政府の情報活動を強化するなら監視機能の整備が不可欠だ
行政の不祥事を明らかにするための情報公開制度の抜け穴が、不祥事を隠すために使われている疑いが表面化している。
日本郵便の郵便物の廃棄・放棄をめぐる朝日新聞の報道から、監督官庁の総務省が日本郵便の取材対応に介入し、情報公開請求への対応を意図的に遅らせようとしていた実態が浮かび上がった。今回のディスクロージャー&ディスカバリーでは、この問題を手がかりに、政府の活動と情報を誰が監視するのかを考えた。
4月にこの番組でも取り上げた福岡県議会の海外視察問題をめぐっては、公費による豪華な視察が繰り返される背景として、過去の住民訴訟などで示された基準が十分に定着していないことや、議員に対して事務局が異議を唱えにくい力関係などを番組では厳しく指摘した。市民の情報公開請求だけでなく、メディア自身が継続して監視し、その成果を地域社会に伝えることが欠かせない。
今回の番組の本題となった日本郵便問題では、配達されるべき郵便物が廃棄・放棄されていたにもかかわらず、日本郵便が自社の調査で犯罪と認定した案件以外の多くを公表していなかったことが明らかになっている。総務省は内部の検査でその実態を把握し、運用改善を促していたが、外部に対しては非公表の状態を続けていた。そして、その後、朝日新聞の報道を受けて対応が検討される過程で、総務省側が自らの関与を認めないよう日本郵便に指示していたことが、省内の業務用チャットから明らかになったのだ。
さらに、行政指導に関する文書を朝日新聞が情報公開請求すると、チャットには「特別延長してほとぼり冷めさせる」との書き込みがあった。そこで利用されたのが、情報公開法に設けられた「特例延長」という制度だった。
国の情報公開制度では、開示するかどうかの決定は原則30日以内に行い、正当な理由があれば、さらに30日間延長できる。つまり、60日以内には開示か非開示かの決定をしなければならない。しかし、対象文書が著しく大量で、通常の事務の遂行に著しい支障が生じるおそれがある場合には、「特例延長」というものが認められる。延長後の期限は通知しなければならないが、法律上は延長期間の上限は定められていない。問題は、この例外的な仕組みが、社会の関心が薄れるまで情報を出さない格好のツールとして使われかねないことだ。
情報には、公開される時期によって価値が大きく変わるという性質がある。政策や事業が進んだ後で経緯が分かっても、判断に参加したり、問題を止めたりすることは難しい。不祥事も、時間が経てば関心が薄れ、責任追及につながりにくくなる。情報公開の可否だけでなく、行政が公開のタイミングを操作できること自体が、制度の実効性を損なう。
総務省内部のチャットには、記録に残さないためにやりとりをチャットから口頭連絡へ切り替えることや、過去のチャットを削除するとの書き込みもあった。今回は朝日新聞が独自にチャット内容を入手して報道したために、情報隠しの実態が明らかになったが、もしそれが入手できていなければ、実際に「ほとぼりが冷めるまで」特例延長されていた可能性が十分にあったのだ。
情報公開は、行政が都合のよい時期に情報を出すことを認めている制度ではない。市民が行政の判断を検証し、責任を問うための権利を保障する仕組みだ。今回、その法律を所管する総務省自身が制度を隠蔽に利用していた疑いが明らかになったことの意味は大きい。日本郵便をめぐる一連の問題は、情報を残すこと、適切な時期に公開すること、そしてそれを監視する仕組みを一体として見直す必要性を突きつけていることなどについて、情報公開クリアリングハウスの三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。