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2019年09月07日公開

世界サイバー戦争への備えはできているか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第961回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1974年滋賀県生まれ。99年米ネバダ大学ジャーナリズム学部卒業。同年講談社入社、ロイター通信社(シンガポール)、ニューズウィーク日本版編集記者などを経て2016年より現職。著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』など。

著書

概要

 サイバー戦争などというものはまだまだSFの世界の話だと思っていた。しかし、今や日常的に国家間のサイバー戦が世界の方々で繰り広げられているという。

 サイバー戦争が現実のものとなったことで、これまでの安全保障の常識が通用しなくなっている。実際、サイバー戦争を制したものが世界を制するといっても過言ではないだろう。兵器を制御するシステムやネットワークが乗っ取られてしまえば、どんな強力な兵器でも簡単に無力化されてしまうからだ。

 今年6月、イランがアメリカの無人偵察機を撃ち落としたことが大きなニュースになったが、実はアメリカはその報復としてイランにサイバー攻撃を仕掛け、ロケット弾やミサイルの発射装置を制御するイラン軍のコンピュータ・システムを無力化したと、ワシントンポストが報じている。

 実はアメリカは2009年から10年にかけても、イランの核開発プログラムにダメージを与える目的でイランに対してサイバー攻撃を仕掛け、ナタンズの核施設に設置されていた遠心分離機を制御不能な状態に陥れることで、イランの核開発プログラムに大きな打撃を与えている。トランプ大統領は対イランの軍事行動を直前で思いとどまったとされているが、実際はアメリカはこういう形でイランに攻撃を実行していたのだ。

 一方、ロシアもクリミア半島を巡り対立するウクライナに対し、たびたびサイバー攻撃を仕掛け、ウクライナで停電を含むインフラの被害が相次いでいる。

 ロシアは2016年のアメリカ大統領選挙でも、民主党全国委員会のネットワークに侵入し、盗み出した19,000件にのぼるメールをウィキリークスで公開した。その多くが、ロシアに対する強硬路線を主張していたクリントン候補にとって不利になる内容だったために、ロシアのサイバー攻撃がトランプ大統領を誕生させた一つの要因になったとまで言われている。

 こうした状況を受けて、アメリカも本気でサイバー軍の強化に乗り出しており、トランプ大統領はサイバー軍に対して、大統領の承認を得ずにサイバー攻撃を実行する権限を与えている。これを受けてアメリカのサイバー軍は、断続的にロシアに対するサイバー攻撃を実行に移しているとされる。

 一方、中国も世界中の国家機密データを盗むために様々な国にサイバー攻撃を仕掛けている。近年アメリカで相次いだ停電の背後にも中国のサイバー攻撃の存在が疑われている。さらに、イスラエル、イラン、北朝鮮などの小さな国も大国に対する抑止力を保有するために、サイバー軍の強化に躍起になっている。今や世界のサイバー戦競争は激しさを増す一方だ。

 著書『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』の著者で世界のサイバー戦情勢に詳しい国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、既に大国の間ではお互いの国のネットワークに侵入し、いつでも通信ネットワークや電力グリッドなどの大規模なインフラを麻痺させるためのマルウェアを、方々に埋め込んでいる状態だと指摘する。正に核兵器の抑止論と同じように、相手に破滅的な打撃を与える能力を持つことが、自国に対する相手の攻撃を思いとどまらせる唯一の方法になっているというのだ。近年、方々で小規模な攻撃が頻発するのも、相手国に自国のサイバー攻撃能力を誇示することで抑止効果を狙ったものと考えられる。

 さて、問題は日本だ。憲法上の制約がある日本は、サイバー戦でも先制攻撃は難しいと考えられているため、どうしても受け身にならざるをえない。しかし、山田氏によると日本は既にこの分野でもアメリカの傘の下に入ることを決め、アメリカと安保条約上そのような取り決めをしているそうだ。

 つまり、どこかの国が日本に対してサイバー攻撃を仕掛けようものなら、たちどころにアメリカのサイバー軍が報復をしますよ、ということで抑止効果を担保するのが、現時点での日本のサイバー戦の戦略だということになる。

 また、日本の自衛隊にはサイバー部隊があるが、この部隊は日本人の生命、財産を守るために創設されたものではなく、自衛隊のシステムを外敵から守るための部隊なのだそうだ。

 インターネットは人間の生活をとても便利にした。また、今後5GIoTが普及すれば、自分の周りにある全てのものがネットワークにつながり、どこにいても何でも自由に操作できる時代ももう目の前に来ている。

 しかし、その一方で、コンピュータ・ネットワークに侵入するハッキング能力は、今や国家レベルで研究が進められ、侵入を完全に防御することは不可能とまで言われている。いつ誰がどのネットワークを麻痺させても不思議ではない時代に突入しているのだ。人類の生殺与奪を握るインターネットが、実はこれまでになく脆弱な状態に置かれているにもかかわらず、われわれの多くはそのことにさしたる危機感も抱いていないのは、やや不思議な感じがしないでもない。

 システムが乗っ取られて夏に電気が止められてしまえば、万単位の人が熱中症で死ぬだろう。寒い地域で冬に電気が止まれば、やはり万単位で人が凍死するだろう。飛行機の管制システムや電車の運行システムが乗っ取られたらどうなるだろう。原発の制御システムはどうだ。いや核兵器の発射システムだって。そう考えていくと、今、世界のサイバー戦が抑止力を前提に辛うじて均衡が保たれているという現状の危うさを感じずにはいられない。

 そんなわけで今回のマル激は、山田氏に世界サイバー戦争の最前線の現状を聞いた上で、日本の立場やネットワークに支えられた今のこの上なく便利な生活に潜むリスクなどを山田氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者宮台真司で議論した。

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