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2019年5月18日
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官僚を力で押さえ込んできたことの大きなつけが回ってきた

10分42秒
牧原出氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第945回(2019年5月18日)

 平成の時代は政治改革の時代だったと言い換えても過言ではないほど、過去30年にわたり日本は政治や統治機構をいじくり回してきた。恐らく先進国においてここ30年で日本ほど政治の仕組みを大きく変えようとした国は他にないのではないだろうか。

 奇しくもリクルート事件に端を発する政治改革が本格的に動き出すきっかけとなったのが、与野党が逆転した平成元年(1989年)8月の参院選だった。そしてそれ以来、日本はひたすら政治改革と行政改革を推し進めてきた。

 小選挙区制と政党助成金の導入に始まり、省庁再編、内閣人事局による官僚幹部人事の一元化等々、様々な制度改革が実行されたが、概ねそれは各政治家や派閥、族議員などに分散されていた権力を政党、そしてひいては首相官邸に集中させることで、より早い意思決定を可能にするとともに、誰がどこで牛耳っているのかがわからないような曖昧な意思決定過程を排し、責任の所在を明確にすることを意図したものだったと言ってもいいだろう。また、80年代以降のたび重なる「政治とカネ」や「腐敗官僚」をめぐるスキャンダルへの反省と同時に、長らく世界地図を固定化させてきた米ソの冷戦体制が崩壊し、混沌としてきた世界情勢の中で、より早い意思決定の必要性が叫ばれたことが、一連の改革の背景にあったことは言うまでもない。

 そしてそのために日本が選んだ制度は、首相官邸への権限の集中だった。

 政治と行政の関係に詳しい東京大学先端科学技術研究センター教授の牧原出氏は、権力の集中により従来の政権では実現が難しかった様々な政策が実行に移されていると、一連の改革に一定の評価を与えつつも、第二次安倍政権発足以降、政権が自らに集中した強い権限を使って各省を力で押さえ込んだことによって、官僚機構に反発やモラール(やる気)の低下などが広がり、結果的に安倍政権が何かをやろうとしても、官僚機構が動いてくれなくなっていると指摘する。内閣人事局による人事の一元管理や内閣府への権限集中で、首相官邸の優位性が顕著になっていることは事実だが、いくら各省の幹部人事を掌握しても、それだけでは現場は動いてくれない。また、内閣府に出向してチーム安倍のメンバーに選ばれた官僚や首相秘書官らが、出身母体の役所に対して強圧的な態度で命令を下すことへの役所側の反発も強まっている。

 本来はあり得ない公文書の廃棄やデータの改竄が行われたり、メディアや野党へのリークが相次いでいるのも、現在の権力構造に対する役所の現場の反発を物語っていると見ていいだろう。

 確かに役人の言いなりになっていては、政治は大きな仕事を成し遂げることはできない。ある程度トップダウンで命令を下していく面が必要だろう。しかし、官邸が決定した政策を具体的に日々実行(インプリメンテーション)していくのは現場にいる官僚に他ならない。その官僚が寝てしまえば、どんなに優れた政策や意思決定をしても、それは換骨奪胎されてしまう。

 ここまで安倍政権は「政権維持」を最大の目標に、官邸主導で多くの政策を実現してきた。その政策の中身については異論もあろうが、平成の改革によって獲得した首相官邸の権限をフルに活用して、政治主導の政策実現を図ってきたことだけは間違いない。しかし、それが官僚に対しても、またメディアに対しても、かなり力業で押さえ込んできた面があり、そうした政権運営に対する反発がここに来て非常に高まっていることが、今後の政権運営を危うくしていると牧原氏は言う。

 政権を維持していくためには、何か「やっている感」を出さなくてはならない。しかし、もはや現場はしらけていて動かない。そこで安倍政権が現場の声を無視して、頭ごなしに欠陥だらけの憲法改正案などを出し、飴と鞭でメディアをも丸め込むことで、それを力業で通してしまうようなことになれば、将来に大きな禍根を残す怖れもある。

 ダブル選挙も取り沙汰される国政選挙を約2ヶ月後に控える中、日本の政治が崩壊の淵にあると懸念する牧原氏と、日本の政治の現状と安倍政権の今後について、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

 
牧原 出(まきはら いづる)
東京大学先端科学技術研究センター教授
1967年愛知県生まれ。90年東京大学法学部卒業。ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス客員研究員、東北大学大学院法学研究科教授等を経て、2013年より現職。博士(学術)。専門は行政学、日本政治史。著書に『崩れる政治を立て直す』、『内閣政治と「大蔵省支配」』など。

 

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