2017年06月10日公開

ロシアの米大統領選ハッキングの実態が見えてきた

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概要

 先の米大統領選挙では電子投票のシステムがハッキングによって外部から操作された可能性が取りざたされ、ウィスコンシン州では再集計する騒ぎにまで発展した。同州では紙の投票用紙を使っていた投票所ではクリントンが圧倒的多くの票を集めていたのに対し、電子投票を採用した投票所ではトランプ候補の得票が不自然に多かったからだ。

 しかし、最終的には裁判所が電子投票システムのフォレンジック(鑑識)を認めなかったため、実際にハッキングがあったかどうかは究明されないままに終わっていた。

 トランプ政権が発足する直前の2017年1月、オバマ政権は、民主党全国委員会のサーバーやクリントン陣営の選挙参謀のメールサーバーをハッキングし、メールを抜き取った上で、それをウイキリークスに流したのが、ロシア政府系のハッカーだったと結論する報告書を作成し公表した。しかし、その段階ではそれ以上のことを突き止めることはできていなかった。

 その「大統領選ハッキング問題」に今週、大きな進展があった。

 まず6月6日に、ネットメディアの「インターセプト」に衝撃的な記事が掲載された。同誌は、NSA(米国家安全保障局)の内部資料を入手した結果、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)が、まず大統領選挙の電子投票システムの管理を受注しているVR Systems社の社員をマルウエアに感染させ、その上で、州の選挙管理委員会の電子投票システムの複数の担当者のパソコンを遠隔操作可能な状態に置いていたことが明らかになったと報じていた。

 当初、この記事はロシアによるハッキングの実態があまりにも具体的に描写されていたため、半信半疑で受け止める人が多かった。実際にこの記事が出た後も、主要な報道メディアはすぐに後追いをしようとはしなかった。

 ところが同日、NSAの仕事を請け負っていた外部のコンピューター企業の25歳の契約社員リアリティ・ウイナーが、極秘文書を漏洩させた疑いでFBIに逮捕されていたことが明らかになった。FBIはその文書が先日にインターセプトに掲載された記事と同一の物かどうかについてはコメントしていないが、書類がいずれもNSAによる極秘書類で日付も同じだったため、ウイナーが極秘書類を持ち出して「インターセプト」に渡したことがスパイ行為に当たるとして逮捕されたものと見て間違いなさそうだ。

 NSAの報告書では、実際にロシアが電子投票システムを遠隔操作することに成功したかどうや、選挙結果にどのような影響を及ぼしたかは明記されていない。そのため、昨年の大統領選挙の結果がロシアのハッカーによって歪められたと結論づけることは難しい。しかし、ロシアのハッカーが米大統領選挙の電子投票システムの管理会社や州の担当者に対するスピアー・フィッシングに成功していたという指摘は、衝撃的であると同時に、トランプ政権の正当性に傷をつける効果は十分にありそうだ。

 また、この書類をメディアに持ち込んだウイナーの扱いも、今後注目されることになるだろう。ウイナーは自身のフェイスブックページで、アメリカがロシア連邦の一州になったことを嘆く投稿を行っていることなどから、今回は秘密漏洩は、この事実をアメリカ国民に知らせる必要があると考えての公的通報行為だった可能性が高いと見られている。実際、ウイナーを応援する動きが、フェイスブック上などで広がっている。

 大統領選のハッキング問題の最新情報とそれがトランプ政権に与える影響、今回の内部告発の意味などについて、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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