2008年12月20日
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見えたり、金融資本主義の正体

小幡績氏(慶應義塾大学大学院経営管理研究学科准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第403回

 世界中を巻き込みながら今なお進行中の金融危機は、元々米国のサブプライムローン問題に端を発するといわれている。信用力の低い(サブプライム)借り手に対して乱発された住宅ローンが証券化され、無数の金融商品に組み込まれた結果、ローンの焦げ付きが始まると、ちょうどミンチに混じった一片の腐った肉片のごとく、他のすべての肉を腐らせてしまった。こうしてサブプライム・ショックは全世界へと広がっていった。
 しかし、マル激2回目の出演となる慶應義塾大学大学院の小幡績准教授は、サブプライム問題もまた、今世界が資本主義を回していくために不可欠となっているバブルを作りだし、それに大勢が便乗し、そしてそれが弾けるいつものパターンを踏襲しているに過ぎないと言う。
 小幡氏によると、サブプライムローン問題は、「誰も損をしない仕組み」「証券化」など特殊な過程を経てはいるものの、最終的には金融資本が「自己増殖」しバブルを作り出しやがて崩壊するという、これまでのお決まりのバブルの過程をたどっているに過ぎないと指摘する。
 それにしてもサブプライムローンは、関与した人は誰一人として損をしない、一見完璧な仕組みだった。アメリカでは戦後ほぼ一貫して住宅価格が上昇してきた上、移民や低所得者など、これまで住宅を持てなかった人々に住宅を持たせることで、住宅市場の需給関係が供給不足となり、更なる住宅価格の高騰が期待できた。更に、住宅ローン債権を小分けにして証券化することで、元々の住宅ローンの健全さとは無関係な全く別物の新たな金融商品が作られた。こうしてサブプライムローンは、当初の住宅ローンとはおよそ想像がつかないような形にその姿を変え、金融商品として市場で取引を繰り返されることになった。これこそが、「リスクがリスクで無くなる」(小幡氏)マジックだった。
 しかし、そららすべての大前提にあった住宅価格が、06年にピークアウトし、それにつられて、すべてのバブルは崩壊した。誰もが得をするスキームは、一夜にして誰もが損をするスキームに変質してしまった。
小幡氏は、資本主義の必然的な帰結としての金融資本主義のあり方を根底から問い直すべき時がきていると言う。常に経済成長を求める資本主義は、実体経済の成長が頭打ちだと知ると、実体から乖離した金融資本の価値を増幅させることで、見せかけの経済成長を遂げてきた。
 小幡氏はこのように自己増殖する現在の資本主義を、キャンサーキャピタリズム(癌化した資本主義)と酷評するが、資本主義が癌にかかっているとすれば、我々は次にどのような資本主義を経済モデルの拠り所とすればいいのだろうか。
 未だに世界を震撼させ続ける金融危機とサブプライム問題を再考し、金融資本主義の正体と、今後何を目指すべきなのかを、小幡氏とともに考えた。

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小幡 績おばた せき
(慶應義塾大学大学院経営管理研究学科准教授)
1967年千葉県生まれ。92年東京大学経済学部卒業。同年大蔵省入省。99年退職。96年ハーバード大学大学院経済学研究科修士課程修了。01年同博士課程修了。経済学博士。一橋経済研究所専任講師などを経て、03年より現職。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。著書に『ネット株の心理学』、『すべての経済はバブルに通じる』など。
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