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2023年02月04日公開

今度こそ過去の少子化対策の失敗を繰り返さないために

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1139回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2023年05月04日23時59分
(終了しました)

ゲスト

1957年東京都生まれ。81年東京大学文学部卒業。83年同大学大学院社会学研究科修士課程修了。86年同大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。東京学芸大学教育学部教授などを経て2008年より現職。男女共同参画会議民間議員。著書に『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』、『少子社会日本 もうひとつの格差のゆくえ』など。

著書

概要

 「異次元」なのか「次元の異なる」なのかはともかく、岸田政権が本気で少子化対策に乗り出すという。相変わらずの唐突感は否めないが、それ自体は歓迎すべきことだ。日本は世界で最も急激な少子高齢化に直面しながら、ほとんど有効な手立てを打てないまま30年を無駄に過ごしてきてしまった。いよいよ2022年の出生数が80万人を割り込むという緊急事態を迎える中、ここで日本が有効な少子化対策を打てなければ、日本の国力の衰退はいよいよ止まらないものとなってしまう恐れがある。

 ここまで「異次元」の具体的な中身は出てきていないが、国会答弁などを聞く限り岸田政権としては(1)経済的支援の強化、(2)子育てサービスの拡充、(3)働き方改革の3本柱を徹底的に行うつもりのようだ。しかし、これでは異次元はおろか、ことごとく失敗してきた従来の政策の延長に過ぎないのではないか。

 1989年に日本の合計特殊出生率が1966年の丙午の年を下回る1.57まで落ち込んだ、いわゆる「1.57ショック」以来、日本は次から次へとさまざまな少子化対策を打ち出してきた。1994年のエンゼルプラン、1999年の新エンゼルプランなどだ。しかし、過去30年あまりの間、常に何らかの少子化対策が実行されてきたにもかかわらず、ほとんど成果はあがらなかった。現在の日本の合計特殊出生率の1.3は先進国中最低レベルで、日本の少子化対策は諸外国から「失敗のお手本」として扱われているのが実情だ。

 30年以上もの間、出生率が低いまま推移し出産可能な女性の人口が減り続けているため、仮に出生率が横ばいでも人口は減る。結果的に日本は2005年以降、有史以来初めての人口減少局面に入ってしまった。

 「パラサイトシングル」や「婚活」などの言葉の発案者として知られ、少子化や格差問題で数々の提言を行ってきた中央大学文学部教授の山田昌弘氏は、過去の日本の少子化対策がことごとく失敗してきた主な原因として、未婚化を手当てしなかったことと、欧米中心主義的発想に立ち、日本社会特有の状況や意識を見落としていたことの2つをあげる。

 山田氏によると、結婚したカップルはそれなりに子どもを作っている。問題はここにきて結婚できない人が大量に出ていることにある。それが未婚化問題だ。そしてアンケートなどを見ると、未婚化は経済格差の問題と直結している。結婚はしたいができないと答えた人の多くが経済的な理由をあげているのだ。これではどれだけ育児支援や子育てサービス、働き方改革などを手厚く行っても、その前段にある格差や貧困の問題にしっかり取り組まない限り、少子化問題は解決しない。

 欧米中心主義については、例えば欧米では結婚の際に恋愛感情を重視する傾向があるが、日本ではどちらかというと経済的リスクを伴った結婚を回避する傾向がある。「恋愛と結婚は別」という考え方が日本では未だに根強いと山田氏は言う。

 また、欧米では子は成人したら親から独立するのが当たり前と考えられているが、日本は大学の学費を親が負担するのは当たり前で、それどころか大学卒業後も親と同居している人が多い。日本ではとりわけ世間体が重視されるので、子どもに経済的に惨めな思いをさせるくらいなら子どもを持たない方がいいと考える夫婦が欧米に比べて多いのだという。これまでの日本の少子化対策はこのような日本特有の意識や慣行を考慮していなかったと山田氏は指摘する。

 では「異次元の少子化対策」としては何をすればいいのだろうか。山田氏は社会の価値観を変えるのは容易なことではないので、日本には日本にあった対策を行うしかないとした上で、まずは子育て家庭を経済的に支援すると同時に、格差問題に手を付けなければ、異次元はおろか、効果的な少子化対策にはならないだろうという。その一例として山田氏は、現状では雇用保険に加入している正社員にしか与えられていない育児休業の対象を非正規社員自営業者にまで拡げる制度改革を行えば、それだけでも十分に「異次元の少子化対策」になり得ると語る。

 なぜ日本の少子化対策は30年あまりもことごとく失敗し続けてきたのか。真に異次元の対策とするためには何をすればいいのかなどについて、山田昌弘氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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