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盛況だったパラリンピックが残したもの、置き去りにしたもの

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第1067回)

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公開日 2021年09月18日

ゲスト

東京大学先端科学技術研究センター当事者研究分野准教授

1977年山口県生まれ。生後すぐ脳性麻痺により手足が不自由となる。2001年東京大学医学部卒業。09年東京大学大学院医学系研究科生体物理医学専攻博士課程単位取得退学。14年同大学大学院工学系研究科先端学際工学専攻博士課程修了。博士(学術)。01年東京大学医学部付属病院小児科研修医、千葉西総合病院小児科、埼玉医科大学病院小児心臓科病棟助手などを経て、09年東京大学先端科学技術研究センター特任講師。15年より現職。著書に『リハビリの夜』、『小児科の先生が車椅子だったらー私とあなたの「障害」のはなし』など。

著書

概要

 緊急事態宣言下で無観客で行われた東京パラリンピック大会が、9月5日に閉幕した。

 感染拡大が続き、開催自体が危ぶまれ、学校連携観戦プログラムの是非なども議論された一方で、外出自粛要請が続く中、多様性や共生社会を掲げて行われたこの大会を、これまでパラスポーツに馴染みがなかった人たちも含む多くの人たちがテレビで観戦した。

 最後までアメリカと金メダルを争った車いすバスケットや迫力ある車いすラグビー、さまざまな障がいのあるひとたちが自分なりのスタイルで挑む競泳、レーサーとよばれる車いすが滑走する陸上、先を読みながら思い通りのところにぴたっとボールを投げるボッチャなど、競技としても障がいを持つアスリートの挑戦としても、強い関心を呼んだ。障がいについてあまり考えることもなかった人たちに多くの気づきを与えたのは確かだろう。

 それまで親の陰に隠れてしまっていたような子供たちが、車いすを見て駆け寄ってくるようになったと、自身も脳性まひで車いすユーザーである小児科医の熊谷晋一郎・東京大学先端科学技術研究センター准教授は言う。確かに、今まで閉ざされていたものが開かれたことは良いことだ。しかし、パラアスリートたちの活躍を見て、「障がいがあるのに頑張っていてすごいね」という素朴な感想だけで終わってしまってよいのだろうか。

 熊谷氏は、そのような反応の背後に能力主義が潜んでいるのではないかという危惧を表す。「努力すればできる」という価値観が広まれば、「できない」ことに対する見方が自ずと厳しくなり、それによって追いつめられる障がい者もいるだろう、というのだ。できることを評価する意味で使われる「エイブリズム(ableism)」は日本語で「障がい者差別」と訳されることもあると熊谷氏は言う。

 障がいのある人たちをめぐる考えには大きく分けて2つの流れがあると熊谷氏は指摘する。一つは、「適切なサポートで障がいのある人も能力を発揮できる社会を実現すべき」という方向性で、これは今回のパラリンピック大会を通じてかなり浸透してきている。ただ、もう一つ重要な考え方として、「能力の有無を超えて誰もが尊厳ある人生を歩む権利がある」という主張があることを忘れてはならない。

 この二つはどういう関係にあるのか。当事者研究として、パラアスリートやオリンピアン薬物依存症の当事者などから聞き取りを続けている熊谷氏は、マイケル・サンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」やアマルティア・センの潜在能力アプローチなどを例にひきながら、障がいのある人にとってのスポーツの意味を語る。

 パラリンピックで前進したものと、それが置き去りにした課題などについて、今回初めてパラリンピックを見て共感できるようになったと語る熊谷晋一郎氏と、社会学者の宮台真司とジャーナリストの迫田朋子が議論した。

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