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2013年08月10日公開

TPPについて今、真剣に考えておかなければならないこと

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第643回)

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

大東文化大学経済学部教授

1966年広島県生まれ。90年一橋大学商学部卒業。同年経済企画庁に入庁、調査局、外務省在大韓民国日本国大使館、内閣府国民生活局などを経て、2010年退官。筑波大学准教授などを経て2012年より現職。経済学博士。著書に『TPPの正しい議論にかかせない米韓FTAの真実』、『隣りの国の真実韓国・北朝鮮篇』。

著書

概要

 政府が推し進める施策に反対し、これを阻止しようと真剣に考えているならば、反対の根拠をよほどしっかりしたものにしておく必要がある。いい加減な反対論はいとも簡単に論破され、反対運動は腰砕けに終わってしまうだろう。たとえ民主主義といえども、人材、資金、情報の三大リソースを独占的に抱える政府に太刀打ちするのは、それほど大変なことなのだ。

政府が推し進めるTPPへの反対運動も、下手をするとその轍を踏む恐れがある。なぜならが、昨今、ネット上などで「TPPの問題点」として指摘されていることのかなりの部分が、実はまったく根拠のないデマだったり、明らかな誤解や理解不足に基づいているからだ、と指摘するのが、今週のゲストで韓国経済が専門の高安雄一大東文化大学教授だ。

 高安氏は巷でTPPの問題点として指摘されているISDS条項やラチェット条項などのいわゆる「毒素条項」について、流布されている批判のかなりの部分が、事実に基づかないまったく間違った誤情報だと言う。こうした毒素条項は、アメリカが過去に結んできたNAFTA(北米自由貿易協定)や米韓FTA(自由貿易協定)などの協定に含まれていることから、TPPにも同様の条文が入ることが予想されている。しかし、日本ではそうした条文の解釈が、米韓FTA交渉の過程で韓国の野党が政治的な理由から、ためにする議論をする目的で引っ張り出した、何の根拠もない解釈をそのまま流用されていると、高安氏は言うのだ。

 NAFTAや米韓FTAを根拠にTPPを批判をするのであれば、「まず参照する貿易交渉の条文をきちんと読むことが大事だ」と高安氏は言う。高安氏によると、米韓FTAをめぐる交渉の過程で、韓国では野党と一部のマスコミが反米的な立場から声高に反対論を展開したが、その際に使われた不正確な条文の解釈に対し、韓国政府は逐一その間違いを正し、反論を政府のホームページに掲載してきたという。その600ページにも及ぶ反論をしっかりと読めば、これまで米韓FTAやTPPに関して言われてきた問題点の多くが、「気を引く反対論だけが引用されていて、それに対する回答や反論部分が抜け落ちている」ものであることは容易に理解できるはずだと、高安氏は言う。

 TPPに代表される自由貿易協定には、毒素条項などの個別の条文をめぐる議論を超えた、より深い次元で、真剣に議論し意見集約を図らなければならない重大な論点がいくつかある。それは、例えば、仮に自由貿易で経済全体が成長したとしても、その恩恵を享受できる人が一部のセクターに限られるために、国内で経済格差が広がる可能性がある問題だったり、数としては自由貿易によって不幸になる人の方が多くなる可能性があることも含まれるだろう。また、経済的にはプラスが多いとされる自由貿易が、社会全体にもたらす様々な影響をわれわれは受容する用意が本当にできているのかどうかという議論も必要だ。関税をゼロにし、国家間のヒト、モノ、カネの流れを自由にした時、社会はどのように変質するのか。そこで失う社会的共通資本の価値は、GDPをベースとした損得勘定の中には含まれていない。

 それは例えば、NAFTAによってメキシコの国としてのGDPの伸びは加速したが、その一方でメキシコ国内で小規模農家の離農・廃業が相次ぎ、失業率も上昇したことが参考になるかもしれない。NAFTAの実施によってメキシコの農村社会は大きく変質し、行き場を失った離農者が大量にアメリカに流入した結果、アメリカの不法移民問題や移民排斥問題が深刻化する結果を招いた。アメリカ政府が移民問題に対応するためのコストは、アメリカがNAFTAから受けた恩恵の数値には当然含まれていない。自由貿易の評価は単にGDP成長率のような無機質な指標だけでなく、より長期的な時間軸の上で、多面的に行う必要があるのではないか。

 しかし、そのためにも、まずは現在多くの批判が集まっているTPPの毒素条項などに関する誤謬を排し、TPPの中身を正しく理解する必要がある。TPP の毒素条項に対する誤解を正した上で、その向こうにある本来議論しなければならないTPPをめぐる本当の争点とは何なのかを、ゲストの高安氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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