今度こそ過去の少子化対策の失敗を繰り返さないために
中央大学文学部教授
1957年東京都生まれ。81年東京大学文学部卒業。86年東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。86年、東京学芸大学助手、同講師を経て、91年同助教授。93年カリフォルニア州立大学バークレー校社会学部客員研究員、94年東京学芸大学助教授に復職。04年より現職。著書は『希望格差社会』、『少子社会日本』、共著に『「婚活」の時代』。
日本は戦後50年あまりにわたり、常に明るい未来像を抱くことが可能な国だった。常に、親の世代よりも幸せになれる、今よりも将来の方が生活が豊かになるとの楽観的な前提にたって将来を見通すことができたし、実際にそれを実現させてきた。しかし、1990年代後半を境に、将来への展望が開けない時代に突入したと山田氏は指摘する、将来に希望を持つことができず、さまざまなリスクから逃れることができない。そして、努力をしても報われることが期待できないと感じ、現実にそれが報われない人たちが急増しているというのだ。
実際に、さまざまなデータは、この事実を裏付けている。既に日本は将来の希望を持てる一握りの勝者と、希望が持てない多くの敗者に二極分化した希望格差社会に突入したと、山田氏は説く。
この現実は、社会がより豊かになれば必ず今よりもっと幸せになれると私たちの多くが信じ込んできた、根源的な価値観を根底から揺るがしている。努力をしても報われないのなら、努力をする人は減る。希望が持てず、リスクばかり背負わされる重圧に耐えきれず、自殺する人も増える。かと思うと、蛸壺的な小さな世界に閉じこもって生きようとする人が増える。
しかし、これが公共政策や個人の努力では解決できない根深い問題であることが、この問題をより深刻なものにしていると山田氏は指摘する。
『パラサイトシングル』などの造語の発案でも知られる山田氏とともに、希望格差社会を生き抜くために、政策面で何が可能か、また個人や家族レベルでは何ができるかなどを考えた。