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2014年03月15日公開

誰も知らない裁判所の悲しい実態

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第674回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

元裁判官・明治大学法科大学院教授
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1954年愛知県生まれ。76年司法試験合格。77年東京大学法学部卒業。79年裁判官任官。東京地裁判事補、最高裁事務総局、大阪高裁判事、那覇地裁判事、最高裁調査官などを経て2012年退官。同年より現職。著書に『絶望の裁判所』、『民事訴訟の本質と諸相 - 市民のための裁判をめざして』、『民事保全法』など。

著書

概要

 マル激では放送開始以来何度となく、警察、検察の問題、とりわけその捜査、取り調べの手法が公正な裁判の妨げになっている問題を取り上げてきた。この問題はあまりにも繰り返し表面化するため、もはやわれわれにとってはそれがライフワークの一つになっている感すらある。
 しかし、この10余年、途中に何度も重量級の不祥事に見舞われながら、警察も検察もその体質はほとんど変わっていないようにみえる。そして司法の堕落、腐敗の一番根っこに鎮座するご本尊が裁判所だ。警察や検察がどんな無茶なことをしようとも、裁判所がそれを裁判で証拠採用しなければ何の意味もなくなる。例えば、海外では当たり前になっていることだが、裁判所が、一定期間以上の拘留後の自白の任意性を認めない判断を下せば、その瞬間に人質司法は終焉する。どんなに大きな世論の逆風に見舞われても、依然として警察や検察が人質司法や無茶な捜査を続けられる最大の理由は、裁判所がそれを裁判で認めてくれるからに他ならない。その意味では司法問題の最大の責任者にして戦犯は裁判所なのだ。
 その裁判所の内情はあまりにもひどい状況になっているようだ。元裁判官で最高裁事務総局や最高裁調査官の経歴を持ち、2012年に退官して現在は明治大学法科大学院教授を務める瀬木比呂志氏は、裁判官の世界は事実上陸の孤島のような外界から閉ざされた状態にあり、その閉鎖性の中で、あり得ないような基準がまかり通っていると言う。それは最高裁事務総局による一極統制の下、事なかれ主義、長いものに巻かれろ主義、上の意向しか気にしないヒラメ裁判官の増殖などあらゆる弊害を生み、正義の貫徹や市民への奉仕といった裁判所本来の機能とは程遠いものになっていると言うのだ。
 瀬木氏は、現在の司法界は、最高裁を頂点とする権力ピラミッドによる内部統制が極めて効果的に運用されていると指摘する。本来、個々の裁判所、裁判官個々人には階級の上下はないはずだが、司法官僚とも称される最高裁事務総局が人事と昇級の権限を握っていることから、ほとんどの裁判官、裁判所は否応なく上を見て行動するしかない状態だという。さらに事務総局は30名ほどの裁判官を調査官として抱えていて、最高裁の公判以外にも各地の裁判、判決を細かく分析し、内部の会合などを通じてことあるごとに最高裁の意向を下命している。まさに事務総局による司法支配体制だ。そしてこの司法官僚による内部統制には、歴代の最高裁長官が関わり、現在の仕組みが揺るぎないものに形作られてきたという。
 しかも、裁判官が自身の良心に従って、例えば国家賠償訴訟や行政訴訟で市民側の肩を持つような判決を出そうものなら、露骨な報復人事が行われるという。そのような実態を知ってか知らずにかわからないが、マスコミも報道しないし、三権分立の名の下で国会でもそれが問題になることはない。瀬木氏は全員とまでは言わないが、大半の裁判官はそのような基準の下で裁判官を務めているという。現行の制度のままでは、端から公正な裁判を期待することが難しい状況にあるということなのだ。
 瀬木氏は「法曹一元化によって人材の流動化を図ることが先決だ」と言う。法曹一元化とは弁護士などから多様な人材を裁判官として任用する仕組みのことだが、硬直化した司法行政体制を打破するには、まずは人事を通じて現在の硬直性、閉鎖性に風穴を開けるしかないと瀬木氏は言う。
 そんな裁判所だから、実は裁判員制度導入の背後にもあり得ないような裁判所の腐った事情があったと瀬木氏は言う。この3月末に退任が決まった竹﨑博允最高裁長官が生みの親とも言われ、画期的な司法改革の実例と囃される裁判員制度は、市民参加により裁判に市民の目線を反映させようという表向きの理由とは別に、それをきっかけに裁判所内における刑事系裁判官の復権を目論む思惑があったという。それまで裁判所内部では民事系の裁判官が権勢を誇っていて、刑事系は肩身の狭い思いをしていたのだという。実際に裁判員制度の導入が決まった前後から、刑事系裁判官が最高裁判事をはじめ、重要部局に就任するケースが増え、目論見通り復権が実現したと瀬木氏はいう。裁判員制度の中に制度上不可解な部分が少なからずあったのも、この制度の本来の意図が別のところにあったからだったことのようだ。
 裁判所が変わらなければ日本の司法は変わらない。いや、一国における正義の最終的な体現者たる裁判所が、このような堕落した体質のままでは、日本全体がダメになってしまう。日本問題の最深部にある裁判所の問題をわれわれはどう考え、何をすべきなのか。歴代最高裁長官の功罪や裁判官の質の低下、そしてそれらを報じないメディアの問題なども交えて、ゲストの瀬木比呂志氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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