東電に任せてる場合ですか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第647回)

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公開日 2013年09月07日

ゲスト

元国会事故調委員・科学ジャーナリスト

1943年栃木県生まれ。68年東京工業大学工学部卒業。同年バブコック日立入社。77年退社、同年より科学ジャーナリスト。2011年東京電力福島原子力発電所事故調査委員会(国会事故調)委員。13年4月より新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会委員。著書に『原発はなぜ危険か 元設計技師 の証言』、共著・訳書に『複雑系の選択』、『デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳』など。

著書

概要

 今日のテーマは福島第一原発の汚染水問題と4号機問題、そして日本のみならず地球全体の未来に大きな影響を及ぼしかねないその2つの問題を、これだけ失態が続く東京電力にこのまま委ねていて本当にいいのだろうかを考えたい。

 今回、露呈した汚染水の漏出は早くから懸念されていた。事故を起こした福島第一原発は、当時の野田首相が宣言した「冷温停止状態」にあるとされているが、現在も大量の冷却水を循環させてメルトスルーした核燃料と貯蔵燃料を冷却し続けることで辛うじて小康状態を保っているに過ぎない。東京電力はホースの総距離が4キロにも及ぶ建て付けの循環冷却のシステムを何とか作り上げたが、循環の過程で原子炉建屋の地下のコンクリートの隙間などから大量の地下水が流れ込んでいるため、毎日300~400トンの汚染水が新たに発生する状態が続いている。循環システムとは名ばかりで、核燃料を冷やした汚染水が、地下水との間を水が自由に行き来している状態なのだ。

 東電の計画では2020年の初頭には核燃料の取り出しを行うことになっているが、これはまったく根拠のない希望的なものと言っていい。元国会事故調委員の田中三彦氏も、最低30年は冷やし続けなければならないだろうとの見方を示す。30年間、毎日400トンの汚染水を出し続けるとどうなるか。原発敷地内に林立する1000トンの汚染水タンクは3日に1つのペースで増えていくのだ。

 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2日の外国特派員協会の会見で、「汚染水は基準値以下にピュリファイ(浄化)して、海に放出せざるを得ないのではないか」との見解を示している。しかし、田中氏はこの発言を問題視する。海洋に投棄する計画はその主体である東電でさえまだ言及していない。地元の漁業関係者などが、容認するはずがないからだ。規制委は本来、東電がそのような計画を持ち出してきた時、その妥当性や安全性を検証すべき立場にあるはずだ。それを、東電がそのような計画を発表もしないうちに、規制する側の委員長が、最初からそれを容認する発言をしてしまった。「これではまるで東電の意向の代弁者ではないか」と田中氏は言う。

 政府は「凍土遮水壁方式」なる方法で地下水の流れ込みを遮断する計画を明らかにしているが、地下水の流れ込みが無くなれば、今度は逆に原発からの汚染水が地下水層に流出する恐れが出てくる。今は地下水が流れ込んできているおかげで、冷却に使われた汚染水が地下水層に入り込まず、それがそのまま海に流れていく事態が回避できているとの指摘もある。場当たり的に何をやっても、結局はいたちごっこに過ぎないのではないかとの懸念はぬぐえない。

 汚染水問題に加えて、福島第一原発には更に重大な問題が残されている。地震と水素爆発で建屋がズタズタに破壊された4号機の使用済み核燃料プールの問題だ。震災とその後の爆発で大きなダメージを受けた4号機の建屋5階の燃料貯蔵プールには、現在1533本の燃料体が残されたままだ。今、ここで再び大きな地震によって建屋が倒壊したり、プールが損傷を受けて、冷却水が失われたりすれば、最悪の場合使用済み燃料に再臨界が起きて、福島はおろか東日本の広範囲に甚大な放射能被害をもたらす可能性が排除できない。

 このまま損傷を受けた建屋の5階に1500本を超える燃料体を放置するわけにはいないのは事実だが、実はそれをクレーンによって運び出す作業が11月から東電の手で始まることになっている。これを東電に任せていていいのかと問われた原子力規制委の田中委員長は、新たにクレーンを設置してあるので、従来の核燃料の取り出しと大きな違いはないとの認識を示している。

 しかし、これに対しても田中氏は、そこら中に破損した建屋や機械の残骸やガレキが残る中で、1533体もの核燃料を安全に取り出すことが「従来通りの作業のはずがない」と指摘する。そして、もしクレーンが核燃料を落下させ、核燃料が飛び出したりするようなことになれば、全く収拾がつかない最悪の事態もあり得ると言う。
 どうやらわれわれは、日本のみならず、地球自体の命運を東京電力という、これまでたびたび失態を繰り返し、情報の隠蔽などでも繰り返し問題になっている事実上の破綻企業に、委ねてしまっているようなのだが、本当にこれでいいのだろうか。

 汚染水問題の実状や4号機の問題に潜むリスクを改めて再評価した上で、今後の福島第一原発への対応や原子力行政の在り方などについて、ゲストの田中三彦氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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