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2017年08月26日公開

異常気象を日常としないために

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第855回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

首都大学東京名誉教授・帝京大学客員教授

1944年京都府生まれ。69年東京大学理学部地学科卒業。77年東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。理学博士。お茶の水女子大学助教授、東京都立大学教授、首都大学教授を経て、2008年より現職。15年より帝京大学客員教授を兼務。著書に『都市型集中豪雨はなぜ起こる? 台風でも前線でもない大雨の正体』など。

著書

概要

 35度を超える猛暑で、各地で熱中症による死者が出たかと思えば、翌日にはスコールのようなゲリラ豪雨で川が氾濫し、また多くの死傷者を出す。

 いつのまにかこんなことが繰り返されるようになった。

 日本もさることながら、世界に目をやると、干ばつや豪雨、熱波や寒波、大雪に台風に大洪水など、今やどこかで何らかの「異常気象」が起きていない日は一日もないといっても過言ではないだろう。

 ついこの間まで、さんざ「異常」「異常」と言われていたこんな気象現象が、もはや異常ではなくなっている。少なくともそれが、われわれの日常になりつつある。しかし、つい最近までこんなことは滅多になかった。あってもそれは一時的な「異常」事態だと考えられていた。

 いつからこんな異常気象が、日常になってしまったのか。

 気象学が専門でヒートアイランド現象に起因する都市のゲリラ豪雨に詳しい首都大学東京の三上岳彦名誉教授は、異常な高温や豪雨といった異常な気象現象というのは昔から起きていたが、ここに来てその頻度が増していることは間違いないと指摘する。

 異常が日常化していることはわれわれの皮膚感覚でも十分に感じられるが、それはデータによっても裏付けられている。

 一日の最高気温が35度を超える猛暑日の発生日数は近年、日本全体で急激に増えているし、1日の最低気温が25度を下らない熱帯夜も同じようなペースで増加している。

 例えば、1930年代までは東京で年に10数回しかなかった熱帯夜が、2000年代に入ると年間50~60日近くに上っている。これは実質上7~8月の2か月間、最低気温が25度以下まで下がった日が一日もなったことを意味している。

 一方、大雨の発生数も確実に増えている。全国で1年間に1時間あたり80ミリを超える豪雨が発生した回数は、1975年~95年頃までは5~15回程度だったのに対し、98年以降は毎年のように15回を超え、今も年々更に増え続けている。1時間80ミリ以上というのは、気象庁の表現を借りると「息苦しくなるような圧迫感があり、恐怖を感ずる。車の運転は危険」という、正に尋常ではない異常豪雨のことだ。

 高温の増加傾向は、特にヒートアイランド現象が起きやすい都市部に顕著に見られ、中でも東京の猛暑日数は、1940年頃までは年間2、3日程度だったのに対し、ここ数年は10日を超えるようになっている。

 三上氏はこの「異常気象」の背景には、長期的には地球温暖化などによる大気や海水の温度の上昇があるが、特に都市部の高温や豪雨は、それとは別に、都市の空調、工場、自動車などからの排熱や、地面がコンクリートに覆われたことで、太陽熱が地中に閉じ込められることによって発生する都市部のヒートアイランド現象など、人為的な影響が大きいという。

 実際、梅雨前線など気圧配置の影響で生じる雨や台風も、温暖化により海水温が上昇すれば自ずと強大化することになるが、最近、都市部に見られる局地的な雷雨やゲリラ豪雨と呼ばれる現象は、前線の配置とは関係なくいつ起きてもおかしくないため、事前に予想するのが難しいとされている。

 例えば、東京の練馬や杉並、世田谷などの環状八号線沿いでゲリラ豪雨が多く発生している原因は、ヒートアイランド現象で熱くなった東京の空気に流れ込んでくる相模湾、東京湾、鹿島灘からの湿った海風がちょうどそのあたりでぶつかり合い、そこに局地的な積乱雲が発生して起きているものと考えられているそうだ。だから二子玉川が滝のような豪雨や雷、雹に襲われているのに、少し都心に入った六本木では一粒も雨が降らなかったなんてことが起きることもある。

 しかし、都市部、山間部を問わず、このような異常気象が続けば、毎年、災害による被害の発生が避けられない。長期的な解決方法としては地球温暖化を止めるしかないが、少なくとも人為的要因による異常気象については、災害に強いインフラ強化ももちろん大切だが、その原因部分を手当することも考えるべきだろう。

 三上氏は都市部で高温と豪雨の原因となっているヒートアイランド現象を和らげる最も効果的な方法は、「地面に熱が閉じ込められないようにすること」と「海から入ってくる風の通り道を作ること」の2つだという。前者は、例えば、コンクリートで覆われていない緑地などを増やすことによって実現が可能だし、後者は高層ビルを建てる際に風が抜けるようなデザインにすることを建築条件に加えるなど、まだまだ工夫の余地はあると三上氏は指摘する。

 「異常気象」は気象庁の定義では30年に1度起きる気象現象のことだそうだが、どんなに異常なことでも、日常的にそれを見ていれば、もはや異常と感じなくなってしまうのは確かだ。しかし、それだけでは茹でガエルと変わらない。今一度、昨今の気象がいかに異常な状態にあるかを再確認するとともに、それを日常の一部としてしまう前に、気がついたら茹で上がってしまわないようにするために、今われわれに何ができるかを、三上氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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