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2019年06月22日公開

医師と製薬会社の利益相反を監視せよ

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第950回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
(終了しました)

ゲスト

1972年鳥取県生まれ。97年九州大学医学部卒業。鳥取大学病院助手、独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査専門員などを経て2011年よりナビタスクリニック、常磐病院などで内科医を務める。NPO法人「医療ガバナンス研究所」研究員を兼務。著書に『生涯論文! 忙しい臨床医でもできる英語論文アクセプトまでの道のり』、『知ってはいけない薬のカラクリ』など。

著書

概要

 医師と製薬会社の利益相反は様々な問題を引き起こす。医師が特定の製薬会社と癒着すれば、患者にとって最適な薬が処方されない危険性が生じる。本来は不要な薬が大量に処方されれば、財政的にも大きな負担になるし、薬の種類によっては患者が薬物依存になってしまう怖れもある。

 実際、オピオイドの過剰摂取による年間の死者数が5万人を超え、全国の依存症者数も400万人以上と言われるアメリカでは、オピオイド依存症が蔓延した背景に製薬会社と医師の癒着関係があったとして、目下、製薬会社や医師に対する厳しい責任追及が行われている。

 現在の危機的な状況の発端となったとされるオピオイド鎮痛薬『オキシコンチン』の製造元の製薬会社パデュー・ファーマは、オクラホマ州政府との間で2億7,000万ドル(約300億円)の損害賠償の支払いで合意したほか、少なくとも45の州政府から同様の損害賠償訴訟を起こされている。

 オピオイドを販売するテバ、インシス、ジョンソン・アンド・ジョンソンなどの製薬会社も、軒並み多額の損害賠償訴訟を起こされ、既にインシスは破産に追い込まれている。同時に、不当に処方箋を乱発してオピオイドを供給した医師に対する刑事告発も進んでいる。オピオイドの蔓延が始まってから20年あまりが過ぎた今、やや遅きに失した感は否めないが、アメリカもようやく製薬会社と医師の癒着に本気でメスを入れ始めている。

 一方、2013年に未曾有の利益相反事件「ディオバン事件」で、製薬会社と医療機関の利益相反が白日の下に晒された日本はどうだろうか。

 内科医で著書『知ってはいけない薬のカラクリ』で製薬会社と医師の利益相反問題に切り込んだ谷本哲也氏は、日本では未だに製薬会社が医師への利益供与が広く行われ、「医師がどの薬を処方するかは、製薬会社のMR(営業担当)が持ってくる弁当に左右されているのが実情」と指摘する。

 製薬会社の高級弁当持参の医師詣では常態化していると見え、多くの弁当屋のサイトが製薬会社向けに特化したページを設け、2,000円以上の高級弁当をラインナップしている。

 実際、全国31万の医師の3分の1に当たる9万8,000人が、製薬会社から何らかの謝金を受けとっていることが明らかになっている。これは弁当などの現物給付ではなく、原稿料や講演料などの名目で実際に現金を受け取った医師の割合だ。そのうち95%は年間100万円未満だが、約4%は100万円~500万円、0.5%が500万円~1,000万円を受け取っていたという。中には一年で2,900万円も受けとっていた医師もいたそうだ。また、1,000万円以上受け取っていた医師はほとんどが大学教授で、多くの薬が処方される高血圧や糖尿病、高価な薬を使うガンやリウマチの専門医が多くを占めるという。

 医師が処方する「医療用医薬品」の市場規模は10兆円を超え、われわれが日々CMなどで目にする市販薬の市場よりも10倍以上も大きい。しかし、市販薬と異なり、処方薬は一般に向けた広告が禁じられている。少しでも多く自社の薬を使って欲しい製薬会社は、医師に直接営業攻勢をかけようとすることになる。しかも、どの薬が処方されるかは医師の一存で決まる。国民皆保険の日本では、患者本人の負担が3割に抑えられているため、患者の側もあれこれ注文は付けずに、医師が処方する薬をありがたく頂戴する人がほとんどだ。メディアも大スポンサーの製薬会社は批判しにくいこともあり、医師と製薬会社の癒着関係や利益相反には元来、チェック機能が働きにくい構造がある。

 そこで谷本氏が所属するNPO「医療ガバナンス研究所」は、NPOメディア「ワセダクロニクル」と共同で、製薬会社から医師個人に流れる資金を調査し、それをデータベース化して公開している。これはワセダクロニクルのウェブサイト「マネーデータベース・製薬会社と医師」で医師の名前を入力すれば、その医師がどの製薬会社からいくら受け取っているかが、たちどころにわかるというものだ。

 アメリカは製薬会社と医師の利益相反に甘かったばかりに、製薬会社から接待攻勢をかけられた医師が大量のオピオイド処方箋を乱発し、結果的にアメリカ全土を薬物依存症の惨禍に陥れた。アメリカは今もその後遺症に喘ぎ続けている。日本も弁当程度で済んでいればいいが、構造的にチェック機能が働き難くなっている以上、いつこれが暴走し社会に脅威をもたらさないとも限らない。いや、既にいろいろなところで、そのような事態が起きているのに、われわれが気がつかないだけなのかもしれない。

 製薬会社と医師の利益相反の実態とその結果起きるさまざまな弊害、それをチェックする新たな試みなどについて、谷本氏とジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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