2016年4月16日
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パナマ文書がわれわれに突きつけている歴史的課題とは

上村雄彦氏(横浜市立大学国際総合科学部教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第784回(2016年4月16日)

 いつから税は貧しい者から取るものになってしまったのか。

 パナマの法律事務所から流出したとされる文書によって、世界の富裕層や政治指導者らの多くが、タックスヘイブン(租税回避地)を使って税逃れをしている実態が白日の下に晒された。

 今回流出した顧客リストは氷山の一角に過ぎないと考えられているが、それでもロシアのプーチン大統領の友人や中国の習近平国家主席ら指導部の親族らの他、イギリスのキャメロン首相の父親やアイスランドのグンロイグソン首相、シリアのアサド大統領やエジプトのムバラク元大統領の息子など、世界の有力者や独裁者、およびその周辺の人物らが軒並み名を連ねていた。世界規模で各国の富裕層がタックスヘイブンで税逃れを図っている試算の総額は20兆ドル(約2200兆円)とも30兆ドル(約3300兆円)ともいわれている。

 経済成長の鈍化で税収が落ち込む中、世界各国は軒並み中間層や貧困層に対する課税を強化している。その中で富裕層だけがまんまと税を回避している現状が放置されれば、各国政府の正統性を揺るがしかねない。

 また、富裕層の税逃れは、既に大きく拡がった貧富の差をさらに拡大する。貧しい者が税負担を強いられより貧しくなる一方で、税を逃れた富裕層は更にその富を再投資することで、更に多くの富を蓄積していくことが可能になる。

 横浜市立大学教授で、グローバル・タックス(国際連帯税)など国際課税の問題に詳しいゲストの上村雄彦氏は、パナマ文書の流出で富裕層やグローバル企業が、世界の富を独占している実態が露わになったことで、今後、その富を再配分させていく仕組みの必要性が議論されることに期待を寄せる。

 「21世紀の資本」で有名な経済学者トマ・ピケティも資産に対する国際的な累進課税を提唱している。さらに近年ではトービン税をより発展させ、通貨や金融商品の取引に課税する金融取引税など、新しい国際連帯税としてのグローバル・タックス導入へ向けた議論が始まっている。

 それにしても、なぜタックスヘイブンなるものが未だに存在し、億万長者やグローバル企業による税逃れなどが可能になっているのか。実態が露わになったタックスヘイブンを放置すれば、世界やわれわれの社会はどうなっていくのか。パナマ文書が明らかにした社会的不正義と、タックスヘイブンによる租税回避の実態などを検証しながら、グローバルタックスの可能性などについてゲストの上村雄彦氏と、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

 
上村雄彦うえむら たけひこ
横浜市立大学国際総合科学部教授

1965年大阪府生まれ。88年三重大学人文学部卒業。92年大阪大学法学研究科修士課程修了。93年カールトン大学大学院国際関係研究科修士課程修了。千葉大学准教授、横浜市立大学准教授などを経て、12年より現職。博士(学術)。著書に『グローバル・タックスの可能性 持続可能な福祉社会のガヴァナンスをめざして』、編著に『世界の富を再分配する30の方法 グローバル・タックスが世界を変える』など。 784_uemura
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