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2026年09月30日公開

日本のバイオマス発電は本当にエコなのか

セーブアース セーブアース (第48回)

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ゲスト

地球・人間環境フォーラム企画調査部研究員
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1970年愛知県生まれ。93年信州大学農学部卒業。95年同大学院農学研究科修了。専門は持続可能な森林利用と管理。環境コンサルタントとしての環境アセスメント事業、NGOメコン・ウォッチのタイでの活動、アジア太平洋資料センターでの勤務を経て2008年より現職。共編著に『私たちの電気代が支える偽りの気候変動解決策』。

概要

 AP通信は9月13日、インドネシアの天然林を伐採して生産された木質ペレットが日本のバイオマス発電の燃料として大量に輸入され、現地の森林破壊を加速させていると報じた。

 バイオマス発電は木材などを燃やしてタービンを回す火力発電だ。それでも再生可能エネルギーに分類されているのは、木が成長過程で吸収したCO2を大気に戻すだけなので差し引きゼロになるという理屈による。この理屈に立って、バイオマス発電は2012年に始まった固定価格買取制度(FIT)の対象となり、20年間にわたって電気を割高な価格で買い取ってもらえることになった。その費用は再エネ賦課金として電気料金に上乗せされ、すべての電力利用者が負担している。

 国が当初想定していたのは、国内の間伐材の活用だった。しかし、森林問題に長年取り組んできた地球・人間環境フォーラムの飯沼佐代子氏によると、現在は燃料の75%以上を輸入木質バイオマスが占め、間伐材などの未利用材は1割にも満たない。発電所の多くが山間部ではなく、輸入に便利な港湾部に建てられていることが、その実態を物語る。

 輸入燃料の柱は、パーム油生産の副産物であるPKS(アブラヤシの種の殻)と木質ペレットだ。PKSの輸入量が頭打ちになる一方で、木質ペレットの輸入は急増し、2025年には過去最多の約864万トンに達した。主な供給元はベトナム、カナダ、アメリカだが、北米からの輸入が現地の反対運動などで減少すると、その穴を埋めるように、ここ2年でインドネシアやマレーシアからの輸入が急増しているのだ。

 飯沼氏が2回にわたって現地調査を行ったインドネシア・スラウェシ島北部のゴロンタロ州は、同国のペレット生産の6割以上を占める。スラウェシ島はアジアとオーストラリアの生物相を分けるウォーレス線の東側に位置し、世界最小の野生の牛アノアや奇妙な牙を持つイノシシのバビルサなど、ここにしか生息しない絶滅危惧種が数多く暮らす生物多様性のホットスポットだ。

 インドネシア政府がバイオマス燃料生産のために出した事業許可地は約160万ヘクタールに上り、その半分近くが天然林だ。事業者は天然林を皆伐してペレットにし、跡地に成長の早い単一樹種を植えて数年ごとに伐採を繰り返す。ゴロンタロ州だけで伐採地はすでに東京都の面積の半分にあたる10万ヘクタールを超えた。インドネシア産の発電用ペレットの買い手は日本と韓国しかない。つまり、この森林破壊は日韓の需要が引き起こしているのだ。

 そもそも「CO2排出ゼロ」という前提も揺らいでいる。バイオマス発電の発電効率は25〜30%程度にとどまり、発電量あたりのCO2排出量は石炭火力を上回る。それでも排出がゼロとして扱われるのは、木材のCO2は伐採した国で計上するという算定ルールがあるからにすぎない。輸入燃料の場合、日本は排出を計上せずに済み、結果として誰も計上しない排出が生まれる。

 日本政府は2026年度から大型バイオマス発電の新規FIT認定を停止したが、すでに認定を受けた約100カ所の大型発電所は、今後も最長20年にわたって補助を受けながら輸入燃料を燃やし続ける。昨年のペレットとPKSの輸入額は4,000億円を超え、林野庁の当初予算をも上回った。環境負荷の低減、エネルギー自給、地域振興というFITの目的のいずれにも、輸入バイオマスはほとんど寄与していない。同様の批判を受けた韓国は、既存の発電所も含めて補助金を大幅に削減した。

 飯沼氏によると、ゴロンタロ州のペレット生産会社には日本の商社が出資しており、その燃料は東京ガスが富山県高岡市で運営する発電所などで燃やされているという。しかし、燃料の産地を公開する義務はなく、どの森を切った燃料がどの発電所で燃やされているのかを市民が知る術はない。

 われわれが再エネを支えるために負担しているお金は、地球の裏側で何を壊しているのか。「再生可能」のラベルの下に隠された輸入バイオマスの実態と、市民にできることについて、地球・人間環境フォーラム比較調査部研究員の飯沼佐代子氏とともに、環境ジャーナリストの井田徹治とキャスターの新井麻希が議論した。

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