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2024年07月06日公開

脱法的な神宮外苑乱開発を止めようとしない小池都政の責任を問う

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1213回)

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完全版視聴期間 2024年10月06日23時59分
(あと77日14時間23分)

ゲスト

1966年大阪府生まれ。91年大阪大学経済学部卒業。同年、日本経済新聞社入社。東京本社経済部、名古屋支社を経て95年退社。同年より現職。著書に『宇沢弘文 新たなる資本主義の道を求めて』、『竹中平蔵 市場と権力 「改革」に憑かれた経済学者の肖像』など。

著書

概要

 ここまで問題だらけの乱開発が止まらないのが、不思議でならない。神宮外苑再開発計画のことだ。

 明治神宮の外苑として第一号の風致地区に指定され、有名ないちょう並木などが都民の憩いの場として親しまれてきた神宮外苑を大幅に再開発し、神宮球場秩父宮ラグビー場を建て替えるほか、景観を守るためにこれまで厳しい高さ制限がかけられてきたその地区に40階建てと38階建ての高層オフィスビルを新たに建設するという、超大型再開発プロジェクトが、今まさに始まろうとしている。この総工費3,400億円といわれる開発工事が本格化すると、神宮外苑一体は2036年までフェンスに覆われたビル建設の工事現場となる。

 明日投開票が行われる都知事選でもこの神宮外苑の再開発は争点の1つにはなっている。しかし、このプロジェクトは読売新聞を始めとする複数のメディア企業が参加していることもあり、メディア報道は非常に限られていて、必ずしも選挙の大きな争点にはなっていない。

 しかし、この計画は多くの樹木を伐採することになる計画自体が自然環境や景観上の重大な問題を孕んでいることに加え、この手の大型プロジェクトが認可される上で求められている環境アセスメント法や都市計画法に則った様々な手続きが、多くのすり替えや誤魔化しによって事実上骨抜きにされている。そして、この計画はまた、今後日本の首都東京の開発がどのように行われ、この街が今後どのように変わっていくかを占う上でも、とても重要な意味を持っている。

 東京都の都市計画審議会が神宮外苑の再開発計画を認可したのは2022年2月だが、実際はそれより十年以上前から、外苑再開発の計画は水面下で動き始めていた。2020年の東京五輪の招致に成功し、国立競技場の建て替え案が浮上した時は、既に外苑の再開発計画の策定が始まっていた。本来は無理筋の計画を押し通すために、東京五輪が徹底的に利用された形だ。老朽化した国立競技場の建て替えが必要という理由で、風致地区や都市計画公園に指定されている地区の高さ制限が解除されたが、多くの日本人は「東京五輪のために国立競技場の建て替えが必要なのであれば、高さ制限の解除は仕方ない」と考えただろう。しかし、高さ制限の解除は最初から外苑の再開発を念頭に置いたものだったことが、その後明らかになっている。

 計画を認可する権限を持つ東京都の小池都知事は外苑再開発の認可について「法令に則って適切に行っている」といった説明を繰り返している。しかし、実際に認可のプロセスを具に検証すると、環境アセスメント法上も都市計画法上も、この計画は脱法的なやり方で推し進められてきたことは明らかだ。

 まず、環境アセスメントに重大な不備があったことが多くの専門家らによって指摘されている。ユネスコの日本国内の諮問機関である「日本イコモス国内委員会」は、評価書に必要な植生図がなかったり、樹木の分類に明らかな誤りがあったりするとして58項目の不備を指摘してきた。しかし小池都知事はイコモスの指摘を一顧だにせず、事業者が提出した評価書をそのまま承認してしまった。

 建築制限の緩和も脱法的だった。都は1970年、条例で外苑地区に15mの高さ制限を設けた。しかし2012年末に新国立競技場のザハ案がJSCのコンクールで最優秀賞に決定すると、そのおよそ半年後、東京都は最大80mまで高さ制限を緩和した。これに便乗して、JSCの本部ビルが高層ビルに建て替わったり、代々木にあった岸記念体育会館が移転するなど、既に多くの高層ビルが建てられている。しかし、それだけではまだ40階建ての高層ビルは建てられない。

 そこで都は2013年に、「公園まちづくり制度」というものを創設した。これは、公園区域に指定され厳しい建物制限がかけられている区域の中で、長期間公園として利用されてこなかった場所の公園指定を外すことで、高層ビル建設を含めた再開発が可能になるという制度だ。都はこの制度を利用し、外苑地区の一部の公園指定を解除して高層ビルを建てることを可能にしている。しかし、その制度を利用するに際し、秩父宮ラグビー場の周辺がラグビーの試合が行われていない平日などはカギがかかっていて普通の人が入れないという理由で、これを利用されていない「未供用区域」に指定し、無理矢理「公園まちづくり制度」の対象とするような脱法的なことを行っている。

 また、外苑の再開発には中央政界からの政治介入があったことも明らかになっている。共産党東京都議団の情報公開請求などにより明らかになった都の幹部と政治家との面談では、早くも2012年の段階で都の幹部と森喜朗元首相の間で外苑再開発が俎上に載せられていた。「五輪が招致できなかった場合はどうなるのか」と問う森元首相に対し、都の幹部は「それでも外苑の再開発はやる」と答えていることが公開された文書などで明らかになっている。

 更にこの再開発には東京都と工事の受注者である三井不動産の間の深刻な癒着や利益相反の存在も明らかになっている。特に東京都の幹部14人がその後、三井不動産に天下っていたことをしんぶん赤旗が報じ、大きな問題になっている。三井不動産は神宮外苑だけでなく、築地市場跡地の再開発や、東京五輪選手村(現・晴海フラッグ)の再開発、日比谷公園の再整備など東京都の大型再開発事業の工事主体となっている。また、三井不動産の岩沙弘道会長が神宮外苑の土地所有者である明治神宮の総代に就いていることから、土地所有者である明治神宮と工事受注業者である三井不動産、そして認可主体の東京都の三つ巴の癒着関係が疑われているのだ。

 この問題を取材してきたジャーナリストの佐々木実氏は、この計画を進めていく上では東京都知事の協力が不可欠だったことを改めて強調する。佐々木氏によると、当初この計画が持ち上がった時の都知事だった石原慎太郎氏は、外苑の再開発には否定的だったが、その後、東京都が五輪の招致に成功し、森喜朗元首相やその意を受けて東京都との交渉に当たった萩生田光一元文科相などが介入してくる中で、計画が強行されていったという。

 外苑再開発計画のどこに問題があり、いかにして五輪の名を借りながらこのような無理筋の計画が実行されていったのか、それを止めようとしない小池都知事の責任とは何か、このままでは東京はどのような街になってしまうのかなどについて、佐々木実氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

 また、番組の冒頭では、日米で先週と今週に相次いで出された3つの重大な司法判断を取り上げた。1つ目は黒川弘務元東京高検検事長の定年延長を巡る政府文書の情報公開訴訟で、「定年延長は黒川氏のために行われたものであることは明らか」と断じた大阪地裁の判決。2つ目は旧優生保護法を違憲とした上で、国の除斥期間の主張は「著しく正義と公平の理念に反する」とまで断じた最高裁判決。3つ目はトランプ元大統領の刑事裁判に関連し、米国史上初めて、大統領には公務における免責特権があることを認め、反対派の最高裁判事が少数意見の中で「この判決で大統領は法の上に君臨する王になった」とまで言わしめた米最高裁判決。この3つは歴史的にも大きな意味を持つもののため、その内容を解説した上で、その意義を同じく佐々木氏、神保、宮台が議論した。

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