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2011年06月04日公開

東京電力をどうするか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第529回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1960年大阪府生まれ。神戸商科大学(現兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社記者を経て、2004年からフリー。2010年より甲南大学マネジメント創造学部外部講師を兼務。著書に「日本郵政ー解き放たれた巨人」「巨大独占NTTの宿罪」など。

著書

司会

概要

 東日本大震災発生からまもなく三ヶ月が過ぎようとしているが、福島第一原子力発電所の事故は大量の放射性物質をまき散らしながら、いまだ収束の兆しが見えない。人々の不安や怒り、そしてやりきれない思いは、事業者であり事故を起こした当事者でもある巨大企業、東京電力に向けられる。経済ジャーナリストの町田徹氏は競争のない地域独占、発送電の垂直統合、すべてのコストを電気料金で吸収することが許される総括原価方式など、電力会社が与えられた民間企業としてはあり得ないような特権の数々が、どんでもない「怪物」を生み出してしまったと話す。
 優良企業の典型とされてきた東京電力も、震災前と比べ株価は5分の1以下に落ち込み、5月20日に発表された2011年3月期の決算では1.2兆円という日本の事業会社として史上最大の赤字を計上した。しかも、これは今回の原発事故の賠償金を一切含まない金額だ。来期以降も巨額赤字が見込まれ、企業としての存続すら危ぶまれている。
 政府は5月半ばに東電の被害者への賠償を支援するための賠償スキーム(枠組み)を発表した。これは政府、電力会社、金融機関が出資し賠償機構を設置して、同機構が東電の経営を監視しながら、必要に応じて融資していくというもので、東電の存続を前提としている。
 しかし、このスキームは多くの問題をはらむと町田氏は指摘する。まず、そもそも法的な根拠に疑問がある。閣議決定すらされておらず法的拘束力がないうえに、内閣法制局から財産権の侵害で憲法違反のおそれがあるとの指摘も受けているという。
 しかし、それ以上に問題なのは、このスキームが誰のためのものなのかが、不明なことだ。この仕組みで一体誰が得をするのか。それは東電、関連メーカー、天下りを続けてきた経産省など「東電ファミリー」と東電に融資している金融機関であり、損をするのが料金の値上げの影響を受ける一般の電気利用者となると町田氏は言う。
 とは言え、東電が支払うべき賠償金額とは一体どのくらいになるのだろうか。シンクタンクの日本経済研究センターの試算によると、福島県の原発20キロ圏内だけで賠償金は5兆円から20兆円とされる。しかし、これは20キロ圏内だけで、海洋汚染の影響やその他の事業者からの損害賠償請求の可能性は含まれていない。また、放射能が飛散した海外から訴訟を受ける可能性もあるが、これも全く想定されていない。他にも被害を挙げればきりがなく、最終的に賠償がどれほどの金額になるのかは、現時点では誰にも見当すらつかない。
 確かに、被害者は速やかに補償されなければならない。何よりも、今この瞬間も避難生活を強いられる被害者の補償が、最優先されて然るべきだろう。しかし、そのためにどうしても東電を存続させなければならない理由があるのだろうか。財務省や経産省などは電力債の日本経済に与える影響や安定した電力供給の名のもとに、東電の存続を図ろうと躍起だが、町田氏はそれらはすべて欺瞞だと斬り捨てる。既得権益側にいる人間は誰しも、電力という最も巨大でおいしい利権を、失いたくないのだ。
 東電は今年3月時点で現金約2兆円、核燃料処理費用として1兆3千億円、株主資本として1兆6千億円などの資産を保有し、発電所や送電網などを含めた総資産は約14兆円にものぼるとみられる。町田氏は、まずはこれらをすべての資産を賠償に充ててから、それでも足りない時に初めて政府が支援をすべきであり、その資産を活用した基金の設立こそが賠償金支払いの有効な方法と主張する。例えば、総資産のうち10兆円で基金を設立し、そこから賠償金を支払っていくというもので、2010年にメキシコ湾原油流出事故でBP社が200億ドルの賠償用の基金を設立した例を参考にすべきだという。
 しかし、再生可能エネルギーの増大にも寄与するとの理由から待望論がある発電と送電の分離について町田氏は、「今はそのタイミングではない」と、慎重な姿勢を見せる。今、発送電の分離にまで手を付けると、東電以外の電力会社や電力利権の恩恵を受ける既得権益からの激しい抵抗が予想され、結果的にそれが被災者の補償の遅れにつながる恐れがあるからだ。しかし、その一方で、この事故を奇禍としなければ、発送電の分離などといった大事業は、そう容易く実現できないことも事実だ。
 これまで電力の安定供給の名のもとにあまりにも多くの特権を与えてきた東京電力を、われわれは今、どうすべきか。東電のみならず、電力事業のあり方を抜本的に変えるためには、今、われわれは何をしなければならないのか。りそな銀行や日本航空などの取材を通じて企業の破綻処理にも詳しい町田氏と、東電問題を考えた。

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