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2009年05月16日公開

「開かれた司法」と逆行する裁判員制度

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第423回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

上智大学文学部新聞学科教授

1952年埼玉県生まれ。75年上智大学法学部卒業。83年早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。神奈川大学教授などを経て99年より現職。共著に『裁判員制度と知る権利』、編著に『ジャーナリストが危ない』など。

著書

概要

 5月21日、ついに裁判員法が施行される。これまでマル激トーク・オン・ディマンドでは、裁判員制度について議論を重ねてきた。その過程で数々の論点が明らかになったが、中でも最大の問題と思われるものが、制度の非公開性だった。ある制度にどんな欠陥があっても、少なくともその情報が公開される仕組みさえできていれば、いずれその欠陥は広く社会の知るところとなり、早晩対策なり改善が行われることが期待できる。しかし、現行の裁判員制度では、広範かつ厳格な守秘義務が裁判員自身と報道機関に課されているため(報道機関側は司法当局との話し合いの結果、自主規制という形はとっているが)、仮に制度に重大な問題があっても、その情報を社会が共有することができない。そのため問題が改善されないまま、永続してしまう仕組みになっているのだ。
 表現の自由やメディア規制を専門とする上智大学文学部の田島泰彦教授は、裁判員制度は守秘義務と報道規制でがんじがらめになっており、本来の目的とされた「市民参加により開かれた司法をつくる」との理念とは完全に逆行していると指摘する。
 裁判員の守秘義務違反は、6か月以下の懲役・50万円以下の罰金という刑事罰の対象となっている。裁判員は事件関係者の個人情報はもちろんのこと、評議の内容や議事進行の公正さを口外することが公判中も、公判終了後も、半永久的に禁じられている。裁判員は自分自身が裁判員となったことを公にすることも禁止されているのだ。
 また、メディアは事件に対する報道が細かく規制されるほか、公判が終了した後も、裁判員に接触することが禁じられている。裁判員は、裁判員として知り得た情報は、基本的に一切誰にも言えないまま、墓場まで持っていかなければならないのが、裁判員制度の守秘義務の実情なのだ。
 更に、これは裁判員制度そのものの問題ではないが、公判前整理手続きが非公開であることも、同様の問題をはらんでいる。裁判員という一般市民を公判に強制的に参加させる以上、裁判はできる限り短時間で終わらせる必要がある。最高裁は平均して3日と説明しているが、それを実現するために、刑事裁判では公判前整理手続きと呼ばれる論点の絞り込みが裁判所、検察、弁護人の間で非公開で行われる。しかし、ここで議論された内容については、弁護人は公表することができない。公判前整理手続きで強引かつ不公平な運営が行われたとしても、社会はその事実を知るすべを持たないのだ。
 田島氏は、ここまで厳しい守秘義務を課す背景には、司法当局がこれまで通りの閉鎖的な司法を正当化するために、裁判員制度を利用しているとも考えられると指摘する。一般市民である裁判員を守らなければならないとの口実で、さまざまな守秘義務を課したり、メディアとの接触を制限したりするのは、結局司法当局が本当の意味で開かれた司法など実現する気がないことの反映だと言うのだ。
 裁判員制度開始を目前に控え、裁判員制度と国民の知る権利との間にある大きな矛盾を、田島氏と議論した。

 

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