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2008年09月06日公開

政治の機能不全を脱するために

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第388回)

完全版視聴について

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完全版視聴期間 2020年01月01日00時00分
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ゲスト

1962年兵庫県生まれ。86年東京大学法学部卒業。92年東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。埼玉大学大学院政策科学研究科助教授、政策研究大学院大学助教授などを経て、00年より現職。01〜02年ハーバード大学客員研究員。著書に『日本の統治構造』、『政局から政策へ』など。専門は現代日本政治論。

著書

司会

概要

9月1日、福田首相が突然辞任した。これで日本の総理大臣が2代続けて、任期の途中で政権を放り出したことになる。国会の衆参両院の勢力がねじれ状態にあるなど、国会運営が難しいなどの事情もあろうが、それにしても日本の政治がもはや完全に機能不全に陥っていることは、誰の目にも明らかだ。
 辞任会見の中で福田首相は、ねじれ国会によって次期国会でも重要法案成立のメドが立たないことを、辞任の理由に挙げている。しかし、政策研究大学院大学教授の飯尾潤氏は、そもそも衆院と参院の多数派が違うことで議会運営に困難をきたしてしまうこと自体が、日本の議院内閣制が機能していないことを示していると語る。
 議院内閣制を採用している諸外国では、二院の意見が異なることは決して珍しくない。独立して投票される二院制を採用していれば、むしろそれは当然のことで、自民党の長期支配のもと、与党が両院を支配していることを前提に、政権が容易に運営できたこれまでの日本の政治のあり方自体が、世界的に見ればむしろ異常だったというわけだ。
 日本ではよく、国民から直接選ばれる大統領の方が、議院内閣制のもとでの総理大臣よりも強い権限を持っていると思われがちだが、実際はそれは間違っていると飯尾氏は言う。議院内閣制では、国会の支配勢力と行政の長たる内閣総理大臣が同じ政党となるため、三権分立の2つが事実上政権与党によって支配されることになり、首相には大統領よりも遙かに大きな権力が集中することになる。
 しかし、本来は強い権限を持っているはずの首相が、なぜか日本では強力なリーダーシップを発揮することが難しくなっている。戦前の制度の名残で、省庁や官僚の代理人と位置づけられた国務大臣によって内閣が作られる言わば官僚内閣制とでも呼ばれるべき独特の制度があるため、実質的な政策立案は官僚が行い、閣議も次官会議で決定された議題を承認するだけで、国会が選んだ内閣には実質的な決定権はほとんど何もないのが同然の状態が続いてきた。
 一方、議会の側も、自民党政権が長く続いたために、自民党の総裁選が事実上の首相選挙となり、首相は民意とは無関係に、自民党の党内事情で好き勝手に変えられてきた。国会で首相を選ぶ首班指名選挙が、単なるセレモニーに過ぎないことは、日本人であれば誰もが知っている。大臣も当選回数や派閥の推薦などで決められてきたために、国民の任を受けた国会が内閣を選び、首相と大臣が行政を代表するという議院内閣制の本義が、希薄になっていたと飯尾氏は指摘する。
 その一方で、日本の官僚内閣制のもとでは、省庁が企業や業界の要望を吸い上げ政策に反映させる仕組みが機能していたため、国民の意見は議会を通してではなく、官僚制度を通じてある程度政策に取り入れられてきた。そのため、与党の族議員は、国民全体のためというよりも、自分たちが利益を代表する業界や団体の代弁をすればよく、それが結果的に議院内閣制の更なる弱体化につながったと飯尾氏は言う。
 その意味で、小泉政権は議院内閣制の原理に沿って、官僚の抵抗を排してでも、首相が選挙で掲げた政策や方針がそのまま政策に反映される、日本の政治史上では、むしろ異例の政権だったと飯尾氏は指摘する。しかし、小泉政権以降、日本の政治は再び官僚内閣制に舞い戻っている。
 いずれにしても、このまま政治の機能不全が長引けば、日本は山積する国内外の問題にほとんど対応できない閉塞状態が、今後何年もの間続くことになる。今日本の政治が、議院内閣制本来の機能を取り戻すために何が必要なのか。福田首相辞任の背景にある日本の政治プロセスが抱える根本的な問題を、飯尾氏とともに議論をした。

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