日本はいつまでスパイ天国を放置するのか
日本大学危機管理学部教授
1954年栃木県生まれ。76年上智大学外国語学部ロシア語学科卒業。86年コロンビア大学大学院政治学科博士課程修了。Ph.D.(国際関係論)。82年より国連事務局広報局に勤務。2014年退官。上智大学総合グローバル学部教授などを経て25年より現職。上智大学名誉教授。著書に『国際連合 その役割と機能』、編著に『国連で働く』など。
9月下旬に始まった国連総会では、紛争当事国の首脳の間で非難の応酬が相次いでいる。
第2次大戦後に国際協調を求めて創設された国連は、世界の平和と安全のために活動してきたはずだった。しかし、ウクライナ、ガザ、イランと続く紛争に対応できず、今でも多くの命が奪われている。超大国の自国第一主義と国際法違反が横行し、国連、特に安全保障理事会は国際紛争の平和的解決ができずに機能不全を起こしている。
グテーレス国連事務総長も9月22日に始まった一般討論演説の冒頭の発言で、大国のダブルスタンダードを許さず国連憲章を守ることを主張した上で、安全保障理事会を、今日の世界を反映し、現代の課題に見合う正当性と実効性を備えた組織とするために改革する必要があると指摘した。
ただし、改革は容易ではない。国連広報官として30年あまり国連で勤務した上智大学名誉教授の植木安弘氏によれば、安保理改革の議論は冷戦終結後の1993年から行われており、常任理事国、非常任理事国の拡大など様々な案が出ているが、何一つ進んでいないのが実情だ。
しかし、だからといって国連がまったく機能していないというわけではない。安保理における常任理事国の拒否権行使の問題ばかりがクローズアップされるが、安保理自体は毎日のように開催され、様々なテーマが議論されていると植木氏は言う。昨年1年間に安保理で採決された決議は40件余りにのぼるという。
こうした中で、国連で演説した高市首相の敵国条項を国連憲章から削除するよう求めた発言が、波紋を引き起こしている。第2次大戦が終結する前の1945年6月に調印された国連憲章には、当時の連合国と敵対している国に対して安保理決議がなくても対抗できる例外規定として「敵国条項」が設けられていたが、それは1995年の国連総会の決議で死文化が確認されている。植木氏は、高市氏が演説であえて敵国条項を持ち出したのは、おそらく国内的アピールが目的だったと指摘するが、結果的にそれが日中間に不必要な摩擦を引き起こす事態となっていることを懸念する。
安保理改革では日本はかねてから常任理事国入りを主張しているが、国際政治の場では実績を積み重ねて長期的な視点で考えるほかなく、外交での地固めをしつつ、安保理改革の具体的な提案をしていく必要があるのではないかと植木氏は語る。
肥大化した国連自体の問題も無視できない。これに対しては昨年、国連創設80年を機にグテーレス事務総長の主導のもとでUN80イニシアチブが動き出しており、予算削減、職員削減、低コスト国への事務所移転などを挙げている。どこまで官僚組織を効率化できるかも問われている。それでもなお、PKO活動、人道支援、持続可能な開発など、さまざまな現場で国連は他ではできない地道な活動を続けている。地球温暖化対策やAI規制などについても、国際協調は欠かせない事態となっている。
国連という国際社会で活躍してほしい若い人たちへの期待も含め、国連改革の道筋について、ナミビア、イラク、といったフィールドでの活動経験もある植木安弘氏と、社会学者の宮台真司、ジャーナリストの迫田朋子が議論した。ニューヨーク在住の植木氏はオンラインで参加した。