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2018年11月17日
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これが国会をつまらなくしているカラクリだ

田中信一郎氏(千葉商科大学特別客員准教授)
マル激トーク・オン・ディマンド 第919回(2018年11月17日)

 何だか騙された気分だ。

 このところ国会では、片山さつき地方創生担当相だの桜田義孝五輪相だのが、やり玉に挙げられている。

 また、外国人労働者を大量に増やすことを目的とした入国管理法の改正案をめぐっても、杜撰な法案の中身や元となるデータの不備などが表面化し、久しぶりに国会が紛糾している。

 国会が賑やかなのはいいことだが、やっぱり何か物足りない。

 結局、日本の国会では与党政治家のスキャンダルや不規則発言などが、一番盛り上がる。また、法案関連では、法案の元になるデータの不備や法案自体に矛盾や問題があれば、一時的に野党が攻勢を強める時もあるが、結局最後は与党が数で押し切れば、大抵の法案は通ってしまう。優先順位の低い法案が継続審議になることはあっても、与党が閣法として提出した法案が廃案になることは滅多にない。

 これが議会制民主主義というものなのか。

 われわれは学校で、日本は国民が直接大統領を選ぶアメリカと異なり、国民は国会議員を選び、その国会が内閣総理大臣を指名する「議院内閣制」の国なので、第一義的には内閣は国会が監視することになっていると習ったはずだが、少数派の野党が与党に絡みつくことはあっても、「国会が内閣を監視する」ところは、おおよそ見た記憶がない。

 議院内閣制の基本中の基本ともいうべき、国会による内閣の監視が日本で機能していないのは、機能しないようにする仕組みが意図的に作られているからだと、政治学者の田中信一郎氏は指摘する。

 そもそも国会の最大の機能は立法、つまり法律の制定だが、日本で可決する法律の大半を占める閣法(内閣が提出する法案)は基本的に与党の事前審査を通ったものに限られる。与党は国会の外に置かれた党の部会や政務調査会などで法案を十分に「審議」し、最終的には与党の総意として合意された法案が閣法として国会に提出されている。その段階で、法案の実質的な審議は終わっており、あとはのらりくらりとした答弁を繰り返しながら野党の追及をかわし、一定の審議時間をかければ、その法案は難なく与党の賛成多数で可決することになる。野党は国会審議の限られた時間内で法案の問題点を追求し、しかもその問題点を有権者に理解してもらわなければならないので、いきおい有権者が理解しやすくメディア受けしやすい論点ばかりが前面に出てくる傾向がある。当然、議論の実質は法案の本質的な問題よりも、表層的な部分に焦点が当たることが多くなる。

 法案が国会に提出される前段階で、部会や政調会やその他の水面下で交わされる熱い議論は、どれも基本的に非公開で、国民も野党も蚊帳の外だ。その議論が国会の公開の場で行われれば、この法律にはどういう利害衝突があり、どういう論点があるのかが国民に明らかになるところが、もっとも重要な議論は密室や水面下で行われてしまう。最終段階で法案が国会に上がってきた後、限られた時間の中で野党がどれほど得点を稼げるかというゲームになっているわけだ。

 国会の多数派を握る与党にとっては、長い法案策定プロセスの中の最終段階となる国会はいわばセレモニーのようなものなので、野党の追及をのらりくらりとかわし、何十時間の審議をしましたというアリバイさえ作れれば、後は数の論理でどんな法律でも成立することができてしまうのだ。

 あまりにもできの悪い法案や、これまでの政策路線を大きく転換する法案などを無理矢理通そうとすれば、有権者の怒りを買うリスクはあるが、それとて与党側が「ここは一旦引いておいた方がよさそうだ」と判断して初めて継続審議や廃案になるのであって、あくまで与党次第であることに変わりはない。少数派の野党ができることは、実は非常に限られている。最終手段として審議拒否というものがあるが、審議拒否も長引けば「国会が仕事をしていない」として、野党に対する風当たりが強くなるため、いつまでも拒否ばかりしていられるわけではない。また、野党が審議拒否をしようが何をしようが、最後は国会の過半数を持つ与党はどんな法案でも単独で通すことが可能なのだ。

 結局、党内で法案を事前審査した上で、党の総意として内閣から法案を提出し、採決では党議拘束をかけて数の論理で法案を通すというプロセスがまかり通る政治文化がある限り、どんなに真面目に審議をやっているように見えても、結局のところ国会はセレモニーの場でしかないことになってしまう。つまり、われわれは最初からほぼほぼ勝敗が決まっている試合を見せられていることになる。

 要するに、現在の日本のように与党と内閣が完全に一致してしまえば、議院内閣制はまともに機能しない。与党も一度は内閣総理大臣を選んでも、その内閣が国民との約束を果たしているかどうかを常に監視し、もし果たしていないと判断すれば、直ちに内閣総理大臣を交代させ、新しい内閣を作るのが、国会の、とりわけ国会の多数派の重要な機能であり責任のはずなのだが、現実がそうなっていないことは誰の目にも明らかだ。

 しかも、そもそも内閣は「国民の多数派」の支持を受けた国会議員が選ぶことになっているが、実際は選挙制度上の問題や野党陣営が分裂していることなどから、「多数派」の支持を受けていない自民党が国会の6割以上の議席を独占し、内閣総理大臣を選んでいる。自民党の絶対得票率は有権者の約2割強、投票率を勘案した相対投票率でも5割を割っている。

 今さらこれを言ってどうなるものでもないが、どこの政党を支持しているにしても、政治権力を独占している自民党に投票しなかった有権者が7割強、実際に投票した人の間でも半分以上は自民党に投票していないにもかかわらず、その自民党が法律の制定過程も、行政の政策立案過程も独占している状態は、当然、有権者にとっては不満の材料となる。要するにそんな国会は、そんな政治が面白くないのは当然なのだ。

 他にも多様な人材の立候補を妨げている、世界一高額な供託金制度や、人海戦術を前提とする大組織に圧倒的に有利な選挙制度、選挙が近づくと突然選挙関連の報道が規制される公職選挙法の報道規制など、政治が出来レースだと感じてしまう材料が、日本ほど豊富に揃っている国は、恐らく先進国の中には他にないだろう。

 昨今、自民党は何やら独自の国会改革案なるものを用意しているらしいが、現在のような制度の中から出てきたいかなる改革案も、誰もまともに受け止めないのは当然のことだ。まずは、誰が見てもおかしい点から改革すべきではないか。

 民意が大きくデフォルメされてしまう現在の国会や選挙の制度の下では、まともに民主主義は機能しないし、国民が政治に関心を持ちにくい理由もそこにあると語る田中氏と、ジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

 
田中 信一郎(たなか しんいちろう)
千葉商科大学特別客員准教授
1973年愛知県生まれ。96年明治大学文学部卒業。2009年同大学大学院政治経済学研究科博士課程修了。博士(政治学)。国会議員政策秘書、内閣官房、長野県庁課長級職員、自然エネルギー財団特任研究員などを経て17年より現職。一般社団法人地域政策デザインオフィス代表理事を兼務。著書に『国会質問制度の研究~質問主意書1890-2007』、『信州はエネルギーシフトする~環境先進国・ドイツをめざす長野県』など。

 

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