義」が、グローバルよりローカルを、単純な市場原理よりも社会の保全を優先する、「分かち合い」の方向へ向かうかどうかが問われている。

 岸田政権の旗印が「新しい資本主義」だという。行き過ぎた資本主義が格差を生み、人類の生存にも関わる気候変動問題にもブレーキがかからないなど、数々の問題を生じさせていることは確かだ。何らかの軌道修正が必要なことは間違いないだろう。キャッチフレーズとしては悪くないのかもしれない。

 しかし、岸田政権の新しい資本主義の中身を具体的に見てみると、科学立国の推進やスタートアップ企業の支援、デジタル化による地方の活性化、外国半導体工場の誘致など、キャッチフレーズこそよく練られているものの、結局のところ成長戦略としては何ら目新しいものは見当たらない。かと思えば、分配戦略としては「賃上げ機運の醸成」「男女間賃金格差の解消」など、新鮮さもなければ具体性もないメニューが並ぶばかりで、これのどこが「新しい資本主義」なのか、皆目見当が付かない内容だ。これは「古い資本主義」とどう違うのか。そもそも岸田政権は「古い資本主義」のどこに問題があると考え、それをいかにして解消しようというのか。その根底をなす基本的な考え方が見えないのだ。

 「新しい資本主義」の具体的な内容は「新しい資本主義実現会議」なる会議で議論するということだが、ここまで3回開催された同会議は、何をもって新しい資本主義とするのかをめぐる堂々巡りの議論で迷走するばかりだったと聞く。岸田政権も安倍政権と同様、官邸官僚の多くを占める経産官僚が得意とするキャッチフレーズ内閣で終わってしまうのではないかという懸念が、早くも頭をもたげ始めている。

 しかし、せっかく日本の総理大臣が「新しい資本主義」を掲げたのであれば、ぜひともこの際、ここまでの資本主義の問題点を真剣に議論し、本当の意味での新しい資本主義を志向してみてはどうだろうか。少なくともその方向へ一歩を踏み出さない手はない。

 経済学者として一貫して分かち合いの経済政策の必要性を訴え、その方向への経済政策の転換を提唱してきた東京大学名誉教授の神野直彦氏は、岸田政権の「新しい資本主義」には何ら新しい要素は見いだせないとしたうえで、現在の資本主義が置かれている状態に以下のような認識を示す。

 それは、20世紀末に資本主義vs社会主義の戦いにおいてソビエト型社会主義が崩壊することで資本主義が一時的に勝利を収めたところまでを第1幕とすると、第2幕では社会主義に勝った西側資本主義を支えた戦後の福祉国家モデルも程なく終焉し、そして第3幕で小さな政府を主張する新自由主義的なアングロ・アメリカン(英米型)モデルの資本主義と、EUの社会統合モデルが登場したたが、その両者がリーマンショック後に共倒れとなり、現在世界は第4幕が開かないまま混沌とした状態にあるというものだ。

 世界が新しい資本主義の形を模索する中で、大上段から「新しい資本主義」を掲げる以上、岸田政権はそうした世界的な潮流の中で日本がどのような資本主義を提案しようとしているのかが問われると神野氏は語る。

 さらに神野氏は人間社会は過剰な豊かさと貧しさとによって壊滅的な打撃を受け、今日の世界は歴史の方向性に対する喪失感を感じている危機的な局面にあるとした上で、20世紀初期の大恐慌がケインズを登場させたように、今回の危機も新しい経済思想を要請していると指摘する。

 その上で、人間は誰もが寂しいから社会を形成しているのであって、他者を利用するために社会を形成しているのではないという、社会形成の原点に立ち返った上で、グローバルなものに対抗するにはローカルなものを重視し、新自由主義の主張するトリクルダウン効果に期待して格差を放置するのではなく、生活の豊かさが泉水のように湧き出るファウンテン効果に基づく分かち合いの社会を構築する必要性を強調する。

 第4幕を模索しながら混沌とする世界にあって、SNSメタバースを通じて権威主義ポピュリズムが人々の寂しさに付け入る隙を虎視眈々と狙う今、時代が要請している新しい経済思想とはどんなものか。日本が「新しい資本主義」に取り入れなければならない要素とは何なのか。一貫して新自由主義を批判し、分かち合いの経済を提唱してきた神野氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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