2008年2月9日
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大学がおかしい

ゲスト:石渡嶺司氏(大学ジャーナリスト)
マル激トーク・オン・ディマンド 第358回

大学全入時代の到来が取り沙汰される一方で、大学生の半数以上が1ヶ月に本を一冊以下しか読んでいないことが世論調査で明らかになるなど、どうも大学がおかしい。この番組では昨年来「教育」を重点的に取り上げてきたが、そこでも毎回のように「大学問題」が指摘されている。そこで、受験シーズン真っ只中の今、現行教育制度の矛盾の頂点として「今大学で何が起きているのか」を、全国270に及ぶ大学を取材してきた大学ジャーナリストの石渡嶺司氏をゲストに迎えて考えた。
 石渡氏は、どの大学にも共通する問題として、「とにかく学生たちに勉強する意欲がない」ことをあげる。世間的には一流と評される大学であっても、確実に勉強への意欲は落ちていると言う。例えば、授業には出ても授業時間中教室内でずっと携帯メールに没頭している学生が大勢いるかと思えば、学級崩壊よろしく、授業中の私語のひどさも小学生並の状態にあるそうだ。また、何か課題を出しても、軽くインターネットを叩いて答えが見つからなければ、「グーグルで探したけれど出ていませんでした」と当たり前のように回答してくる生徒がいる等々、一昔前に大学を卒業した世代には想像もつかないような事態が大学内で起きているようなのだ。
 学ぶ意欲がない学生が増えた理由は多岐にわたるが、石渡氏は大きな理由として、誰もが大学に入学しやすくなったことで、もともと大学に行くべきではなかった人や、そもそも何のために大学に行くのかを全く考えていないような人までが大学に行くようになったことをあげる。要するに、希望さえすれば誰でも入れる大学が見つかる「大学全入時代」が到来しているということだ。
 大学入学志願者は、1992年にピークを迎え、それ以降は、少子化の影響で毎年減少している。しかし、文部科学省が、90年代になってから大学の設置規準を緩め、大学の新設や学部の増設を柔軟に認めるようになったために、大学の数は増加の一途を辿り、既存の大学も新学部の新設などで学生数を軒並み増やしている。大学という市場では、明らかに市場原理に反したことが起きているのだ。
 その結果、難関校と言われる有名大学は軒並み生徒を増やしマンモス化の道をひた走る一方で、全国の私立短大や地方大学で定員割れが続出し、06年度には実に40%超の大学が定員割れに陥っているという。「大学全入時代」の裏で、経営的には大学間の勝ち組と負け組の両極化が進んでいるのだ。更に、経営的にはうまく回っているかもしれない有名校や難関校でも、上記の「大学問題」とは決して無縁ではないという。
 そうした状況の中、大学側も、あの手この手を講じて、生徒確保に奔走している。従来からの一般試験やセンター試験、推薦入学に数々のバリエーションを加え、何か一科目でも得意科目があれば合格しやすい制度を作り上げた上で、更にAO入試という新たな枠を設け、学力を問わず誰もが大学に入れる状況を作っている。特にAO入試は1990年に慶応大学が最初に導入した当初は、学力テストでは測れない才能を発掘する画期的なシステムとして評価も高かったが、次々と他大学が導入するうちに、評価基準の曖昧さが災いし、文科省が制限を加えている推薦枠の抜け穴として多用されるようになっているのが実情と石渡氏は語る。
 大学には、国公立、私立を合わせると文科省の全予算の約3割が投入されている。要するに税金である。しかし、大学の実情については、情報公開も十分進んでいないため、大学の中で一体何が起きているかについては、一般社会はもとより、受験者や親でさえ正確にうかがい知ることが難しい。
 最高学府として日本の教育制度の矛盾が凝縮されているとも言える大学について、まずはその第一弾として、入試制度と学生の質を中心に議論した。

石渡 嶺司いしわたり れいじ
(大学ジャーナリスト)
1975年北海道生まれ。99年東洋大学社会学部社会学科卒業。派遣社員、編集プロダクションなどを経て、03年に独立。全国270校の大学を取材し、大学や学生の就職活動について、評論を行っている。著書に『15歳からの大学選び』、『最高学府はバカだらけ』など。 358_ishiwatari
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