雇用問題の本丸は正社員の既得権益にあり

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第410回)

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公開日 2009年02月14日

ゲスト

Joe’s Labo代表

1973年山口県生まれ。97年東京大学法学部卒業。同年富士通入社。04年人材コンサルティング会社Joe’s Labo設立。著書に『内側から見た富士通「成果主義」の崩壊』、『若者は なぜ3年で辞めるのか?』、『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか』など。

著書

概要

 経済危機の波がいよいよ日本にも押し寄せ、大手、中小を問わず企業ではリストラの嵐が吹き荒れている。特に非正規労働者への影響が大きく、業界団体の試算では今年3月末までに失業する製造業の非正規労働者の数は40万人にのぼるとさえ言われる。過去の不況時にも、企業は新規採用の抑制や早期退職制度などで人件費の抑制を図ってきたが、2004年以降派遣法の規制緩和によって非正規労働者が急増したため、企業が不況対策として非正規雇用の削減を真っ先に行うようになった。その結果、派遣社員や期間工などが真っ先に不況の犠牲者になり、今やそれが社会問題化している。
 巷では派遣法の緩和を問題視する向きが強く、少なくとも製造業派遣は禁止すべしとの声が高まっている。しかし、企業人事の専門家で『若者はなぜ3年で辞めるのか』の著者でもある城繁幸氏は、雇用問題の本質は正社員の既得権益化にあり、派遣の規制強化では何ら問題の解決にはならないと主張する。
 実際、日本企業の正社員は非常に手厚く保護されており、非正規労働者との格差はあまりに大きい。しかもほとんどの企業が、正社員の雇用条件には手を付けることができていない。こと正社員に関する限り、日本では高度成長期の残滓とも呼ぶべき年功序列や終身雇用の亡霊が、まだ生きているのだ。そのため、例えば海外では営業成績次第では当たり前に行われている降格や減給はまず不可能で、不祥事でも起こさない限り賃下げもできないし、制度上は可能になっているはずの解雇も、実質的にはほとんど不可能になっている。
 このように正社員の権益だけが過度に保護される一方で、非正規は賃金も半分以下で雇われ、しかも使い捨てにされている。昨今の不況下で非正規労働者が大量に放り出されている背景には、業績不振に陥った企業が人件費を削減しようと思っても、正社員の雇用や賃金にはほとんど手を付けられないという現実があるからだと、城氏は指摘する。正社員と非正規労働者の格差が固定される上、いつ切られてもおかしくない非正規労働者は単純作業しか教えてもらえないため、何年働いてもキャリアを積むことができないという悪循環まで起きている。
 実際にこのような手厚い既得権益の保護は、正社員、とりわけ若い正社員にとっても、決して幸せな結果をもたらしていない。30代後半〜40代以降の中高年正社員の賃金がいたずらに高いため、現在の20代〜30代前半の正社員の賃金は低く抑えられ、彼らの賃金が20年後に現在の40代の正社員の水準まであがっていく可能性はほとんど無い。しかも、若い正社員たちは、合理化による人員の削減や非熟練非正規労働者を大勢抱えた現場にあって、彼ら自身も苛酷な労働を強いられている場合が多い。つまり、正社員の既得権益とは、より正確に言うと、中高年正社員の既得権益のことであり、それを守るために、若い正社員や非正規労働者たちが、苛酷な目に遭っているというのだ。
 城氏は、日本企業が競争力を持つためには、正社員の既得権益にメスを入れ、年功序列・終身雇用といった「昭和型」の雇用体系と決別し、日本独自の成果主義を導入する必要があると主張する。しかし、正社員の既得権益化を問題にすることは、日本では半ばタブーになっている。労働組合が正社員の権利を守ることを優先しているため、組合をバックに持つ民主党や社民党などの野党は、派遣や非正規雇用問題は声高に主張するが、正社員の既得権益についてはほとんど語ろうとしない。また、メディアも、大手メディア自身が最も優遇された正社員と苛酷な条件で酷使される非正規労働者を抱えるところがほとんどで、この問題を取り上げられる立場にはいないと、城氏は語る。そんな理由から、正社員はいまや日本の最もディープな聖域になりつつある。
 正社員と非正規労働者の格差を解消するためには、現在の正社員の既得権益化した待遇を見直すことが不可欠となる。非正規の待遇を正社員並に引き上げることは現実的ではないし、それをやれば日本の企業のほとんどが国際競争力を完全に失うことになる。賃金差是正のためには年功序列を壊し、成果主義を導入した上で、複数のキャリアパスを用意することが必要だと城氏は語る。つまり、キャリアアップしてどんどん上に上がりたい人にはそういうキャリアパスを、賃金はそれほど伸びなくてもいいので、仕事はほどほどにして、趣味や自分の時間を大切にしたい人にはそういうキャリアパスがあっていいはずだと言うのだ。
 しかし、日本において企業が、長年、共同体としての役割を果たしてきたことも事実だ。年功序列・終身雇用のもとで、企業が単なる株主のための利潤追求団体以上の役割を果たしてきた企業のシステムを明日からいきなり崩して成果主義に移行した場合、どのような影響が出るのだろうか。成果主義の導入によって急激に所得が減る人に対しては、暫定的に国が所得の減額分の一部を補填するくらいの思い切った措置が必要になると城氏は説くが、そもそもそれは可能なのだろうか。
 今週は城氏とともに、派遣切りの裏に潜む正社員の既得権益の実態と、未だに「昭和型」から脱却できない日本的雇用の問題点、そしてそれを改善するための方策などを議論した。その上で、日本の文化に適した成果主義とはどのようなものなのかを考えてみた。

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