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2023年01月07日公開

今あらためて巨人・宇沢弘文に学ぶ「われわれが本当に失ってはならないもの」

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1135回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年04月07日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1966年大阪府生まれ。91年大阪大学経済学部卒業。同年、日本経済新聞社入社。東京本社経済部、名古屋支社を経て95年退社。同年より現職。著書に『資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界』、『宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』、『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』など。

著書

概要

 2023年最初のマル激は、長年にわたるインタビューをもとに伝説の経済学者宇沢弘文氏の伝記を著したジャーナリストの佐々木実氏をゲストに招き、宇沢氏の思想を改めて振り返り、氏がどのような社会を展望し、われわれは今、そこから何を学ばなければならないのかなどについて議論した。

 リーマンショック新型コロナウイルスによるパンデミックは、これまでわれわれが無批判に推し進めてきたグローバリゼーションの脆弱性を露呈させた。またロシアによるウクライナ侵攻に起因する食料エネルギー危機によって、ボーダーレス化した世界経済はいたるところでサプライチェーンが寸断され、事実上の麻痺状態に陥っている。

 2014年に86年の生涯を閉じた宇沢氏は生前、グローバル化やその背後にある新自由主義的思想は人が生きる上で必要な「社会的共通資本(Social Common Capital)」を破壊すると主張し、これを厳しく批判してきた。社会的共通資本とは、山河などの自然環境や道路や鉄道などの社会インフラ教育医療などの制度資本のことで、市場経済に組み込まれない人間にとって共通の財産を指す。そして今、宇沢氏の懸念がいたるところで顕在化しようとしている。

 東京大学理学部数学科を卒業した宇沢氏はもともと数学者としての天才的な能力が注目されていたが、世の中を良くするための仕事に就きたい一心で数学者の道を捨て、経済学者に転向した。幼くして戦争を体験した宇沢氏には、社会が激動する時に暢気に数学を勉強しているのが耐えられなかったと言う。

 後にノーベル賞を受賞するスタンフォード大学のケネス・アロー教授の招きで1956年に渡米した宇沢氏はベトナム戦争に疑問を持ち、アメリカの経済学がこの戦争の理論的裏付けを提供していることに強い抵抗を覚えるようになる。例えば、同僚の経済学者たちが、限られた予算の中で一人でも多くのベトコンを殺すための「キル・レイシオ(kill ratio)」などという概念を提唱しているのを見て、その背景にある市場原理主義の危険性をあらためて再確認したという。

 1964年、宇沢氏はミルトン・フリードマンなどを擁し、当時のアメリカ新自由主義の総本山とも呼ぶべき地位にあったシカゴ大学に移っているが、それは経済学の誤った流れを変えたいと考えたからではないかと佐々木氏はいう。1968年に突如日本に帰国した理由について宇沢氏は多くを語らない。しかし、帰国後の彼は、それまでの数理経済学者としての活動とは大きく活動内容を転換させ、水俣病などの公害問題成田空港を巡る三里塚闘争などに深々とのめり込むようになる。こうした宇沢氏の変節については、一時はノーベル経済学賞に最も近い日本人と呼ばれ、アメリカの経済学会でも注目されるスターだった数理経済学者が、おかしな活動家の道に入ってしまったのは残念なことだなどと言われ、酷評されることも少なくなかった。しかし、今振り返れば、帰国してからの宇沢氏は経済学者として社会的共通資本の価値を証明することこそが、彼の学者としての使命だと確信して活動していたのではないだろうか。

 宇沢氏は帰国後、日本における新自由主義思想に基づく「改革」の実践の立役者となった竹中平蔵氏とも意外なところで接点を持っていた。しかし、竹中氏の「改革」の背景にある反ケインズの思想を、より根本的な次元で批判していたのが宇沢氏だった。

 宇沢氏がアメリカで輝かしい未来を捨ててまで、経済学者として自分の人生を懸けて証明しようとしたものは何だったのか。今こそあらためて宇沢氏の主張に耳を傾け、今日本が、そして世界が、宇沢氏から学ぶべきものが何だったのかを佐々木氏とともに、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が考えた。

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