北朝鮮問題に落としどころはあるのか
拓殖大学海外事情研究所国際協力学研究科特任教授
1949年兵庫県生まれ。77年慶應義塾大学大学院博士課程修了。同年、防衛研修所(現・防衛研究所)入所。2011年退官。韓国・延世大学校国際学部専任教授、東北アジア国際戦略研究所客員研究員などを経て、15年より現職。専門は朝鮮半島情勢、国際関係論。著書に『東アジア動乱 地政学が明かす日本の役割』、共著に『金正恩の北朝鮮 独裁の深層』など。
10月9日に北朝鮮が行った核実験について、追い詰められて自暴自棄になった金正日の最後のカードとの報道がされている。しかし、長年朝鮮半島を見てきた防衛研究所の武貞秀士氏は、今回の実験には、制裁を受けるコストを払ってでも核兵器を持つことで、朝鮮半島の統一を有利に進めるという金正日の長期的な国家戦略に基づく意図があるとの見方を示す。
また、核実験を機に日本の核武装論についての発言が閣僚から相次いでいることについて武貞氏は、「少し飛躍しすぎ」と評したうえで、「日本が通常戦力で攻撃をすれば、北朝鮮は無事ではないと言える能力をつけることは可能だし、その議論の方が合理的」と言う。
さらに、今後日本が行うべきこととして、常に定点観測できる数の情報衛星など導入によって、情報収集能力を高めることも必要だと説く。「7月のテポドンミサイル発射や今回の核実験に関する情報を日本政府は受け取っていたとの報道があるが、むしろ日本が調査した結果を中国・韓国・アメリカに状況説明をできるだけの情報収集能力が必要だ。ソフトウェアの分析や地上の施設などの情報収集が大事であって、それを飛び越えての核武装には、防衛戦略としての各論が全くない」と述べた。
北朝鮮がこのタイミングで核実験を行った意図はどこにあるのか。日米韓の対北朝鮮政策は失敗だったのか、日本の防衛戦略はどうあるべきか。武貞氏とともに考えた。