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2015年08月15日公開

70年後、日本は立ち止まれる国になったのか

マル激トーク・オン・ディマンド マル激トーク・オン・ディマンド (第749回)

完全版視聴について

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ゲスト

1948年東京都生まれ。72年東京大学文学部卒業。77年同大学大学院博士課程単位取得退学。東京外国語大学助教授、東京大学助教授などを経て94年同大学教授に就任。2013年定年退職。同年より上智大学神学部特任教授。東京大学名誉教授。著書に『宗教・いのち・国家』、『国家神道と日本人』など。

著書

概要

 かつて無謀な戦争に突き進んだ結果、未曾有の惨禍を招いた日本は、70年経った今、立ち止まるべき時に立ち止まれる国になれたのか。

 奇しくも戦後70周年を迎える今週、政府は九州電力の川内原発の再稼働を容認した。原子力非常事態宣言が発令され、福島第一原発事故が未だ収束しない中での原発の再稼働だった。原発の再稼働は進めるべくして進めているものなのだろうか。それとも、止めることができないから、結果的に進んでいるものなのだろうか。

 東京大学名誉教授で宗教や倫理が専門の島薗進氏は、残念ながら止まらない日本は本質的には今も変わっていないと指摘する。

 思えば、新国立競技場も誰が推進主体なのかがはっきりしないまま、「有識者」が選んだ、コストや実現可能性を無視した無謀なデザイン案が推し進められ、結果的に既存の競技場を解体した後になってようやく白紙撤回された。以前にこの番組でもリポートしたが、1949年に計画が作られたまま地元との調整がつかず半世紀の間、工事が中断していた八ッ場ダムは結局、当初建設に強く反対していた地元の「今さら中止されても困る」という強い意向で、4600億円もの税金が投入され、今も建設工事が進んでいる。

 戦後70年にあたって安倍首相は14日、戦後70年談話を発表しているが、その内容は島薗氏が「色んなことを言っているが大事なことは言っていない」と指摘するように、一見、歴史と向き合う姿勢を見せているようでいて、実は過去の災禍の責任主体が不明な表現に終始している。意図的とも思える間接表現を駆使して、確かに不幸な歴史はあったが、誰がどのような形でその責任を負っているのかが、わからない内容になっているのだ。

 誰が責任主体なのかが不明なまま、事態だけが進んでいく。結果的に悲惨な結末を迎えた時、各界の指導者たちは「自分は反対だったが、流れに抗えなかった」と責任逃れをする。この体質から脱皮できない限り、日本は立ち止まるべき時に立ち止まることなどできようはずもない。逆に言えばそれは、進むべき時に進めないことも意味している。

 日本では政府の主だった施策の大半が、審議会や有識者会議によって決定される形をとっている。70年談話でも安倍首相は有識者会議の提言を尊重したと語っているし、原発再稼働も原子力規制委員会の決定を受け入れる形を取っている。しかし、有識者会議のメンバーは実際には官僚によって決められているため、当然、官僚が望む結論を出してくれるメンバーが常に選ばれている。形の上では有識者や国民の代表としての審議会の決定となっていても、実際は官僚の思いのままだ。しかし、あくまで有識者の決定に従っているという体をとれるので、官僚は責任は取らなくいい仕組みになっている。そのような仕組みに代表される「総無責任体制」が、依然としていたるところで温存され、市民社会はそれを十分に監視する術を持っていない。

 しかし、島薗氏は市民社会はまだ不十分ながら、着実に経験を積みながら、権力に対するチェック機能を強化してきていると指摘する。今回の安保法制を巡る議論でも、日本においてここ数年ほど憲法に関心が集まったことはないというほど、市民、とりわけ若者が憲法に関心を持ち、政府に疑問を持った人々が日々国会前、官邸前で抗議行動を行うようになった。憲法が権力を縛るものであるという立憲主義が広く共有されるようになった。

 果たしてこうした動きが「立ち止まれる日本」への第一歩となり得るのか。70年前に暴走を抑えられなかった日本の現状を、宗教と倫理の視点を交えながら、ゲストの島薗進氏とともに、ジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。

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