あなたが変われないのは実は変わりたくないから?!

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第680回)

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公開日 2014年04月26日

ゲスト

哲学者

1956年京都府生まれ。87年京都大学大学院文学研究科西洋哲学史専攻博士課程満期退学。京都教育大学非常勤講師、甲南大学非常勤講師、奈良女子大学非常勤講師などを経て、現在、日本アドラー心理学会認定カウンセラー。同学会顧問を兼務。著書に『嫌われる勇気』、『アドラー心理学入門』、『アドラー 人生を生き抜く心理学』など。

著書

概要

 アドラー心理学をご存じだろうか。オーストリアの心理学者アルフレッド・アドラーが20世紀初頭に創始した心理学の一体系で、海外では同時代に生きたフロイト、ユングと並ぶ心理学界の三大巨頭と呼ばれることが多いアドラーだが、なぜかこれまで日本ではあまり広く知られてこなかった。ところが今、このアドラー心理学を取り扱った『嫌われる勇気』という本が、発行部数にして20万部を超える大人気だと言う。なぜ今、日本でアドラーが受けるのか。

 総務省のアンケートによると、今日本ではLINE, Twitter, Facebookなど何らかのソーシャルメデイアを利用している人は57.1%にも達しているという。ソーシャルメディアはネットを通じて物理的に離れている人たちと常時繋がることを可能にしてくれる便利なツールだが、逆に四六時中繋がり続ける中で、うっかり発した一言や、一度でも「いいね!」をクリックしなかった程度のことで人間関係に亀裂が生じるなど、常に対人関係で緊張感を強いられるような状況を生んでいることも事実だろう。要するに、今われわれの多くが、常に嫌われないように気をつけていなければならない状態に置かれることから生じている「SNS疲れ」の中で、「別に嫌われてもいいじゃないか」と言い切るこの本が多くの人を惹きつけているようなのだ。

 この本の著者で日本におけるアドラー心理学研究の第一人者でもある哲学者の岸見一郎氏は、アドラー心理学の第一の特徴として、フロイトなどが説く人の今がトラウマなど過去の経験によって規定されるとするとする「原因論」ではなく、個々人がその経験に与える意味や目的によって自らを決定するとする「目的論」をあげる。「人が変わりたいと思っても変われないのは、変わらないことが目的になっているからだ」とアドラー心理学は説く。「変わりたい、変わりたい」と言いながら変われないのは実は自分は本当は変わりたくないからだと分析し、それは変わらないことに自分でも自覚しない何らかの目的やメリットを感じているからなのだと結論づける。

 そのため目的論に基づくアドラー心理学ではフロイトが主張する「トラウマ」を明確に否定する。われわれは現在の状態や行動の理由を当たり前のように過去の経験に求めるが、アドラー心理学では「過去は変えられないのだから」(岸見氏)、どんなに過去の経験を分析してみても、今、自分が抱える問題の本質的な解決にはつながらない。それよりも過去の経験に自分がどんな意味を与えているかを直視し、そこを手当てすることの方が、問題の解決にはより有効だという考え方だ。

 「人間の悩みはすべて対人関係」と言い切るアドラー心理学では、キーワードとして「勇気」や「自由」という言葉がよく出てくる。例えば、変わりたいけど変われないと思っている人に対して、実は自分は変わることによって生じる現状の変更が恐いから、本心では絶対に変わらないと決心していることを認識させた上で、「現状の変更に向き合う勇気」を、嫌われることを恐れて恋人や友人との関係を変えられないで悩んでいる人に対しては、「嫌われてもいいじゃないかと思える勇気」を持つようなカウンセリングが行われると岸見氏は言う。そして、嫌われる勇気を持てて初めて人は自由になれるとアドラー心理学は説く。

 とかく生きづらいと言われる昨今、もしかするとわれわれは知らず知らずのうちに自らの手で自分の自由を縛っていたのかもしれない。5月病など新年度疲れが出始めそうな今、勇気を持てば人は変われるし、勇気を持てば人はもっと自由になれると説くアドラー心理学の入門編を、岸見一郎氏とともにジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司がお届けする。

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