日本郵便問題が映す行政監視の抜け穴
今年2月の衆院選で自身を支援しなかった地元首長の自治体の道路予算を「大幅にカットした」などと発言し、問題となっていた簗和生農林水産相が10月14日に辞任した。
簗氏は、自身の発言を認めて撤回、謝罪する一方で、道路予算の削減を求める働きかけは否定していた。その後、簗氏の公選法違反の疑いなども表面化する中での辞任となったため、当初の予算削減発言の真偽は有耶無耶になっているが、政治家が行政の予算配分に関与しているかどうかは厳しく検証されなければならない問題だ。
ところが、予算配分に対する政治家の関与を明らかにするうえで大きな壁となるのが、政治家と官僚の接触に関する記録が十分に残されていないことだ。
今回のディスクロージャーでは、本来は政治家が予算に関連して官僚に接触した場合、法律では政官接触を記録に残すための措置を講じるよう定められているにもかかわらず、実際は多くの抜け穴が用意されているため、政治家の接触がほとんど記録に残らない仕組みになっている問題を取り上げた。
国の予算は国会で大枠は審議されるが、個別の地域や事業ごとの配分がどのように決められているかは事実上ブラックボックスの中だ。しかし、そこに政治家の関与や不適切な癒着の存在が疑われる場合は、事後にその決定過程をチェックできるようになっていることが重要になる。後でチェックされる可能性があれば、政治家も官僚も下手なことはできなくなるからだ。
しかし現実には、政治家の接触はほとんど記録されていないため、事後的にもチェックするのが困難なのが実情だ。
今回の問題でも、予算配分が確定する前の2月中旬に、簗氏が国土交通省へ道路予算について問い合わせていたことが明らかになっているが、情報公開法を駆使しても簗氏と国交省の間でどんなやりとりがあったのかを明らかにすることは難しい。そもそも接触の事実が記録されていなければ、協議の内容を公開請求することすらできない。
この問題は今回の件に限ったことではない。国家公務員制度改革基本法は、政治家と公務員の接触について、記録の作成や情報公開に関する措置を講じることを求めている。しかし、実際の運用では、記録の対象は政府の方針と大きく異なる要請があった場合などに限られ、通常の働きかけ程度では記録を残す義務はないと解釈されており、事後に意思決定過程を辿ることは困難になっている。
一方、自治体の中には、長野県や三重県のように、議員や関係者からの接触があれば、それがたとえ口頭での接触であっても記録に残す取り組みを進めてきたところがある。三重県の場合、その記録を残すようになってから、政治家を含む外部からの働きかけは激減したことが報告されている。逆に言えば、記録に残らないことがわかっているから、働きかけが後を絶たないのだ。
政治家が行政に意見や要望を伝えること自体が、直ちに問題になるわけではない。それ自体は政治の機能の一部とも考えられるからだ。重要なのは、そうした接触ややりとりの性格が記録されることで、予算配分などの行政判断にどのような影響を及ぼしたのかを後から検証できる仕組みがあるかどうかだ。
簗氏の辞任で一連の政治劇に幕引きが図られたとしても、予算配分の決定過程が見えない問題は未解決のままだ。行政の意思決定を透明にするためには、まず政治家と官僚の接触が記録されていなければならない。
政官接触の記録作成と公開のあり方、道路予算の配分をめぐる意思決定過程の透明性、そして情報公開制度を実効性のある行政監視につなげるための課題などについて、情報公開クリアリングハウス理事長の三木由希子とジャーナリストの神保哲生が議論した。